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一人じゃないよ「浅草ルンタッタ」

少しの予備知識もなく、中身を知らないまま私が書店で手にしたのは劇団ひとりさんの書き下ろし小説「浅草ルンタッタ」です。

その装丁に惹かれました。本を小脇に抱えているだけでお洒落に見える気がしたのです。大正ロマン風のムーラン・ルージュを思わせるようなレトロなイラストが素敵だなと思って読む前からワクワク感がそそられました。

マルチな才能を見せている劇団ひとりさんの小説を初めて読む私は、文章からその人の価値観や物の見方を覗こうと、ちょっぴりイタズラっぽく読み進めていました。

数ページ読んですぐに、この人の文章はなんてリアルなんだろうと感じました。物語の時代背景や人物が文章から鮮明に立ち上がってくるんです

小説の時点から映像化されることを意識して書いているのではないかと思うような描写でした。色も形も人の表情までもくっきりと思い描けるリアリティーがあるのです。その時代の香りまでも香ってくるような気分になりました。

「浅草ルンタッタ」の舞台は、明治から大正時代の浅草六句周辺です。当時の遊郭や芝居小屋の雰囲気がその文章から目に浮かび、いつの間にか物語に引き込まれ、そこで生きる人たちの決して幸せだとは思えない人生や人との深い関りになぜかしら心を熱くする自分がいるのです

浅草オペラが好きなお雪を取り巻く大人たちは心に傷を負い、生きることが決して上手ではないのですが、それぞれが仲間や家族を優しく思いやりながら生きています。

劇団ひとりさんのシュールな笑いも物語をほっとさせるエッセンスになっていました。

登場人物の人生に思いを寄せ、応援をしながら、ルンタッタと口ずさんで前を向いて生きて行こうそんな余韻に浸れる小説です。
本を閉じると、何故か頭の中で軽やかなリズムが響くのです。「ルンタッタ、ルンタッタ」

読み終えて、劇団ひとりさんはやっぱり才能が豊かなんだと改めて気づいた一冊でした。


最後までお読みいただいてありがとうございました。
たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。
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また明日お会いしましょう。💗



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