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鳥類研究所

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鳥の生物学、特に鳥の行動について学びます。
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記事一覧

ニワトリ細胞アトラス:科学と分散型科学(DeSci)

2022年にプレプリントとして発表した「Chicken Cell Atlas: Science and DeSci」が正式の印刷版(オープンアクセス)になりましたので、日本語の翻訳版(DeepLを利用)を掲載しておきます。 元論文 Smith J, et al. Fourth Report on Chicken Genes and Chromosomes 2022. Cytogenet Genome Res. 2023 Jan 30. doi: 10.1159/000529

満月で空高く飛び、月食になると降下するクロムジアマツバメ

クロムジアマツバメ(Cypseloides niger borealis)は、がっしりとした体と長く尖った翼を持つ鳥です。羽色は黒で、頭部に白い部分があり、鳴き声は甲高い鳴き声が連続し、時折、より長い鳴き声も聞かれます。この鳥は、北米のアラスカ南東部からメキシコ南部で繁殖し、コロラド州からブラジル南西部に移動をします。新世界のクロムジアマツバメは絶滅の危機に瀕しています。 旧世界のアマツバメは、6-10ヶ月にわたって空中生活をおくるとされています。繁殖期以外の期間は、24時

脳のニューロン数は、爬虫類と鳥類で大違い

鳥類と哺乳類は、爬虫類よりも前脳と小脳のニューロンの数が劇的に多い。3億年以上の爬虫類、鳥類、哺乳類の脳の進化において、脳のニューロンの数の大規模な増加は4回起こったことを示唆する研究が、チェコ・プラハのカレル大学の研究チーム(Pavel Němec研究室)から報告されました。 The evolution of brain neuron numbers in amniotes. 有羊膜類における脳のニューロンの数の進化 Kverková K, Marhounová L,

鳥類の形態学的、生態学的、地理学的データベースAVONET

9万羽以上の鳥のくちばしや翼の形態計測値などを集め、理論を検証し、保護に役立てることができるAVONETと呼ばれる新しいデータベースが公開されています。 AVONETは、インペリアル・カレッジ・ロンドンのジョセフ・トビアス(Joseph A Tobias)博士が率いる国際研究チームによって作られたもので、Ecology Letters( 2022年2月)でその詳細が公式に解説されています。 https://doi.org/10.1111/ele.13898 それぞれの鳥

ガチョウは世界最古の家禽か?証拠が中国でみつかる

現在、もっとも一般的な家禽であるニワトリ(Gallus gallus)が飼育されていたという確たる証拠は約4000年前以降とされています。 チャールズ・ダーウィンは、『The Variation of Animals and Plants Under Domestication』の中で、ガン類であるガチョウの家畜化は非常に古い時代であるとしています。それは、考古学的な証拠から、これまで約3500年前のエジプトだといわれてきました。古王国時代(紀元前2686年~1991年)の

仲間を「救助」する鳥:追跡装置を取り除くカササギフエガラス

カササギフエガラス(鵲笛鴉、学名:Gymnorhina tibicen)は、オーストラリア、ニューギニア島南部に分布するスズメ目フエガラス科の鳥です。カササギ(Magpie)と外観は似ていますが違ったものです。しかし、現地では“マグパイ”(Magpie)と呼ばれています。ユーカリ林や川近くに生息していますが、都市でもしばしば見られる鳥です。2-12の個体で生活していることが多く、下のビデオにあるように、仲間と遊ぶ姿がよく観察されるそうです。 カササギフエガラスに、鳥を追跡す

地磁気の水平の傾きを感知して渡りの到着地を知る渡り鳥

ヨーロッパヨシキリAcrocephalus scirpaceusは、ヨーロッパから西アジアで繁殖し、7000km以上離れたアフリカのサハラ砂漠以南で越冬するために、渡りをしている。サハラ砂漠上空では、6kmの高さを飛行するという。ヨーロッパヨシキリは、渡りの時、地磁気の水平の傾き(伏角)を感じて、ヨーロッパの繁殖地に到達したと判断しているようだ。 渡り鳥は、視覚、嗅覚、磁場、あるいは星などを利用している。そのうち、磁場を地図として利用する渡り鳥の問題の1つは、その強度と方向

何十万年もの間、同じ鳥の歌が歌い継がれる

東アフリカのミナミゴシキヨウチョウ(Cinnyris Fuelleborni, East African double-collared sunbirds)。 こうした鳥の仲間はふつう場所によって歌が大きく変化します。 ところが、タンザニアのイココトとモザンビークのナムリの個体群のCinnyris Fuelleborniの歌は、数百キロメートル離れているにもかかわらず、ほとんど同じです。それは姿も、歌も同じです。この地域は地殻が安定していて、それぞれの個体群は、数十万年の

ルソンの鳩

この鳩は撃たれて怪我をしているのではないです。 ルソンヒムネバトLuzon bleeding-heartといいます。 今、話題になっている鳩のガイドブックから。 ヒムネバト 他の出血している心臓の鳩のように、この種はそれが心臓を通して撃たれたように見えます(そしてあなたは責任があるでしょう)。しかし、その赤いパッチは、血ではなく羽でできています。フィリピン原産のルソン島のヒムネバトは恥ずかしがり屋で、野生では見つけるのが難しいです。ヒムネバトはすべて絶滅の危機に瀕してい

鳥の嗅覚

鳥は、紫外線が見えたり、磁場を感じたり、あるいはトウガラシの辛味を 感じなかったり、世界をヒトとは違うように感じています。 でも、嗅覚については、あまり発達してないのだろうと考えられてきました。一般に鳥の嗅球は小さいようです。 ところが、ハゲタカやヒメコンドル(turkey vulture, Cathartes aura)といった巨大な猛禽類の仲間では、かなり大きな嗅球が見られ、臭覚を利用しているようです。実際に、ハゲタカの場合は腐った肉、ワタリアホウドリ海面のプランクト

Tabula Gallusへの道

2022年1月にIJMS誌に発表した総説「Towards Tabula Gallus」の日本語翻訳です。DeepLを用いたのち、手動で修正しましたので、不完全な箇所が沢山あります。 Towards Tabula Gallus Masahito Yamagata Int. J. Mol. Sci. 2022, 23(2), 613 © 2022 by the author. Licensee MDPI, Basel, Switzerland. This article is