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♯002 コロナ禍に抵抗する唯一の手段は...

アカウント開設から約一ヶ月。。。。
そろそろnoteを書き始めようとパソコンに向かったものの、新型コロナウイルスの一連をスルーできないというバイアスを振り払えず。拙稿ながら「コロナ禍に抵抗する唯一の手段は...」というテーマでエッセイを書き留めておこうと思います。



政治に対する失望、報道に対する不信、経済への危機感、医療崩壊への懸念といった心理的なものに加え、身体的な行動制限も伴ったコロナショックは、現代社会に大きなストレスを与えました。自分自身も、いまだ漠然とした不安に苛まされており、なかなか虚脱感が拭えません。

そんなコロナ禍で沸き起こったデマの拡散、買占め行為、過剰な自粛監視、感染者への差別偏見、ヘイトクライムといった醜悪な行為。

医療従事者の奮闘ぶりや飲食店などへの支援活動といった良話の影で、人間は生来の醜さも露わにしました。私以外にも、きっと大勢の人たちが、ウイルスよりも恐ろしいのは人間かもしれない、そう感じたはずです。

とはいえ、マスメディアがそうした人たちを晒し上げているだけで、社会全体で見れば「彼等」はまだまだマイノリティに違いありません。しかし、悪質行為をSNSで公開するバイトテロといった極端なものから、インターネット上での誹謗中傷といったあたり前になりつつあるような行為まで。ユビキタス社会によって、良くも悪くも「彼等」がより顕在化してしまいました。

アメリカの人類学者ルース・ベネディクト氏は、欧米人から見た日本人や日本の文化について書いた著書「菊と刀 日本文化の型」の中で、欧米は「罪の文化(神)」であり、日本は「恥の文化(他者)」で秩序を保ってきたと述べています。

この分析に対して、あるコラムニストはコンプライアンス(法令遵守)の考え方が日本人に定着してきており、罪の文化が取り入れられることによって恥の文化が薄れ、「己の欲求を満たすか満たさないか」という自分の欲求を基準に行動を決定するような「欲の文化」に日本が移行しているのではないかと指摘しています。

これが杞憂で無いのなら、私たちは「彼等」を増殖させるかもしれない、秩序が退廃した世界への転換点にもいるのかもしれません。

アフター・コロナやウィズ・コロナと命名される新時代に向かったパライダイムシフトが進行している気配は感じるものの、それらは厚労省が発表した「新しい生活様式」のように、あくまでライフスタイルの再考に留まっており、そこには人間の生き方や考え方を再定義するほどのメッセージは見当たりません。

「彼等」の増殖を抑制するために有効な手立てはあるのか。そして、劇的に変化してしまった世界をサヴァイブする上で大事なマインドとは何なのか。そのヒントは、ずいぶん前に古書店で探し求めた随筆集にありました。

「戦争に反対する唯一の手段は、各自の生活を美しくして、それに執着することである。」

これは、戦後に活躍した文筆家である吉田健一の「感想A,B」にも収載されているエッセイ「長崎」の中で綴られている言葉です。

ピチカート・ファイヴの小西康陽氏がアルバムや書籍で引用したことから若い世代にも知られる有名な一文となりました。

「長崎」はタイトルの通り、吉田健一が原爆から復興する長崎の街を訪れ、平和公園や廃墟となった浦上の天主堂などを巡った短く感傷的な紀行文です。「戦争に反対する唯一の手段は...」の一文は、反戦に限らず、生活態度の見直しなどにも度々引用されてきましたが、日本人がこれからも社会を健全に保持していこうとする上で、いまこそ注目すべきだと思いました。

美しいとは、日本人固有の感性でもあります。それは、新渡戸稲造が「武士道」の中で説いた「義(正しさ)」「仁(情け)」「礼(敬意)」「誠(誠実さ)」といった徳(人としての優れた精神性) を重んじる美意識にほかなりません

また、美意識とは、デザインや人の行為に対してはもちろん、善悪や損得といった二元論に支配されない純潔清浄、誰もが持つピュアなものです。

2006年の第一次安倍内閣で、首相が「美しい国」という国家像を宣言し、「美しい国へ」を上梓したことを覚えている人は少なくないはずです。

一度退陣して2013年に再び首相となった安倍総理は、「美しい国の礎はできた。これからは新しい国づくりに向けていく」といった旨の発言をし、「新しい国へ」を新たに上梓しました。しかし、築けていると思っていた美しい国の礎が、いま崩れ去りつつあるのではないでしょうか。

いまこそ、日本人としての美意識に向き合った、いわば「ビューティフル・ドリブン」とでもいうべき価値観を重用すべきではないかと思います。それは、判断基準であり、生活態度であり、いまだ先進国が成し得ない新しい秩序の在り方です。

身なりを整え、整理整頓に努め、文化芸術を愛でながら、規則正しい生活をする。外出自粛があけたいま、自分はそんな当たり前のことを心がけるところから始めたいと思います。

たくさんの記事の中から私の《note》に目を留めてくださり、貴重な時間を使って最後までお読みいただきありがとうございましたm(_ _)m


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