カスタマーサクセスにおける"3つの思い込み"
どうも、SaaSを提供している会社でカスタマーサクセスをしているgata(@shoyaatg11)です。
今、B2B企業の中でカスタマーサクセス職が求められるようになってきています。2018年はカスタマーサクセス元年とも呼ばれており、twitterでも「カスタマーサクセス立ち上げ中」という方をよく見るようになりました。
そこで、明日から2019年度が始まりますので、今までを振り返りながらカスタマーサクセスにどっぷり浸かった日々を書き綴ります。
▪️新しくカスタマーサクセスチームを検討されている方
▪️今まさに立ち上げをして悩まれている方
向けに、実際に経験して大変だったことや考慮しておいた方良いことをお伝えできればと思います。
カスタマーサクセスに取り組む方が少しでも増えて、経験やノウハウを共有し合えれば良いなと思っていますので、Twitterでも繋がれたら嬉しいです!
なぜカスタマーサクセスが重要なのか
カスタマーサクセス職が求められるようになった理由は、消費スタイルが「所有」から「利用」へと変化したからです。
つまり、「サブスクリプション(月額課金型)」のビジネスモデルが増えているということが関係しています。
サブスクリプションの中でもSaaSを提供する会社が増えています。実際に、SaaS比較サイト「ボクシル」のSaaS業界レポート2018で紹介されているカオスマップを見ても、その数の多さに驚きます。
SaaSの場合、買い切り型のように1回購入したら終わりではなく、毎月お支払いしていただく必要があるので、購入してから本当の意味でのお付き合いが始まるというのがポイントです。
つまり、下記の項目が重要になってきます。
▼SaaS企業が成長する上で重要な3つの考え方
・サービスを継続してもらう(会社にとって必要不可欠だ)
・サービスを利用してプランアップしてもらう(もっと色々したいな)
・接点を増やし、サービスに愛着を持ってもらう(人に勧めたいほど好き!)
この3つの項目を実現するために必要な部隊が「カスタマーサクセスチーム」ということですね。
実際に、世界中で100社を超えるスタートアップへ投資しているVCの前田ヒロさんはARR(年次収益)100億円のSaaS企業を作る10項目の1つ目にカスタマーサクセスを挙げられています。
私は、前田さんの「SaaSは美しい。」という言葉が好きなんですけど、カスタマーサクセスを行うべき理由が分かりやすいので、前田さんのブログの内容を引用させていただきます。
SaaSは、矛盾がないビジネスモデルだ。クライアントの満足度が高ければ退会率が低くなる。退会率が低ければ、その年の売上が来年の売上としても残っていく。そういう美しいビジネスモデルだ。きちんとやれば必ず良い会社になっていくはずだ。そして、他のビジネスモデルと違って、急に売上がゼロになることがない。そう、なんとかなる。SaaSは、正しくやれば、正しく成長する。
ブログ「ARR100億円のSaaS企業を作る10項目」
このように、クライアントの満足度が高ければ退会率が低くなり、その年の売上が来年の売上としても残っていくという美しいビジネスモデルだからこそ、顧客の成功を全力で追うカスタマーサクセスが重要ということですね。
カスタマーサクセスに対する3つの思い込み
私は今までずっと営業職だったのですが、2017年に今のチームができたことで異動し、2年ほどカスタマーサクセスに携わってきました。
立ち上げ後は「顧客把握」→「仕組み作り」→「チャーン回避・アップセル」という順番で取り組んでいったのですが、試行錯誤の連続で多くの失敗もしています。
年度末ということもあり、2018年度の振り返りも兼ねてこの2年間のことをまとめていると、カスタマーサクセスにこれから取り組む人は増えてくるだろうし、この情報って一つの事例としてシェアした方が絶対に良いなと考えるようになりました。
まとめている時に感じたのは下記の2点です。
この問題が解決されればもっとカスタマーサクセスをやってみようと思うのではないか?
立ち上げている人に対してこの内容を伝えれば、カスタマーサクセスのイメージがつき、気持ちが楽になるのではないか?
この2つの問いに対して、具体的には下記のような内容を考えていました。
▼ハードルが高くて、そもそも取り組めていないのでは?
▼全て無料でやるから苦しくなるのでは?
▼カスタマーサクセスってこうあるべき!と考えすぎなのでは?
カスタマーサクセスに関してはまだ日本で普及している訳ではないので、情報も多くはないと感じています。
イベントや勉強会などは増えている印象がありますが、それでも潜在層の母数を考えるとまだまだ足りないと思いますし、今からカスタマーサクセスを始めようと思っている人や始めたばかりの人たちに対する情報はあまり見たことないので、少しでも参考になれば幸いです。
"思い込み1"
カスタマーサクセスチームの立ち上げはハードルが高い?
今とても重要視されているカスタマーサクセスですが、必要であるということは認知はされていても取り組めていないという会社が多いんじゃないかな?と感じることが多いんですよね。
その理由は、ノウハウがない状態で貴重な人員を割かなければならないという点でハードルが高いからだと考えています。
例えば、カスタマーサクセスチームで行うことをざっくりまとめてみると下記のような流れになりますが、この場合3つのチームに分かれます。
1、オンボーディングをして定着、浸透させる
→オンボーディングチームが担当
2、定期フォローにより、熟練度を高めてもらう
→定期フォローチームが担当
3、効果が出た(成功)ことでアップセルしてもらう
→クライアントセールスチームが担当
当社の場合はコンサルチームからカスタマーサクセスを行う組織が出来ましたが、多くの会社はいきなりこの組織を作るとなると難しいケースも多いのではないでしょうか。
どこから人を割くか?誰に立ち上げをさせるか?など問題が山積みです。この組織を立ち上げるのは多くの企業にとってハードルが高いわけです。
そうなってくると選択肢は二つに一つで、「立ち上げを諦める」か「兼務してミニマムでスタートする」かになってきますが、先ほどもご紹介した通りSaaSは美しいので、形はどうであれほとんどの会社で絶対に取り組むべきことだと思っています。
なので、カスタマーサクセスを綺麗に立ち上げようとするのではなく、「オンボーディング」「定期フォロー」「クライアントセールス」この3つを兼務してまずはノウハウを溜めていくというところから最短でやった方が良いなと。何ならセールスは営業に振っても良いかもしれません。
私も今福岡支店で「オンボーディング」「定期フォロー」「アップセル」を兼務(一人)で行なっており、兼務した時の難しさに関しては人一倍体験をしたと思っているのですが、やってみて分かることも多いですし、何をすれば改善されていくかが分かってきます。
兼務したことで経験できた失敗談として2つエピソードを紹介します。
失敗エピソード1
カスタマーサクセスを始めた時は、「誰がなんと言おうと担当している数百社全てを一人で幸せにする!(成功させる)」と上司に豪語して、施策を立てて実施しました。既存顧客のポテンシャルなんか関係ない!ポテンシャルは自分次第で青天井に伸ばすことが出来る!と言っていた気がします。
その結果、やることが増えすぎて、やらなければならないことを優先して行うことが出来ない状態になりました。普通に無理です。。。
失敗エピソード2
顧客からのアップセル/クロスセルとチャーンどちらも指標として追っているのですが、クロスセルをしてもらいたいがために、フォローで訪問しているのに途中から提案に切り替えて別商材を提案するということもありました。
これはカスタマーサクセスを行う中で最悪なやり方ですね。提案して欲しいという顧客もいますが、「フォローします!」と言ってアポイントを受けたのにこれだと、「結局、初めから提案したかったのかな?」と信頼を失くしてしまいます。
ただ、全顧客を幸せにする!いう気持ちで取り組んだからこそ、行動のバランスと優先順位について死ぬほど考えるようになりましたし、提案の仕方を間違えたからこそ、別商材も導入した方がより成功に近づくと思ったら胸を張って提案に行こうと思うようになりました。
とにかくカスタマーサクセスに関しての情報はまだまだ少ないので、実体験を積むためにも、とりあえず始めてみましょう!
"思い込み2"
カスタマーサクセスは無料じゃないとダメ?
そもそもの話ですが、カスタマーサクセスって「顧客の成功」ですよね?「エンタープライズにハイタッチをして、SMB以下にはロータッチ、テックタッチをポテンシャルに分けて実施すること」でなければ「NPSや利用状況を確かめながらヘルススコアを追うこと」でもないのです。
もちろん、無料でコンサルすることで満足してもらい、アップセルに繋げていくことでもありません。
何度も言いますが、目的は「顧客の成功」です!
営業からカスタマーサクセスチームに移ったからというのもありますが、私自身初めは、「カスタマーサクセスって無料でサポートしてアップセルする役割」と考えていました。
※SFA、CRM、ERPなどインフラになるようなものだとまた考え方が違ったのかもしれませんが
有料か無料かというのは手段でしかありません。
ここでリソースの問題を考えてください。商材特性上、顧客をフォローすればするだけ口コミが広がり、フォローが売上に直結する会社もありますが、多くの企業で収益化は中長期施策になるケースが多いでしょう。カスタマーサクセスチーム単体での黒字化というのはそんなに簡単なことではないと思っています。
先ほどの話のように、チームを立ち上げる場合だと、人員の問題で兼務になりがちなので、無料で出来る範囲内のサポートしながら他な役割もこなしていきます。私が所属している福岡支店もこのやり方をしていました。
ただ、しっかりと時間がかけられるだけの料金を顧客から頂けたら話は別で、人員を割いてコンサルが出来るわけです。これはSaaSを提供する企業にとって多くの恩恵があります。
例えば導入コンサル(有料オンボーディング)をした方が定着率が良くなるので、「導入期間が長くなる」「将来アップセルになる確率が高くなる」という理由からLTV最大化に繋がる可能性が高くなります。
導入したツールを最短で軌道に乗せたい会社は山ほどいるということを忘れてはいけないですし、時間をお金で買いたい企業もいるので、プランとしてはあった方がより顧客の成功の近付きます。
コンサルさせてもらった企業はLTVが高く、サービスを使いこなしている優良事例になっていただけたり、フィードバックももらえるので良いこと尽くしなのですが、立ち上げたばかりだと工数がかかってしまう場合もあるので、成功へのシナリオを作り込みある程度パッケージ化させるか、無料で出来る限りのサポートをすることをお勧めします。
結論、「収益ドライバー」として顧客とどのように関わるかをアップセルとチャーンの視点から突き詰めて考えていけば自ずと答えは出てくるかと思います。
【番外編】ライザップは最高のカスタマーサクセス
もちろん料金は高いかもしれないですが、ほとんどの顧客は痩せていますし、ちゃんと痩せるという目的にコミットしている。
一番悪いのは、カスタマーサクセスと言いながら色んな顧客に満遍なく50点のフォローをして、50点のサクセスになることで、中途半端にするのは自社にとっても顧客にとっても良くないと思います。痩せたいと強く願う人たち(ターゲット)に、それなりの覚悟を持って(高い料金設定でもやりたいという人に対して、結果にコミットする)、サポートすることで実際に結果も出すというのが本当のカスタマーサクセスなのではないでしょうか。
"思い込み3"
カスタマーサクセスとはこうあるべき
例えば、カスタマーサクセス関連の情報を集めてみるとこのようなことが書いてあります。
・正しい顧客に販売する
・ロイヤリティの構築に、個人間の関係はいらない
・トップダウンかつ全社レベルで取り組む
・カスタマーサクセスとセールスは分けた方が良い
・カスタマーサクセスは兼務ではなく、分業すべき
・評価の指標はしっかりと決めて実施する
・カスタマーサクセス専用のツールを導入しないといけない(あった方が良い)
このように、カスタマーサクセスに関する様々なノウハウが共有されているわけですが、絶対ではないと考えています。顧客のフェーズによって例外はたくさんありますし、常に自社にとっての最善を追い求めて実施していく方が良い。
振り返って考えてみるとよく分かるのですが、「企業の規模」も「ビジネスモデル」も「文化」も「事業フェーズ」も違う中でこの正攻法が当てはまるわけはないわけのです。理想はここに書いてある情報だったりするのですが、現実はそう甘くはありません。
当てはまるものは多いとは思いますが、自社の場合どうなのか?をしっかりと考えれば、違うという結論がすぐに出てきたりもしますし、施策を実施した結果、結論が出ることもあります。
私の一番の失敗は、多くの情報を仕入れて「理想」を作ってしまったことです。理想と現実のギャップを埋めることができずに2年間何が良いのかを模索してきました。
本当にしなければならなかったのは、「顧客の成功」と向き合うことでチーム、あるいは戦術としての”カスタマーサクセス”については答え合わせでしかなかったのだとようやく気付きました。
「顧客の成功」と向き合って出てきた施策を繰り返していくことが、SaaSを提供する企業が成長していくための重要な要素になると思いますので、是非自社に置き換えて考えてみて欲しいです。
カスタマーサクセスにまだ正解はない
長くなりましたが、今回色々書いた内容は、私が自社で2年間カスタマーサクセスに携わって感じたことなので、他社の場合は全く違うということもあるかもしれません。
別にカスタマーサクセスの専門家ではないので。
ただ、お伝えした通り、カスタマーサクセスに必死で向き合ってきた2年間の中で、多くの気付きがあったことは間違いありません。それは、どの本にも書いていないし、セミナーや勉強会で教えてもらえることでもないと思っています。
「カスタマーサクセスには正解はない」と思っていますし、これからも自社にとってのカスタマーサクセスを創っていくということに関しては変わりはないと思うので、考えていただければ幸いです。
また、カスタマーサクセス立ち上げのハードルが少しでも下がれば良いと思いますし、多くのカスタマーサクセスに携わる方達と意見を交換しながらカスタマーサクセスを盛り上げていければ良いなと考えていますので、是非noteでもTwitterでも絡んでください!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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