白骨賛歌
第一篇
交差する視線と視線の眼力にいつしか心を奪われ、夏の暑い盛りを迎えても猶何も感じることが出来ずにいたのは昨日までの旧き良き想い出。氷の如き冷たさを瞼の裏側に覚えて本日を仕舞いはしたものの、大地に涙が伝うことに対して一向異論は無く、泣く泣く忘れた物そのものを忘却した。これ即ち第十八の念仏を唱えることによって生じる身の切なさであり、ゆうべには頬が赤くとも朝には白骨と化す存在なれば、悲しむことは無い。悦ぶことも要らぬ。果たして君子が君子であるように、愚者も愚者であればよい。誰がそれを責めようか。誰にそれを責められようか。心を惑わす言葉に毒されるべからず。人間すべからく生きて骨へと変化すべし。
第二篇
仮初の仮面を棄てよ。酔うた人心を掌握せんと欲すれば、まず虚偽を囁くことなかれ。それを方便と呼ぶのは心の弱き者のみと心得、その上で衆生を救わば救え、見捨てるのならば見捨てよ。六月に生まれた凡夫たちは雨に打たれて果つる身なれば、今宵の蛙の合唱を共に手を打ち足を踏み称えるがいい。さすれば明け方には水も上がり、生温かい肉塊に群れを為すこととなるであろう。これ即ち第十六の念仏を唱えることによって生じる身のやるせなさであり、ゆうべには虚ろと化し、朝には空へと還る存在なれば、己が身を憐れむことはない。況他者から憐憫を乞うこともならぬ。ただ只管に険しきそれを進むがよい。人間すべからく生きながらの死者へと変化すべし。
第二篇追加
大乗を廃せ。而して小乗をも疎むべし。
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