見出し画像

地磁気の水平の傾きを感知して渡りの到着地を知る渡り鳥

ヨーロッパヨシキリAcrocephalus scirpaceusは、ヨーロッパから西アジアで繁殖し、7000km以上離れたアフリカのサハラ砂漠以南で越冬するために、渡りをしている。サハラ砂漠上空では、6kmの高さを飛行するという。ヨーロッパヨシキリは、渡りの時、地磁気の水平の傾き(伏角)を感じて、ヨーロッパの繁殖地に到達したと判断しているようだ。

渡り鳥は、視覚、嗅覚、磁場、あるいは星などを利用している。そのうち、磁場を地図として利用する渡り鳥の問題の1つは、その強度と方向が、時間の経過ととも変わることだ。地球の磁極は長年の間に移動していることが知られている(かつては南北逆転したことも)。繁殖のために特定の場所に辿り着かなければならない場合、大問題になってしまう。

オックスフォード大学のチームは、ヨーロッパヨシキリが渡りの際、地磁気の水平の傾き(伏角 inclination)を利用しているらしいことを見つけ、Science誌(2022年1月27日)に発表した。ヨーロッパヨシキリは、アフリカから決まったコースで飛行を開始し、以前に感じたものと一致する地磁気の伏角を感知すると、着陸し、仲間を見つけ、子育てを始めるようだ。伏角は、強度、偏角(declination)という他の地磁気の要素と比較して、揺らぎが最も小さいため、到着点である繁殖地を見つけるのに適していると考えられる。

チームは、アフリカで越冬後、ヨーロッパでの鳥の繁殖地について80年近くの位置データを収集した。これによると、個々の鳥は、必ずしも前年に観察された場所に戻っていなかった。数十キロ離れた別の場所に到着することがよくあった。これらの繁殖地のブレを、変化している地磁気の強度や角度など、さまざまな組み合わせで鳥が戻ると予想するモデルを検討してみた。チームは、その結果、渡りの際、地磁気の伏角を利用しているらしいと予測している。

元論文と参考にした記事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?