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イケメンの苦悩

◇◇ショートショート

健太がキャンパスを歩いていると学生が必ず振り返ります。スレンダーでおしゃれで優しい笑顔の彼は大学では「ミスターキャンパス」と呼ばれています。健太は男性からも女性からも人気のイケメンなのです。

彼はルックスをとても大切にしています。お洒落や身づくろいに気を配っているのです。

健太のクローゼットは宝の山です。様々なアイテムの洋服や帽子、サングラスなどの小物までびっくりするくらい揃っています。
健太は毎日出掛ける時にその中から自分なりのコーディネイトを考えて、全身が映る大きな鏡の前でチェックします。

「よーし、OK、今日はこのスタイルでいこう」そう決めたら、スマホでお気に入りコーデを写真に撮って、出掛けています。

健太にとって、見た目がとても大切なのです。カッコイイが、健太の命なのです。

自分が他人からどう見えるかが気になって仕方がないのです。

彼のお洒落心は高校二年生の時に目覚めました。

高校に入学してすぐ、スポーツ万能で明るく、誰にでも平等に優しく接していた健太はクラスの女子はもちろん、先輩女子や他校の生徒からも人気でした。誰もが納得する見た目も心もイケメンの男子でした。

彼は人気など気にせず、高校生活を楽しんでいたのですが、そんな彼の存在は一部のやんちゃな先輩たちに煙たがられ、よく呼び出しを受けたり、無謀な圧力をかけられるようになりました。
思わぬいじめに合い、彼の心は病んでいきました。とうとう学校に通えなくなり、1年生の冬休みには別の高校に転向することになったのです。


転向してから健太は常に鏡を見るようになりました。今の自分を確かめておかないと落ち着かなくなったのです。自分自身にまったく自信が持てなくなりました。

それからです、彼が見た目を思いっきり気にするようになったのは。

別の高校に通うようになっても、相変わらず彼はイケメン男子として注目されていましたが、彼はちっとも自信が持てませんでした。

自分自身をかっこよく演出しておかないと、何故か人を裏切っているような不安感に襲われていたのです。それは他の誰にも分からない事でした。
ある事で健太はいつも自分に物足りなさを感じていたのです。

彼が自宅に帰ってほっとする瞬間があります。
それは、彼が帽子を脱ぐようにかつらを取った時です。
かつらを取るとまんまの自分に戻れるのです。
彼はかつらを被っていたのです。

高校一年生の出来事があってから、健太の髪は突然抜け始めて、どんどん症状がひどくなって、とうとうスキンヘッドになりました。

彼はかつらを被っていることで、いつも偽りの自分が人前に立っていると思っているのです。だから彼は自分に全く自身が持てないのです。今の自分はどんなだろう、健太は誰よりも見た目を気にするようになりました。

いつか、彼の心がまんまでいいと思える時に、彼のお洒落武装は解除されるのです。


【毎日がバトル:山田家の女たち】

《私は見た目じゃなくて魂が大事じゃと思う》


「何でも度が過ぎたらいかん、自然が一番ええ、人は容姿だけじゃない心
心は人に伝わる、人に不快感を与えるような身づくろいは行かんけどね」

彼が見た目にこだわるのは、かつらのせいよね

「人間は何がきっかけになるか分からんけど、私は魂が大事じゃと思う、イケメンも気の毒じゃねー

母にショートショートのテーマ設定が今一つと言われたような気がしました。本当に短いだけにストーリーの意外な着地点は難しいです。


追憶を描く一枚春麗


母にとっての心のイケメンを句に詠みました。このイラストは母と亡くなった父の若い頃の2ショットです。母は「私にとってのイケメンはお父さん」だと言って、懐かしそうにこのイラストを描いていました。
このイラストを描いている間、母はとてもにこにこしていました。

最後までお読みいただいてありがとうございました。たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。この記事が気に入っていただけたらスキを押していただけると励みになります。

私のアルバムの中の写真から

また明日お会いしましょう。💗

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