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池上彰『会社のことよくわからないまま社会人になった人へ』ダイヤモンド社

会社に就職したのはいいけれど、その会社がどんな組織なのか、何で儲けているのか、基本的なことを理解していなかった人のための本です。

著者である池上彰さんは、難しいことをわかりやすく解説することで定評があります。テレビやラジオの番組によく出演しているので、多くの人が知っていると思います。

池上さんは、会社はお金を儲けるために存在するということから説明を始めます。会社は法律上の「人」でもあり、法務局に登記し、「法人」として認められると人のような存在になると言います。

どんな会社であっても、だれも知らないベンチャー企業から始まります。企業は生き物だと言います。企業に寿命があるとも言います。生き残りをはかるため、世の中が求めるものを常に考えなければいけないそうです。

企業は利益を出して、はじめて社会的に存在が許されるとも言います。会社は大きくなろうとする性質があると説明します。

会社選びのとき、社風が良い会社かがポイントだと教えてくれます。良い環境、良い雰囲気、良い条件のもとで働いていれば、自ずと社風も良くなると言います。創業者の経営理念や経営スピリットが生きていることも、会社の魅力につながると言います。

採用試験では会社側も選ばれていると説明します。見極めるポイントとして、採用試験の対応を見る、ということもあると言います。圧迫面接は、応募した人の気持ちにシコリを残さないためですが、その会社を嫌いになるという諸刃の剣でもあるそうです。

最近、SDGsに力を入れている会社が良い会社と評価される傾向があるとも言います。SDGsの項目について、個別企業の行動を分析して投資判断の基準にしようとする金融業界の方針もあり、ESG投資と言うそうです。

会社で一番偉いのは、社長と思うかもしれませんが、株式会社の場合は株主だそうです。会社の所有者は株主ですが、そこで働く人、お客様や取引先、地域社会など、関わる人や環境にも目配りが必要なのだそうです。

中国の老子の言葉に、「悪い指導者はあの人の言う通りにしなければいけないとみんなとびくびくしている。普通の指導者はあの人の言う通りにやっていれば間違いないと思わせる。良い指導者は自分たちがやったからうまくいったんだと思わせる。」というものがあるそうです。

「経営」とは、「自分たちがやったんだよ」「自分がやった」、そういう気にさせるように誘導するということなのです。自立して活躍できる人を生み出す会社、そんな組織を作り出せる経営者が本当の意味でのいい経営者ということなのだそうです。

就職とは会社との契約だそうです。社員は契約を守る義務があります。仕事が終わったら、さっさと帰ろうと言います。「サービス残業」は会社側が義務を怠っているのだそうです。

会社を辞めたいと思うことは、実はみんなあるものだが、さっさと辞めてしまうのは、もったいないと言います。会社に入って、志と違うところにいても、入社当初の志を忘れないこと、そのための辛抱は、乗り越えるべき経験であると、会社員の先輩、池上さんは思うそうです。

今の環境もチャンスかも知れないとも言います。勉強する意味でも辞めずに残って損はないとも言います。辞めようと思ったら、辞めるまでの間、せめてその会社のことを一生懸命調べて、いろいろな人に会ってみるといいと思うそうです。

池上さんは、働くことは自己実現だと言います。社会の中で、自分の存在価値を確かめることで生きていくことができると言います。また、目的意識を持って働こうとも言います。さらに、会社員であっても、会社とはまったく別の世界を持ってほしいともアドバイスします。

本書は、ロンゲセラーであったものを加筆、訂正し、新たに刊行したものだそうです。これから就職しようとする人や、就職して間もない人が、会社についての知識を得るためには、大変わかりやすい本だと思います。

長く会社人生を送ってきた人も、改めて会社について考えるときの材料となります。「仕事」=「人生」と言えることが多いと思われますので、もう一度、働く意味について考えてみるのも良いのではと思いました。


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