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ぜひご覧ください 学生さんによる素晴らしい報告

私が2カ月に1回開催している不登校支援をとらえなおす勉強会シリーズ第4回目「タテヨコナナメさんのお話」(4月25日開催)の内容を、竹内元准教授がご指導されている宮崎大教職大学院2年生の山口ひかるさんが報告書としてまとめてくださいました!

当日参加がかなわなかった方へ共有できますし、ご参加いただいた方の振り返りにも大変ありがたい資料です。

竹内先生、山口さん、本当にありがとうございます。ぜひご覧ください



不登校支援をとらえなおす(第4回)「タテヨコナナメさんのお話」報告

2024年4月25日(木) に、不登校支援をとらえなおす(第4回)「タテヨコナナメさんのお話」参加者は会場18名、オンライン13名である。

講座では、「こども未来応援団体タテヨコナナメ」(以下タテヨコナナメ)の理事長の茭口寿文さんと現場主任の玉木昌子さんから、タテヨコナナメの活動についてのお話があった。

新たなタテヨコナナメの出会い、新たなコミュニケーションの形を提供することを目的としている団体である。令和元年に設立され、今年で6年目となる。

現在のスタッフは役員11名、スタッフ10名とボランティアを含め35人以上のスタッフで運営されている。

不登校の子どもや学習についていけない子ども、調理が苦手であったり金銭管理ができない家庭といった境遇にいる人たちにとって、出口がない、つなぎ先がないことが三股町の地域課題と捉え、「タテヨコナナメ」は設立されている。

体験活動を行う「OUTING」や子ども食堂にもなっている「森の子学習塾」、フリースクールの「ひる学校」など、主に9つの活動を行っている。

「タテヨコナナメ」の特徴は3つある。

第一に、不登校経験者や多様な職種に就く人々、そして南九州大学の学生といった多様な人々が集う場である。

第二に、地域やさまざまな団体・企業との連携がある。例えば、「自衛隊を探せ!」というイベントは、自衛隊の方がその専門性を活かして本気で隠れ、参加者は鬼となって隠れている自衛隊の方を探し出す、本気のかくれんぼである。参加する誰もが心躍る取り組みがある。

第三に、子どもを主体とした学びを実践している。

フリースクールの形態として、「タテヨコナナメ」では3つの形態で運営されている。

「ひる学校」は、主に不登校の子どもたちの居場所である。午前中は体験活動を行い、昼からは基礎学習の時間となっている。決まった活動や、必ずやらなければいけないものは設定されておらず、子どものしたいことを子どものペースでできる場所である。現在、出席認定を受けている学校は6校あるだけでなく、活動記録を提出する際などに学校の先生が子どもたちと関わる工夫があり、それが子どもたちにとって、学校が自分たちを忘れていないという実感になる。

「よる学校」は、ひきこもりやシングルマザーなどと「ラベリング」された立場で集まるのではなく、好きなことや興味のあることをきっかけに集まることのできる「ラベリングされない場所」である。また、日中はスタッフの確保が難しい反面、夜は多様な人が集まる。多様なつながりを通して、子どもにとって社会へのハードルが下がるだけでなく、普段つながることのできない子どもとつながる機会になる。

「ゆう学校」は、「ひる学校」と「よる学校」のすきま時間である。森の子学習塾には、日中は学校に通う子どもも訪れる。学校に行かない子どもたちにとって、自分の所属学校に通う友達との出会いがあり、ヨコのつながりをつくる場所である。友だちから学校の様子を聞くことで、学校へのハードルが下がることもある。

玉木さんが、10月からの子どもの変容について話してくださった。

来たばかりの子どもたちは、表情が硬く、自分のしたいことが分からない、したいことを表現できなかった。

そんな中、スタッフは、とにかく外に出たり好きなことをしたりを繰り返しながらゆっくりと過ごす子どもたちを、見守り、寄り添った。2か月ほど経った頃から、言葉はないもののオルガンを自分の旋律で弾く子どもがいた。さらに、部活をつくろうと子どもから声があがり、子どもたちがプレゼンをつくり発表をした。すると、それまでしたことのなかった図書室の掃除を、部活動の活動場所の確保のために、子どもたちが自ら行った。

中学生を中心に、自分から勉強をする子どもが現れ、それを見た小学生も勉強するようになった。

ぽつぽつと学校に行きたいという子どもがいたり、制服を着てフリースクールに来る子どもが現れる。

タテヨコナナメの学校は自然体でいられる場所、その子らしい飾らないところを出せる場であり、玉木さんは「心が満タンになる場所」と表現した。

「タテヨコナナメ」は、課題を受け入れることを前面に出していない。「二階建て構造」と表現されており、「タテヨコナナメ」の活動に参加する人は、楽しそうとか興味があるとか前向きな気持ちから入ってくる。同じ興味を共有する中で信頼関係が築かれていき、不意にSOSが出てくることがある。

「タテヨコナナメ」のマップを見るとわかりやすいが、三股町には、子育ての場だけでなく、大人が自分を解放できる場所が点在するようにデザインされている。人の楽しさに便乗することが許される場所となっている。

加えて、「タテヨコナナメ」には協力者がたくさんいる。

三股町の社会福祉協議会をはじめ、一緒にチャレンジするする仲間がいて、異質性をもつ者同士が手を取り合う感じがある。

あらかじめ連携してなにかに対処するというよりも、子どもからのアクションが起こった際に、その場に集う人たちで子どものニーズに応えようとするイメージだ。

茭口さんは、きっかけをつくってはいるが、むしろチャレンジする人たちに巻き込まれているような感じとおっしゃった。

「タテヨコナナメ」が大事にしていることは、子どものあるがままを受け入れることである。

これは、スタッフにも同じことが言える。

スタッフの得意分野を生かして仕事をするが、できないことはやらない。誰もが自分のありのままを大事にできる場所になっているのだろう。

最後に茭口さんは、雰囲気に合う合わないがあるために繋がれない子どももいることを前提に、学校だけではない子どもたちの学ぶ場が増えることで、子どもや保護者が学びの場所、それぞれのカラーを選ぶ時代になっていくことに期待を寄せていた。


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