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社会環境 ヒトとのかかわり

もう一度、WHOの健康の定義を見てみましょう。

Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳)」

ここでは、肉体的、精神的だけでなく、社会的にも満たされた状態であることの必要性が謳われています。
これら3つの側面すべてが満たされた時、初めてヒトは「健康」を手にすることができるというのです。

WHOの定義でいうところの健康の3つの側面は、英語で「病気」を表す3つの言葉を考えると理解しやすくなります。
Disease:医学的診断による「疾病」「疾患」
Illness:本人が自覚する「病」「精神病」
Sickness:傍から見て具合が悪い「病気」「不調」
病気にも、医者から見た身体的なもの、本人から見た精神的なもの、他人から見た社会的なものと、3通りあることがわかります。

身体的、精神的に満たされた状態というのは、個人的範疇のことなので比較的わかりやすいと思いますが、社会的に満たされているとはどういう状態でしょう?
家庭や職場などにおいて自分の役割を持ち、関わり合う人たちから必要とされ、社会の中で自分の居場所を感じられる状態。
ヒトとの関わりやコミュニケーションが適切にあり、信頼できる相手とお互いに支え合い、存在価値を認め合える関係にある状態。
言い方はいろいろあるでしょうが、大方はこんな状態ではないでしょうか?

ところが現実の社会を見てみると、経済的政治的地域的性的年齢的など、様々な種類の格差があり、皆が皆同じような状態にあるわけではありません。
こういった社会環境の中での立場の違いや不平等性は、その人の健康状態を左右する大きな要因となり、健康格差を生み出す原因となっています。

WHOは、健康格差をつくる社会的決定要因として、次の10項目をあげています。
社会格差、ストレス、幼少期、社会的排除、労働、失業、ソーシャルサポート、薬物依存、食品、交通
これらの要因について一人一人が情報にアクセスし、理解、共有することが、ヘルスリテラシーを向上させ、ひいては社会的健康の実現につながると、WHOは公表しています。

行き過ぎた健康格差をもたらす社会的な不健康状態は、心理的ストレスとなり、一人一人のココロの健康に悪影響を与えます。
そしてココロの不健康は、カラダの症状となって表れます。
それゆえにシャカイ、ココロ、カラダの3つの健康が合わさった時、初めて人間は健康な状態となれるのだ、とWHO憲章はいいます。

もし自分自身の身近な環境が充足したものであったとしても、その外側にはもっと広域の社会環境があり、そこで暮らしている多くの人々は、必ずしも充足した健康状態にあるとは限りません。
現代の社会においては、国内はもとより世界中の地域から常にさまざまな情報が発信され、世界中の人々がそれらを受け取ることができます。
社会格差や社会的排除は依然としてあり続け、毎日情報を受け取っている私たちの健康状態は、そうしたニュースの影響を必然的に受けざるを得ません。
社会環境を整えることは、地球上全てのヒトの健康にとって必要欠かさざるものなのです。

ヒトを社会的存在として捉えた時、ハードウェアとしての社会構造も大切ですが、ソフトウェアとしての文化も重要となります。
ヒトとヒトビトをつなぐ文化の基本単位として、ミームという概念がありますが、これについてはまた後ほど考えていきたいと思います。

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