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大型商談を成約に導く「SPIN」営業術【まとめ】

SPIN」営業術とは

  • S=Situation Question<状況質問>

  • P=Problem Question<問題質問>

  • I=Implication Question<示唆質問>

  • N=Need-payoff Question<解決質問>

これら4つの質問を活用し、顧客の潜在的なニーズを発見し、そのニーズを顕在化させ(ニーズを育て)、成約へと導く営業手法のことである。

「SPIN」営業術は巧妙な小手先のセールステクニックではなく、本質的かつ至極真っ当なものであり、マイクロソフトやIBM、ゼロックスなどの世界的なリーティングカンパニーにも採用されている。

この「SPIN」営業術を体系的にまとめたのが、ニール・ラッカムによる書籍「大型商談を成約に導く「SPIN」営業術 」である。

本書では大型提案についてFocusしているが、長期的な顧客との信頼作りにも非常に有効なため、サブスクリプションモデルのSaaS事業などにもおすすめできる手法であり、書籍である。

1. 真実はいつも現場にある

  • 小型商談で成功した手段が、大型商談では逆に成功を妨げる要因になりえる。

  • 受注まで何回か商談を重ねる大型商談では、一度で商談がまとまる小型商談とは全く異なる販売方が求められる。

  • セールスの規模が大きくなるにつれて顧客の行動もガラリと変化する。したがって売り手にはそれに見合ったスキルが要求される。

2. 大型商談と小型商談の違い

  • 結論、時間軸とリスクが異なる

  • 大型商談の場合、関係性が継続するため、見込客はセールスパーソンを重視する。

    • そのため、巧妙なセールストークは小型商談では有効だが、大型商談だと足を引っ張る

  • ただし、それは感情に訴えかけるセールスが良いということではない。ビジネス上の観点からこの商品を買うべきだという理屈を買い手に授ける、理性へのアピールが重要となる。

3. 商談の四段階と「調査段階」

商談の四段階

  1. 予備段階
    - 話の切り出し方やアイスブレイクの方法など

  2. 調査段階
    質問等を通し、見込客のニーズや探ったり、理解を進める

  3. 解決能力を示す段階
    - これは買うに値するものだと見込客に示す

  4. 約束を取り付ける段階
    - 商談が成功した場合、最後になんらかの約束をとりつける

大型商談の成功の定義

  • 小型商談の場合は成功=受注と起きやすいが、大型商談の場合は以下のとおりに分類する

    • 成功

      • 受注

      • 進展

    • 失敗

      • 継続

      • 失注

  • 進展について

    • 「商談の最中か後に、受注につながるできごとが起こること」

      • ex)

        • 上位役職者とのアポイントをとりつけた

        • 製品のトライアルやテストをしてもらえることになった

    • 一方、継続は明確な失注とはなっていないものの受注につながるできごとが起こらなかったことを指し、これは失敗に区分する。

    • 商談の目標は「受注」・「進展」に該当する具体的な事象を設定する。

調査段階の重要性

  • <質問が重要である理由>

    • 質問は買い手をしゃべらせる

    • 質問によって相手の注意を惹きつける

    • 質問すると相手は納得するが、説明では納得しない

    • 質問はニーズを明らかにする
       

  • <調査をしなくても成功しやすい例外>

    • あなたに力(名声や権力)がある

    • あなたに専門知識がある

    • リスクをとる余裕がある

オープンクエスチョン/クローズドクエスチョンについて

  • あまり成功との相関性はない

4. 見込客のニーズのつかみ方

潜在ニーズと顕在ニーズ

  • <潜在ニーズ>

    • 見込客が口にした「問題」や「不満」

    • 小型商談では非常に有効だが、大型商談ではあまり有効ではない

      • なぜかというと、大型商談の場合コストが非常に大きいため、潜在ニーズレベルだと天秤にかけたとき、フラットにあるいはコストへの意識に傾くためである。

      • 言い方を変えると、「ニーズが育っていない」ということになる。

    • 潜在ニーズはうまく料理すると、顕在ニーズになる

    • ex)

      • 「現行のシステムはスループットが悪い」

      • 「損失率に不満がある」

      • 「今のスピードに満足していない」
         

  • <顕在ニーズ>

    • 見込客が口にした「欲求」や「欲望」、「行動を起こそうという意志」

    • 商談全般で有効。特に大型商談はこの顕在ニーズを掌握しないといけない。

    • ex)

      • 「もっとスピードの速いシステムが必要だ」

      • 「もっと信頼性の高い機械を探している」

      • 「バックアップ機能が欲しい」

5. 潜在ニーズを探る質問方法

質問の種類

  • <発見のための質問>

    • 見込客から問題点、つまり潜在ニーズを聞き出すもの

      • 状況質問

      • 問題質問
         

  • <発展のための質問>

    • 潜在ニーズを顕在ニーズへ発展させるもの

      • 示唆質問

      • 解決質問

商談の最初で重要な「状況質問」

  • 見込客の現場に関する事実を見つけ出すこと

    • ex)

      • 「これは使い始めて何年ですか」

      • 「従業員は何人ですか」

      • 「今はどんな設備をお使いですか」

  • 状況質問自体は商談の成否に関係しない。

  • 経験の乏しいセールスパーソンは多用する。

  • 重要な質問ではあるが、使い方は慎重に。目的を明確し、利用する。

  • 連発すると、見込客は商談に飽きて、イライラし始める。

相手に潜在ニーズを語らせる「問題質問」

  • 見込客の抱える問題点や支障、不満に関する質問のこと

    • ex)

      • 「〇〇には満足していますか」

      • 「品質上の問題はないですか」

      • 「今の機械はつかいにくくはないですか」

  • 「状況質問」よりも成否に相関性がある。

    • 小型商談では特にこの相関性が強い。聞けば聞くほど成功可能性が高まる。

  • 一方、大型商談ではそれほど相関性は強くない。

    • ただし、「問題質問」は大型質問でも非常に重要である。

    • 多くの顕在ニーズは潜在ニーズを育てた先にあるものなので、成功の種を作っているに等しい。

  • 「状況質問」と「問題質問」の比率はセールスパーソンの経験によって異なる。経験を積んだセールスパーソンは「問題質問」の比率が高い。

売上アップにつながるテクニック

  • 商談の前に、見込客がかかえているかもしれず、かつあなたの商品で解決可能な潜在的な問題を考えて、少なくとも三つは書き出してみる

  • あなたが仮定したその潜在的な問題を浮き彫りにするために、商談で使う「問題質問」をいくつか書き出してみる。

6. SPINの効用と使い方

「示唆質問」は、なぜそれほど重要なのか

  • 「示唆質問」とは、見込客が抱える問題の与える影響や結果などについての質問のこと

    • ex)

      • 「そのことで計画されている事業拡大が遅れませんか」

      • 「そのせいでコストが高くなっていますか」

      • 「それは生産高にどんな影響を及ぼしていますか」

  • 大型商談での成功に大きな関係がある

    • 小型商談でも成功率は上げられる。(時間的なROIは考えないといけない)

  • 見込客が価値を認識できるようにする

  • 欠点

    • 「状況質問」「問題質問」よりも質問しにくい

    • その性質上、見込客が悩んだり、ネガティブな気分になる虞がある。 ※この欠点を次の「解決質問」で解消していく

見込客の意識をプラス面に向ける「解決質問」

  • 見込客から提案された解決策の価値や効用に関する質問のこと

    • ex)

      • 「この問題を解決することがどうして重要なのですか」

      • 「それがどう役に立つでしょうか」

      • 「たとえばどんな利点があるでしょうか」

  • 大型商談での成功に大きな関係がある

    • 小型商談でも成功率は上げられる。(時間的なROIは考えないといけない)

  • 解決策が見込客に受け入れられやすくなる

  • 特に商談の意思決定者に影響力を持つ人物相手に対しての効果がある

    • 実質的なキーマンやキーマンに非常に近いトイメンなど

  • 「解決質問」は反論を減らす

    • 相手に解決イメージを話させるため

  • 「解決質問」は、見込客の「内部プレゼン」の練習になる

    • これも相手に話をさせることでよりイメージをつけてもらったり、解像度を高めてもらったり、伝え方の工夫を考えてもらえやすくなるためである。

「示唆質問」と「解決質問」の違い

  • 示唆質問

    • 問題点に焦点を当てている

    • 問題をより深刻に見せるため、「暗い」イメージ

  • 解決質問

    • 解決策に焦点を当てている

    • 問題を解決することの紅葉や価値についての質問なので、「明るい」イメージ

SPIN営業術

  • <SPINとは>

    • 4つの質問を通し、潜在ニーズを発見し、顕在ニーズへ育てていくための営業フレームワーク

    • 営業の「調査段階」で利用

    • 4つの質問

      • 状況質問(Situation)

      • 問題質問(Problem)

      • 示唆質問(Implication)

      • 解決質問(Need-Payoff)

    • ただし、「SPINを絶対的な方程式にしない」という点に注意しなければならない。

      • 決まった方程式に沿って行ってもうまくは行かない。臨機応変に利用する「ガイドライン」としての利用が望ましい。
         

  • <SPINの流れと詳細>

    • S

      • 一流のセールスパーソンはまず「状況質問」をして見込客の背景情報を得る。

      • ただし、この質問は相手を退屈させたりイラつかせたりする危険性があるため多用は避ける。

    • P

      • 「問題質問」にすばやく移行し、見込客が抱える問題点や支障、不満を探る。

      • この段階で潜在ニーズを見つけ出す。

    • I

      • 大型商談では、ここで「示唆質問」をして潜在ニーズをより差し迫ったものにしていく。

    • N

      • 行動を起こさなければならないほど重大な問題だと見込客が同意したら、「解決質問」を用いて解決策に目を向けさせ、それがもたらす利点は何かを見込客に語らせる。

7. 「利点」ではなく「利益」を語れ

  • セールスの3段階目「解決能力を示す段階」において提示方法は「特徴」「利点」「利益」の3つがある。

  • それぞれの違いをしっかり理解した上で活用するのが大切。

特徴とは

  • 製品やサービスに関する事実や特徴のことを指す

    • ex)

      • 「このシリーズには二つの機種があります」

      • 「納品まで5週間かかります」

      • 「15,000円かかります」

  • 小型商談ではわずかながら効果がある

  • 大型商談では説得力をもたない(影響なし、あるいはややマイナス)

利点とは

  • その商品がどのように使え、どのように見込客の役に立つかを示すこと

    • ex)

      • 「コストが低く抑えられるということです」

      • 「自動供給装置で時間が節約できます」

      • 「ライバル社の機械よりも静かです」

  • 小型商談では効果的である

  • 大型商談でもわずかに効果的である

  • よくある押し売りになりがちなので注意。

    • 商談の速い段階で、語らないよう注意。(=怪しがられる)

    • 特に新商品の営業では、利点をアピールしたいがために自ずと押し売りになりがちなので一層注意が必要。

利益とは

  • その商品が、見込客の示した顕在ニーズにどう応えられるかを示すこと

    • ex)

      • 「コストダウンをお求めとのことですが、この電力低減型なら経済的です。」

      • 「すぐの納品がご希望ですね。在庫はございます。」

      • 「これならお客様の希望速度以上のスピードが可能です。」

  • セールスの規模に関わらず、非常に高い効果がある。

  • 大型商談ではもっとも威力のある言葉のひとつである。

8. 反論の正しい対処法

特徴・利点・利益に対する顧客の反応

  • <特徴>

    • 見込客の反応として多いもの → 価格の心配

    • 「特徴が多いから高い、特徴が少ないから安い」という価格競争に巻き込まれ、大型商談のような金額感が高いものは敬遠され、商談全領域でも安くないと勝てないという話になってしまう。
       

  • <利点>

    • 見込客の反応として多いもの → 反論

    • 顕在ニーズまで育っていない状態で話す(=利点を話す)と、顧客はそんな大ごとではない・そんな大金を払う必要などないという思考になり、反論が起きやすくなる。
       

  • <利益>

    • 見込客の反応として多いもの → 支持・賛成

反論応酬話法と反論予防話法

  • <反論応酬話法>

    • 世のトレーニングで言われるような重要なスキルではない。

    • 反論は見込客ではなく、セールスパーソンが生み出しているケースが多い。

    • 大抵の場合、営業部内に1人は他の人の10倍も反論を受けている人がいる。

    • 熟練したセールスパーソンは反論応酬話法ではなく反論予防話法を習得している。そのため、反論も少ない。
       

  • <反論予防話法>

    • 売り手は「示唆質問」と「解決質問」でニーズを育てる

      • 見込客は顕在ニーズを口にする

    • 売り手は「利益」を提示

    • 見込客は反論をするまでもなく、支持・賛成を表明

9. 商談の出だしは小さな工夫で

予備段階で行うべきこと・行ってはいけないこと

  • <前提>

    • そもそも予備段階が商談の成否に大きな影響を与えるということはない

    • ファーストインプレッションが重要という話もあるが、最低限を守れば良い (当たり前レベルは保持)
       

  • <行うべきこと>

    • 調査段階へ移る同意を見込客にとりつけること

      1. あなたは何者かを伝える

      2. なぜ会いに来ているのかを伝える
        - ただし、この時商品の詳細を語ってはいけない

      3. 質問をしてもいいかどうか
        - 枕詞に注意
          

  • <行ってはいけないこと>

    • 商品の詳細・「利点」を口にすること

      • 質問(商談)の主導権を見込客が持つことになる

        • =見込客が質問するターンとなってしまう

      • 反論が始まってしまうことが多い

      • 純粋に押し売り営業にうんざりしてしまう

      • ただし、小型商談では効果的なことも多いので、大型商談の場合に控える

    • 過剰なアイスブレイク

      • 特に成否に関係はしない。

10. クロージングには要注意

クロージングテクニックの是非

  • クロージングテクニックは世間が持て囃しているほど効果があるものではない

  • むしろケースによっては大きな悪影響を及ぼす

    • 高額商品を扱った大型商談であること

      • クロージングは商談のスピードを劇的に速くするが、大型商談の場合、速くなることによって得られる見込客のメリットは皆無である。

    • 相手がプロのバイヤーである

      • 小賢しく、せこいイメージがついてしまう。

    • 販売後も見込客との取引関係が続く

      • 純粋にクロージングテクニックは良い印象を与えることはない

  • といいつつも、「クロージング」をしないと前に進まないこともある

    • クロージングテクニックは不要だが、クロージング自体は必要

    • クロージングを行わないことで、決断の機会を提供できなかったり、進捗がないことで相手を苛立たせてしまうといことがあるため

どう行動すべきか/四つの効果的な行動

  • 複雑なクロージングテクニックは不要

  • 下手なクロージングテクニックではなく、下記の行動を「クロージング」と捉えて実行する。

  1. 「調査段階」と「解決能力を示す段階」に注目する

  2. 主な懸念事項に対応したかチェックする

  3. 「利益」をまとめる

  4. 次の約束を提案する
    - 現実的な約束であることが重要

11. 理論を実践に移すコツ

スキル習得の四大原則

  1. 練習は「一度にひとつ」

  2. 少なくとも三回は試してみる

  3. 質よりも量

  4. 練習は安全な状況で

大事なポイントを総確認する

<商談の四段階>

  1. 予備段階

  2. 調査段階

  3. 解決能力を示す段階

  4. 約束をとりつける段階

<「解決能力を示す段階」における提示方法の種類>

  1. 特徴

  2. 利点

  3. 利益

<SPIN>

  1. 状況質問

  2. 問題質問

  3. 示唆質問

  4. 解決質問

SPIN実践のための戦略

  1. 調査段階に集中する

  2. S → P → I → N の順に一つずつマスターする

  3. 問題をどう解決できるか、という観点から商品を分析する

  4. 計画、実行、そして見直し
    - 今回の商談の目標は達成できたか
    - またこの商談ができるとしたら、どこを変えるか
    - この見込客との先々の商談によい影響をあたえるようなことを何か得たか
    - ほかの見込客との商談にも役立つことが何か学べたか

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