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脳のニューロン数は、爬虫類と鳥類で大違い

鳥類と哺乳類は、爬虫類よりも前脳と小脳のニューロンの数が劇的に多い。3億年以上の爬虫類、鳥類、哺乳類の脳の進化において、脳のニューロンの数の大規模な増加は4回起こったことを示唆する研究が、チェコ・プラハのカレル大学の研究チーム(Pavel Němec研究室)から報告されました。

The evolution of brain neuron numbers in amniotes.
有羊膜類における脳のニューロンの数の進化
Kverková K, Marhounová L, Polonyiová A, Kocourek M, Zhang Y, Olkowicz S, Straková B, Pavelková Z, Vodička R, Frynta D, Němec P.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2022 Mar 15;119:e2121624119.

脳の進化に関する比較研究では、これまで脳の大きさを議論することが多かった
です。しかし、高い認知能力に至る進化の道筋を理解するためには、脳の大きさではなく、その基本的な単位であるニューロン数を比較する必要があります。この研究では、有羊膜類(爬虫類・鳥類・哺乳類)のニューロン数を調査しました。

その結果、爬虫類の脳は体のサイズに対して小さいだけでなく、ニューロン密度も低く、平均ニューロン数は同じ体のサイズの鳥類や哺乳類の20倍以下であることがわかりました。つまり、有羊膜類の進化で、最も劇的な脳のニューロン数の増加は、鳥類と哺乳類の出現に伴って別々に起こったと考えられます。

哺乳類では、これまでの研究で、霊長類の脳のニューロンの密度が高いことが判明していました。一方、今回の研究では、鳥類のなかでも、認知能力が高いとされるキツツキ、ハヤブサ、オウムなどを含むいわゆるテルラベス(Telluraves、core landbirds)では、ニューロンが比較的多いことも明らかにしました。このことは、動物の認知能力を進化的に考える際、これまでの相対的な脳の大きさを指標としてきた研究に新たな視点を与えるものであると考えられます。

Proc Natl Acad Sci U S A. 2022 119: e2121624119.
ニューロンの絶対数 
Creative Commons Attribution License 4.0 (CC BY).

この研究では、2005年にSuzana HerculanoとHouzelが開発した、脳組織をホモジナイズし、無傷の核をDAPIとNeuN抗体で標識することによってニューロン数を定量化する手法(Isotropic分画法)を用いています。

しかし、この方法では、ニューロン自身の大きさやシナプス、それらの結合性の
状態まではわからず、将来的にはこのような指標も比較研究では考慮されていくべきと考えられます。

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