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心の臓は停まったまま

わたしが啼いていた
けだものの如く啼いていた

きよらかだった水流は
やがて滞り
おりとなって
塵芥と共にどす黒く濁る

わたしが嗚咽していた
歯噛みするが如く嗚咽していた

なめらかだったその素肌は
いずれあざだらけとなり
こぼれたなみだ
枯渇した地に毒をもたらす

ひとしずくたりとも
飲んではいけないのだよ

蜂は空虚を舞う
蜜をたらしながら空虚を舞う
鋭く尖った小さな針に
おそれを
微塵も抱いてはならない

わたしの想い人が
眼を縫った
口を縫った 鼻を縫った

階段をおりるべき時が来たのだ
血の気が上昇する

心の臓は停まったまま
見知らぬ知人と挨拶をかわす
蜂の巣にいざなわれるこどもたち
むろん
心の臓は停まったまま


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