山本雨季

小説(主に純文学)と詩を書いて文藝誌等に投稿しています。文体派 / 別名 : アカシッ…

山本雨季

小説(主に純文学)と詩を書いて文藝誌等に投稿しています。文体派 / 別名 : アカシック キャンディポップ / テクノをはじめとするエレクトロニックミュージックや時代劇、ゴア映画が好き。

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  • うつら人別帖

    旧ブログ「うつら人別帖」からのサルベージ記事をまとめたマガジンです。比較的、短い文章で綴られているので、空いたお時間のお暇つぶしなどにどうぞ。

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無職と魔法

「ぼくと契約して魔法少女になってよ」  は? と思うた。眼前には猿のような猫のような毛の無いつるつるとした見たことも無い小動物。なんじゃこれはと訝しみ、首根っこを掴んで抓み上げてみたが、まるで莫迦の如く「ぼくと契約して、ぼくと契約して」をその小動物は繰り返す。  そろそろ午を廻ったころ。石神井公園には馴染みのおっさんたちが屯している。皆が皆、小汚い恰好をしていた。俺だって人のことを言える身形はしていないが、少なくとも公園の閑所を使っての毎日の洗顔歯磨きは怠らずに行っている

    • おさくらさま2017

      • 魚の話

        けふは焼鮭を食べた。 美味であった。魚は苦手なれど。 魚は苦手ゆえ 魚は食べられぬのだが 稀に大丈夫な魚は 食べること叶うたりして 余の味覚性癖は奇奇怪怪なり 所謂喰わず嫌いというものとも一寸違うのだ 駄目なものは如何しても駄目 煮魚に至っては親の仇の如く嫌っておる 焼き魚も苦手なのだが(特に臭いが) 焼き魚を焼いてる時は好きだ(特に匂いが)

        • ドラマ「鬼平犯科帳」ができるまでの話

          春日太一著。 良書というか好書。好きな書。 鬼平ファンのみならず 必殺シリーズファン(つまりぼく!)にも楽しめる一冊。 個人的には髙坂(高坂)光幸氏のインタビューが 所収されていたのがとても嬉しかった。 「代役無用」「夢想無用」「愛情無用」… 髙坂氏が演出担当した必殺にはめちゃくちゃ思い入れがある そもそも何回泣いたことか。上記3作品で。

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        無職と魔法

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        • うつら人別帖
          6本

        記事

          マイルスと血と精液と

          たとえば現在が過去の残り香とするならば、 偏にその存在は虚無。あゝ 然るに顕微鏡はうぬの掌にあって、 穢い汁を流し続ける。一体、それに何の意味があるというのか。 マイルスは慟哭す。俺の血と精液をお前たちに捧げると。 果たして俺の掌にはいずれが残るのか。 否、いずれも一向残らぬだらう。 而して産声を以ていのちの静寂とす。 頸をククルノダ。牛頭馬頭が叫ぶ。 汝、朽ち果てしのちは我が下僕として抱えてやらん。 繰り返す。汝、朽ち果てしのちは我が下僕として抱えてやらん。 果たして鮮血

          マイルスと血と精液と

          ダンスホール

          果てしの無い山河の果ての更に果て 一向何も視えない 一向何も聴こえない 愛玩実験動物として 飼育調教されて来た チンパンジーの咆哮により、 そこが最果てであることが如実に知れる 回転するミラーボールと生首 血みどろのダンスホールは払暁まで 虚空に充ちた灰色の空気が 階段を登る人と降りる人の妨げとなり、 私は激しく哭いた。 嘔吐する者は 緑色の涙を流せ オーバードーズを恐れぬ者は 鈍色の脳髄に 幾千もの鋭利な針を突き刺せ 低音のグルウヴに群がる亡者ども いつしか皆が皆、

          ダンスホール

          歓喜の歌

          じりじりと照りつける夏の陽射しによって、教室の中はさながら蒸し風呂の如き様相を呈していた。凡ての窓は全開状態にあったが、一向涼しくならない。地理的な問題もあるのか、二階だというのに風が教室内に全然通らないのだ。兎に角もうすでに暑くてやり切れぬ一限目前のホームルーム。突として担任の松江先生が畏まったように咳払いをし、我々生徒たちに向って見知らぬ少女を紹介し始めた。転校生である。たとえば小学生の時分ならばそれこそ大ニュース。やって来た転校生のぐるりを囲んでは男子も女子も大騒ぎをし

          白骨賛歌

          第一篇 交差する視線と視線の眼力にいつしか心を奪われ、夏の暑い盛りを迎えても猶何も感じることが出来ずにいたのは昨日までの旧き良き想い出。氷の如き冷たさを瞼の裏側に覚えて本日を仕舞いはしたものの、大地に涙が伝うことに対して一向異論は無く、泣く泣く忘れた物そのものを忘却した。これ即ち第十八の念仏を唱えることによって生じる身の切なさであり、ゆうべには頬が赤くとも朝には白骨と化す存在なれば、悲しむことは無い。悦ぶことも要らぬ。果たして君子が君子であるように、愚者も愚者であればよい。

          小説のとっかかりは突然やって来る

          ふとした時に小説のとっかかりが脳味噌に浮かぶ。 今回もそうだった。何気なくTwitterを眺めていたら突然来た。 群像に投稿する予定の小説をどうしようかと ちらちら考えてはいたのだけれど、 はっきりとしたごろりとしたものが 今日の午後まで思い浮かばなかった。 それが俄かに現れたのだから大したものだな俺は。 あとはこのごろりとしたものを いい感じになるまでごろごろ転がしておいて、 時来たらば原稿として形を与えてやらんと思っている。 その前に文學界に送る小説を書くのだが、

          小説のとっかかりは突然やって来る

          いのち、要らんかね

          緑色の粘液が 糸を引いて落ちてくる 奈落の底まで そこは蒼の地獄 血だまり 行き止まり 我はその薄紅色の肌に 爪を這わせる いのち、要らんかね 一束ごとに 購ってくることも可能 小石をつんでは 崩してあそぶ いのち、要らんかね 夜市にて 入手することは不可 小石を砕いては 潰してあそぶ 緑色の粘膜が 割かれて痺れる 堕落の音で風車が廻る

          いのち、要らんかね

          狂へる我が身に赤子の怨

          産まれたばかりの 赤子が慟哭す 母御こひしと只管に慟哭す やがてその哭き声に 神経が衰弱し 私は増殖した赤子たちの 口元を塞ぐ 間引かれた いのちは水へと消え失せて 田園の電線を伝つて 怨 私は黙つて力を籠める 犬張り子の玩具がぴしりと斃れた ふたたび怨 ハルシオンの麻痺れにも似た 白日夢のごとき戯れ 年百年中譫言を洩らし 狂れたる醜つ我が身に みたびの怨

          狂へる我が身に赤子の怨

          感光 / 獄門さらし首

          黒い写真が僕を脅す 感光 夜明けの罪科とアルバイトは 誰にも語れぬまま まっすぐに認めるのだ されば獄門さらし首 暗闇の視線は とどまることを知らず いつまでも 僕を追って来る 偽りなく認めるのだ されば獄門さらし首 西を向いたその面は 言葉を失い 血の気を失い 感光 見知らぬ声が聴こえてくる 風の哭く音 果てしも無く赤 零るるばかり 流るるばかり

          感光 / 獄門さらし首

          日没と因果のテロリスト

          日没が近付いている 歩けど歩けど道は険しく 脳病院へのバスに乗り遅れる 最果ての灯台には 死人が眠っているという うぬが視たのはその幻覚 ヤレ、そんなことがあるものか ヤレ、そんなことがあるものか 過ちを糺せ 呼吸を整えろ 日没が近付いて来る 願えど願えど空は閉ざされ 脳病院へのバスに乗り遅れる 陸奥の馬喰は 生ける屍に導かれるという うぬが聴いたのはその錯覚 ヤレ、そんなことがあるものか ヤレ、そんなことがあるものか 憤りを隠すな 眼前に敵はいる 真冬に生まれた

          日没と因果のテロリスト

          わらひをみな

          展開の無い音楽が展開したかのように思えた。 小屋の空気は湿度が高く、まるでぬるぬるとした微温湯に浸かっておるかの如くに不快な感覚がわたしを苛む。苛まれた限りは刃毀れした刃物にて抗うことしかわたしには到底出来ぬのだが、わたしの肌がそれを拒む。汗を掻いていた。総身の毛穴という毛穴から塩っぽい液体が溢れ出し、着物は肌蹴て大いに乱れ、薄い乳房は疎か下半身の恥毛までもが露わとなっているが故に身動きが取れぬ。 動けば小さな傷を負う。突端の些細な敏感さが命取りになることもあるわけで、果

          わらひをみな

          同人というものへのそこはかとない憧れ

          小説をコツコツ独りで書いていると、ついつい同人というものに対する思いが募って来ることがある。現代的なそれにはあまり興味がわかないのだけれども、いわゆる明治期などの同人に対しては羨望のような感覚を抱かずにはいられない。といっても、そういった昔の同人にとりわけ詳しいわけでもなく、ただ漠然としたイメージを以て憧れているに過ぎないのだが。 即ちこれは恐らく文学の世界からの影響ではなく、巨匠・手塚治虫を筆頭に多数の漫画家たちを輩出したあの東京椎名町のトキワ荘における新人漫画家たちの集

          同人というものへのそこはかとない憧れ

          note創作大賞……こういう企画があるのですね。noteでは小説は発表しないという前提を考え直してもいいかなとか思ってしまう。うーん。どうしよう。

          note創作大賞……こういう企画があるのですね。noteでは小説は発表しないという前提を考え直してもいいかなとか思ってしまう。うーん。どうしよう。