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ガチョウは世界最古の家禽か?証拠が中国でみつかる

現在、もっとも一般的な家禽であるニワトリ(Gallus gallus)が飼育されていたという確たる証拠は約4000年前以降とされています。

チャールズ・ダーウィンは、『The Variation of Animals and Plants Under Domestication』の中で、ガン類であるガチョウの家畜化は非常に古い時代であるとしています。それは、考古学的な証拠から、これまで約3500年前のエジプトだといわれてきました。古王国時代(紀元前2686年~1991年)のエジプトでは、ガチョウの図が確認されており飼育されていた可能性もあります。ガチョウは古代メソポタミアでも食用や生贄のために飼われており、初期王朝時代(前2900-2350年)以降のメソポタミア美術にみられます。ガチョウは、ヨーロッパ南東部では、前3000年頃に、おそらくギリシャで飼育されていたとされていますが、ガチョウの家畜化について信頼できる証拠は前8世紀ごろに成立したとされる「オデュッセイア」の中に出てきています。エジプト新王国時代(前1552-1151年)になると、同時代のヨーロッパとともに、確かに完全に家禽となったガチョウが存在し、前1世紀にはローマ人によって数種類のガチョウの飼育が確立されていました(https://en.wikipedia.org/wiki/Domestic_goose)。

日本の北海道大学の研究者らは、中国長江下流域の 7000 年前の稲作地域である田螺山遺跡から出土したガチョウの骨を、組織学、地球化学、生化学、形態学的なアプローチで検討することで、ガチョウの家畜化は7000年前にさかのぼり、ガチョウは史上最も古い家禽種である可能性を発表しました。

元論文
Eda M, Itahashi Y, Kikuchi H, Sun G, Hsu KH, Gakuhari T, Yoneda M, Jiang L, Yang G, Nakamura S. (2022)
Multiple lines of evidence of early goose domestication in a 7,000-y-old rice cultivation village in the lower Yangtze River, China.
Proc Natl Acad Sci U S A. 2022 Mar 22;119(12):e2117064119.

https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.2117064119

https://doi.org/10.1073/pnas.2117064119

ガチョウの骨は、かつて狩猟採集民と農耕民の両方の生活を営んでいた石器時代の集落で発見され、ここでは稲作もしていました。研究者たちは、この遺跡から232個のガチョウの骨を発見しましたが、そのうち4個は生後8週間から16週間の幼鳥
の骨でした。この鳥が生きていた時期には野生のガチョウは生息していなかったと考えられるため、この鳥が遺跡の近くで孵化したことを示しているそうです。また、鳥の骨に含まれる化学物質から、その地域の水源で飼育されていたことを示唆する証拠も発見されました。また、成鳥の大きさがほぼ同じであることから、飼育下の繁殖であると考えられるということです。


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