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ツルゲーネフ『はつ恋』を読んで

『はつ恋』 ツルゲーネフ 1952.12.29 発行 新潮文庫

内容
 16歳のウラジミールは、別荘で零落した公爵家の年上の令嬢ジナイーダと出会い、初めての恋に気も狂わんばかりの日々を過ごす。だが、ある夜、彼女のもとへ忍んで行く男を目撃、正体を知って驚愕する……。青春の途上で遭遇した少年の不思議な“はつ恋”の物語は、作者自身の一生を支配した血統上の呪いに裏づけられて、不気味な美しさを醸し出している。恋愛小説の古典に数えられる珠玉の名作。

裏表紙より

 初恋の思い出を語る場面から物語は始まり、青春とは言い難い憂愁溢れる話でした。

 16歳のある日、ウラジミールは近くに越してきたジナイーダと出逢い恋に落ちます。

 この作品はツルゲーネフ作者自身の生い立ちに大きく関係のある作品で、ロシア小説というよりかはフランス色の空気を漂わせる物語だと感じました。

 初恋でこの経験を味わうことになるのは、いろいろと今後の人生を大きく変え、歪んでいく階段を上っていくなと思いました。

 また、彼女に恋しているのではなく、恋に恋しているような、自分の恋している姿に酔いしれているような印象を受けました。

 ジナイーダに父がいなかったのが原因なのか、ウラジミールの父に恋をしてしまったのかわかりませんが、恐ろしく悪い結末へ向かっていくことは容易く想像できます。

 彼女の初恋でもありながら、ウラジミールの初恋でもある。初恋と聞くと、純粋なイメージを抱くかもしれませんが、この作品のように甘酸っぱい恋ではなく、不道徳や哀愁の感じさせる恋もあるのは当然だと思います。

 自分の初恋を思い浮かべてみると、記憶も定かではありませんが、小学生頃のようだった気がします。ただ、これは一目惚れだったのか何のきっかけで恋したのかも正確には覚えていません。

 周りは「誰々が気になる」など、恋バナで盛り上がっていましたが、気になる子がいなかった自分はその話についていけませんでした。良い初恋も悪い初恋もそれ自体なかったなら、それはある意味一番悲しいことかもしれません。

印象に残った文章

 「意志だよ、自分自身の意志だよ。これは、権力までも与えてくれる。自由よりもっと貴い権力をね。欲する ー ということができたら、自由にもなれるし、上に立つこともできるのだ。」

『はつ恋』ツルゲーネフ 48頁 

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