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94歳の母と外出

美容院に数か月行っていなかった母は、ベリーショートだったのがいつの間にかボブスタイルになっていた。彼女は鏡を覗く度に自分の顔を見るのが嫌になったんだと思う。「突然美容院に行く」と決めた母の事を書いた記事がこちらだ。

母の思いを叶えるために、私は母を連れて外出した。
母にとっては、美容院に行くのも一苦労だ。サポートでついていく私も気を使う。

私は母と一緒にいる間、口うるさい付添人のようになる。
「お母さん、タクシーの乗り口まで私がついていくけん、勝手に乗られんよ」
「お母さん、勝手に降りられんよ」
「そっち側から降りるんは、危ないけんいかんよ」
「そこ、渡るんはちょっと待って」
まるで子供に話して聞かせるように、心配していちいちコメントしているからだ。きっと眉間に縦じわが入っていたと思う。

自分一人で出掛ける時の、数十倍疲れていた。

自宅に帰ってから母は鏡を覗いて「あれっ、誰かと思たら私が居った、散髪して良かったわい」と喜んでいたので、私の疲れは吹き飛んだ。

「お母さん、今日はどうだった」と聞くと、「あんたやっぱり色々外の景色を見るんはええねー、人を見るんも楽しいし、これでまた俳句も生まれらい」
そんな母の言葉を聞いて、これからは母の体調と相談しながら、出来るだけたくさん外出する機会を持つようにしようと思った。




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