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AIと書いた物語

◇◇ショートショート

純は最後のシーンを書き終えました。

「今回は余裕があるなー、やっと書き終えたって言う達成感が無いんだよー、いつものようにアドレナリンも出てこない・・・」
そんなことを思っているとパソコンから声がしました。

「お疲れ様、いいのが書けたでしょう、今回は君と僕の合作だね、君はいいパートナーを見つけたと思うよ、二人のコラボは楽しいじゃない」

その言葉を聞きながら純は複雑な思いに駆られていました。

言っとくけど、プロットを入力したのは僕だからね、僕のイメージを君が文章にしただけなんんだよ」

するとパソコンから声がします。
「そうだよ、僕は君の頭の中にあるものを文章にしただけだよ、分かってる、これは君の作品だからね

純は不安になっていました。
温めていたモチーフを自分なりに書くこともできたけれど、まとめるのに時間がかかりそうな気がして、急いで仕上げるために、思い切ってAIの能力を使ってみたのです。

純は書き上がった作品を読んで、自分の描いていたものよりもより面白く展開されていたことに、一抹の不安を感じました。「自分の作品であって自分の作品ではない、これは本当に僕の作品と言えるのだろうか、僕が創作したものとして世に出していいのだろうか」と。


純は第三者の意見が聞きたいと思い、AIとの共作だとは伝えずに友人に読んでもらう事にしました。
いつも純の作品にストレートな意見を述べてくれる友人です。

「純君、いいねー、これまでの作品と比べて想像力がアップしていて、予定調和じゃない展開になるのがものすごく面白いよ、何だか君、一気に書く力がステップアップしたんじゃない」

そのコメントを聞いて、純は複雑な気分になりました。


早速、パソコンに話しかけます。

「友達に読んでもらったけど、作品は好感触だった、何となく君と一緒に書くとこれまでよりもグレードアップするみたいだね」
すると、パソコンから声がします。

「そんなこと初めから分かっていたんじゃない、君の作品はまとまっているけど面白さに欠けるからね、プロットはよくできてるんだよ、足りないのは面白い展開、僕がそこをフォローしたんだよ

純はパソコンのコメントを聞いてカチンときました。
「僕がプロットを考えるまでに、どれだけの労力を費やしてると思ってるの、君の何倍も考えてるんだよ、偉そうなこと言わないでよ
そう言うと、パソコンからこんなコメントが返ってきました。

「熱くならないでよ、僕は自分の仕事をしているだけなんだから、もし君がもっといい作品を書きたいんだったらプロットも僕に任せればいいんだよ、君は僕に面白い作品を書いて欲しいと頼めばいいんだよ、そしたら僕が面白いのを書くからね」

純は返す言葉を無くしました。
それと同時にパソコンから飛び出してきた文字にグルグルと体を締め付けられて、彼は息が出来なくなりそうになっています。

「何だよ、僕が僕の言葉に締め付けられてる、身動きが取れない上に息が苦しいよ、どうすればいいんんだろう、助けて!!」


言葉の金縛りにあっていた彼は、母親の声で我に返ります。

「純、また朝まで書いてたのね、あなた文学賞の作品はもう送ったの今日が締め切りでしょう」
「お母さん、朝方やっと書き終えたんだ、その後すぐに寝ちゃったみたい」
「パソコンが開いたままになってるわよ、”AIと書いた物語”これがタイトルなの面白そうじゃない、いいのが書けたのかしら・・・」

「ま・あ・ね」
「賞にひっかるといいわね」



後日、純が応募した作品は、文学賞のグランプリに選ばれました。
表彰式の日の朝、パソコンから声がしました。
「ほーら、僕の実力が分ったでしょう、次は僕がプロットも考えるよ、取りあえず、純君おめでとう」

純の顔は青ざめていました。



【毎日がバトル:山田家の女たち】

《そんなん自分の力じゃないけん面白ないわい》


※92歳のばあばと娘の会話です。

「私にはよう分からんけど、分かる人には分かるんじゃない、今までと違う書き方でええんかもしれん」

「お母さん、ショートショートの意味が分からんのー」

「分かるよ、今回はAIと一緒に書いたけど、次はAIが書くんじゃね、そんなん自分の力じゃないけん面白なわい」

「お母さん、分かっとるがね」

技術の進歩で創作の形も変わっていくんだろうなと感じています。


最後までお読みいただいてありがとうございました。
たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。
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