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【読書感想】『大人になったら、』畑野智美


【説明】
三十五歳の誕生日を迎えたメイ。「いつから彼氏いないんですか?」「何が目標なんですか?」――失礼な後輩に憤慨しつつも、カフェの副店長として働く日々はそれなりに充実している。毎日同じメニューを頼むお客さんも、そんな日常の一部だったのだけど……。久しぶりの恋に戸惑う、大人になりきれない私たちの恋愛小説。<解説>渡辺雄介

【感想】
畑野智美さんの小説は、日常にスッと馴染む読みやすい文体で、どんな設定の話でもストレスなく読めるのが好きです。
「35歳」が出てくる小説はたくさんありますが、お話の中の35歳はみんな大人で、何かしら築きあげた地位や家庭や実績があるパターンが多い。そういう意味では、主人公のメイの「何も持ってない感じ」が、すごく今っぽいというか、共感できました。

リアルさを描きつつ、少女漫画脳の乙女が満足するご都合展開

ご都合展開というと、なんか批判みたいですが。

『神様を待っている』でも、ホームレス女子が最終的にはイケメンさわやか社長と恋の予感を感じさせて終わるように、
この『大人になったら、』のメイも、序盤から散々寄る辺ない思いにとらわれ悩んだりしますが、最終的にはとても幸せな胸キュンラスト。
このあたり、女性の微妙な心理を衝いていると思うのですが、
メイの相手・羽鳥先生は、
雑誌で取材されるほどのカリスマ塾講師、という設定。
そのキャリアを捨てるわけではなく、
現状の仕事の地盤を確保しながら、主人公にも会いにくることができるよう調整した、ということなので、経済的にめちゃめちゃ頼れそう。
かつ、
・主人公の好きなタイプの顔
・一途なので浮気とか100%しなさそう
・同い年の35歳(35歳女性が35歳男性と結ばれるのは個人的に40代男性と20代女性くらいの感覚で、ハードル高いと思う)
と、好条件が揃っています。

この、散々リアルさを見せておいて最終的におとぎ話、というバランスが、小説として、エンタメとして、面白いんですよ!!!

やっぱり主人公とメインキャラ男性とは、読者として結ばれてほしいですもんねー。

ちなみに、羽鳥先生が毎回チキン系の定食を頼むという描写を読んで、なんとなく食べたくなってお昼にチキン南蛮を食べました。

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