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クワ田先生

ボクは明日から3年生になる。どんな先生かなあ、あの子と同じクラスになるといいな、そんなことを考えながら眠ったんだ。

朝、教室に行くとボクの大好きなあの子もボクと同じクラスだった。それに友達のはやと君も同じクラスだ。とても嬉しい。席について新しい先生を待っていると、ドアを開けて入ってきたのはなんと、カエルだった!

ボクは思わず、「ええー!!!」とクラス中にひびく大声を出してしまった。クラス中のみんながボクを見た。恥ずかしくなって少し顔が熱くなった。

「みなさんはじめまして。今日から3年3組の担任になります。クワ田です。よろしくね。」

どうやらカエルの名前はクワ田先生というみたいだ。それにしても、ボク以外のみんなは騒いでいる様子がない。もしかしたら先生の姿がカエルに見えているのはボクだけなのかもしれない。

お昼休み、ボクは友達のはやと君に新しい先生のことを聞いてみたんだ。「新しい先生の顔、どう思う?」ボクがそう聞くと、はやと君はこう言った。「なかなかイケメンだよなあ。」やっぱり。ボクだけ先生がカエルに見えているようだ。

それから何日もたって、ボクは先生がカエルに見えることを受け入れて普通に学校生活を送っていたんだ。でもある日、事件が起きたんだ。

ボクは一人で教室で居残りして本を読んでいた。窓へ目を向けるとクワ田先生が帰るところだった。クワ田先生意外と帰るの早いんだなあ。そう思いながらクワ田先生を目で追っていた。すると、クワ田先生は校庭のすみにある池へ飛び込んだのだ。しかも小さなカエルに変身して。

ボクは驚いて立ち上がった。クワ田先生が本物のカエルだったなんて。クワ田先生がカエルってことはボク以外だれも知らない。みんなに言っても信じてもらえないだろう。

ボクは、小さなカエルがいつも先生に変身して学校へ来ていることをだれにも言わなかった。ボクだけの秘密だ。きっとクワ田先生もボクに正体がばれているなんて思っていないだろう。

だから、これはボクの心にしまっておくんだ。

ボクは学校へ行くのが大好きだ。クワ田先生に会えるから。今日もボクはクワ田先生の秘密を隠したまま学校へ行く。


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