ヤマシタシオリ

埼玉出身。 人から「どんな本を読んでるの?」と聞かれた時、 口に出すのが微妙にためらわ…

ヤマシタシオリ

埼玉出身。 人から「どんな本を読んでるの?」と聞かれた時、 口に出すのが微妙にためらわれるラインの、 エロ・病理・恋愛など エンタメに振り切った小説の感想を綴ります。

最近の記事

【読書感想】『みずうみの妻たち』林真理子

【説明】 湖のある街で老舗和菓子屋に嫁いだ朝子。浮気に開き直る夫に、朝子は告げた。「店を持ちたいの。本格的なフランス料理店を」。自分の野望に戸惑いながらも、東京の建築家・大和田に店舗設計を依頼した朝子。順調に滑り出すかと思われた矢先、大和田と訪れたレストランで夫の愛人に遭遇してしまう。揺れる朝子に、大和田は大胆に迫り、ついに二人は一歩踏み出してしまう。だが、地方の名家には周囲の目が張り巡らされていた―。 【感想】 林真理子さんが大好きで、発刊されているものなら全部読んでいま

    • 【読書感想】『夜姫』新堂冬樹

      【説明】 キャバクラのキャストとして、日本人離れした外見と政治経済から下ネタまであらゆる話題を盛り上げるトーク力で男を虜にし、年数億の売上を生む花蘭。新宿・歌舞伎町の絶対女王だが、アパレルで働く乃愛にとっては、最愛の妹を失う原因を作った憎き女だ。復讐のため、乃愛は昼の仕事を捨て、虚と実、嫉妬と憎悪が絡み合う夜の世界に飛び込むが……。 【感想】 幻冬舎文庫が好きです。 幼い頃は、その良さがちっともわからなくて、むしろツルツルの集英社文庫や文春文庫のほうが持った時の手ごたえがあ

      • 【読書感想】『明け方の若者たち』カツセマサヒコ

        【説明】 「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」 その16文字から始まった、沼のような5年間。 明大前で開かれた退屈な飲み会。そこで出会った彼女に、一瞬で恋をした。本多劇場で観た舞台。「写ルンです」で撮った江の島。IKEAで買ったセミダブルベッド。フジロックに対抗するために旅をした7月の終わり。 世界が彼女で満たされる一方で、社会人になった僕は、“こんなハズじゃなかった人生"に打ちのめされていく。息の詰まる満員電車。夢見た未来とは異なる現在。深夜の高円寺の公園と親友だけ

        • 【読書感想】『特別な人生を、私にだけください。』はあちゅう

          【説明】 ユカ、33歳、専業主婦。一人で過ごす夜に耐え切れず、ツイッターに裏アカウントを作る。毎晩違う香水の匂いをまとって帰る夫への不満は、ナンパ師アカウント「圭太」とのやりとりで紛らわす。表で「普通の人」でいるために、裏で息抜きを必要とする人々。特別で在りたい欲望と誰かとつながりたい寂しさに溺れながらも、前に進む力を摑む物語。 【感想】 小説家・はあちゅうさんが好きです。 自分が同性、同世代だからこそなのかもしれませんが、はあちゅうさんの小説はとことん都会的で、著者を連

        【読書感想】『みずうみの妻たち』林真理子

          【読書感想】『大人になったら、』畑野智美

          【説明】 三十五歳の誕生日を迎えたメイ。「いつから彼氏いないんですか?」「何が目標なんですか?」――失礼な後輩に憤慨しつつも、カフェの副店長として働く日々はそれなりに充実している。毎日同じメニューを頼むお客さんも、そんな日常の一部だったのだけど……。久しぶりの恋に戸惑う、大人になりきれない私たちの恋愛小説。<解説>渡辺雄介 【感想】 畑野智美さんの小説は、日常にスッと馴染む読みやすい文体で、どんな設定の話でもストレスなく読めるのが好きです。 「35歳」が出てくる小説はたくさ

          【読書感想】『大人になったら、』畑野智美

          【読書感想】『だれかの木琴』井上荒野

          【説明】 主婦・小夜子が美容師・海斗から受け取った、一本の営業メール。それを開いた瞬間から、小夜子は自分でも理解できない感情に突き動かされ、海斗への執着をエスカレートさせる。明らかに常軌を逸していく妻を、夫の光太郎は正視できない。やがて、小夜子のグロテスクな行動は、娘や海斗の恋人も巻き込んでゆく。息苦しいまでに痛切な長篇小説。 【感想】 池松壮亮・常盤貴子主演で映画化もされているこちらの小説。 井上荒野さんの小説が好きなので読みました。 あらすじから想像していたのとは違う手

          【読書感想】『だれかの木琴』井上荒野

          【読書感想】『わたしの神様』小島慶子

          【説明】 視聴率低迷の番組を立て直すため、敏腕プロデューサー藤村は業界ナンバーワンのアイドルアナ仁和まなみを起用。知的なニュースキャスターへと転身をとげたい彼女は、権力欲にまみれ保身に走る男たちや、敵意むき出しの女たちによってやがてスキャンダルの渦に引きずり込まれる。女たちの嫉妬・執着・野心を描く、一気読み必至の極上エンタメ小説。 【感想】 小島慶子さんの「作家」としての活動を知ったのは、林真理子さんとの共著『女の7つの大罪』を読んだ時。 https://amzn.to/

          【読書感想】『わたしの神様』小島慶子

          【読後感想】『消えない月』畑野智美

          【説明】 彼らは出会って恋人になり、やがて別れた。ありふれた恋のはずだった、彼が”ストーカー”になるまでは。――被害者の恐怖と、加害者の執着。ストーカーの闇を両側の視点から抉る畑野智美流傑作イヤミス! 商店街の小さなマッサージ店に勤めるさくらは、28歳の誕生日を祝ってくれた客の松原と付き合うことになった。出版社に勤める彼と過ごす幸せの絶頂のような期間は束の間で、関係は悪夢のように変わっていく。強く束縛され、少しでも反論すると激怒され、乱暴に扱われることに嫌気がさして別れを告

          【読後感想】『消えない月』畑野智美