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夢日記(1)「オレは遠藤賢司だ」

ほとんどの夢は、時間も場所も登場人物もコロコロ変化し支離滅裂ですよね。

不思議なイメージの羅列でとても文章にすることができません。

でも、たまにリアルであったり、なんとなく筋が通ってたりするので、そんな夢を書き残してみたいと思います。

夢を日記に書くと危険だと言われてますね。だんだんリアルな夢を見るようになり、夢と現実が分からなくなるとか・・・

危ないと感じたらやめればいいし、そもそも書けるような夢なんてほとんど見ないでしょう。

やっぱり危険ですかね?

でも、ともかく始めてみましょう。


「オレは遠藤賢司だ」


木の壁の暗い部屋で誰かと向き合っている。顔がよく見えない。

そして、
「オレは遠藤賢司なんだよ」
と話かけている。

「でも、
あなたはsatosioさんですよね?」

「そうなんだけど、音楽的な存在として遠藤賢司なんだ」

「あの名曲『カレーライス』で有名な?あれを作って歌ったんですか?」

「いや、あれは、あの遠藤賢司だよ。あんなすごい曲はオレには作れないし歌えない。」

「よく理解できないんだけど。」

「あの後、何年かして作風が変わっていったろ。あの頃からオレのイメージが入ってる。」

「同一人物ってことですか?」

「そうであってそうではない。しかし、今のオレは完全に遠藤賢司なんだよ。」

「顔も体つきも歳も違うじゃないですか?それにもうお亡くなりになったはず。」

「そういう問題ではない。」

何をしていたんだろう、長い時間が経った。
気が付くと、向かい側に座っていた彼は左側に移動していて横顔しか見えない。
大したことではないが。

彼は、オレのことを気の触れた人物を見るような目で見つめている。
こんな単純なことがなぜ理解できないんだ?

「まあいいさ。その証拠にここ数年で2枚のアルバムを発表した。数千枚しか売れなかったけど。」
と言って、アマゾンのホームページで示した。

「う~ん、確かに出てますね。」

「だろ。でも音楽って難しくてね。現場の熱量をCDなり何なりに残すことがなかなかできないんだ。」

「そんなもんですか。」

「ビートルズなんてすごいだろ。スピーカーとかイヤホンを通じても、とてつもない熱量が伝わってくる。だから何十年も聞き継がれるんだ」

「satosioさん、、、じゃなくて遠藤さんはどうなんですか?」

「正直言ってまだまだだ。生の何十分の一しか伝えられない。本当はどんな感じか、今ここで一曲聴いてみるかい?ちょうど新曲ができたところなんだ。」

「いやあ、元がよく分かってないですし、ちょっと時間が押してて。」

「次のアルバムは人生の旅がテーマなんだ。年とともに体験してきた出来事や訪れた町、それと音がシンクロしている。録音も各地で地元のミュージシャンと行う。」

「興味深いですね。」

「そうだろ。時間がないのに聴いてくれるんだね。」
オレは嬉しかった。

「心を込めて唄うよ。」

オレはゆっくりと傍らのギターを手に取り、ジャーンとかき鳴らした。
相手がその一音でハッとしたのが、暗くても伝わってくる

静かに歌いだした。そして、盛り上がるところでは声を張った。
むやみに大きな声を出してもダメだ。気持ちを伝えることが大切なのだ。
数千人の観客にぶつける熱量を彼一人にぶつけた。

彼の目から涙があふれ、やがて滝のように流れ出した。
あとで床を拭かなければ。

また、長い時間が経った。
うす暗い部屋に煙のようなものが立ちこめ、一筋の淡いピンクの光が刺している。
オレの声とギターの音が反響し、深いエコーがかかっているかのようだ。

オレは静かにギターを置いた。
「理解できたかい?」

彼は袖で目を拭いながら無言で何度も頷く。

結局オレは5曲歌った。
いいライブができて満足だった。
オレは遠藤賢司なんだよ




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