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読書録——『成長を支援するということ――深いつながりを築き、「ありたい姿」から変化を生むコーチングの原則』

趣味が高じて色々な本を読んでいますが、今回はこちらを取り上げます。

以前からコーチングには関心があって、コースを受講したりオンラインのセミナーに参加したりしています(国際コーチング連盟のACC資格も保持しています)。
本書はリチャード・ボヤツィス教授による'Helping People Change'の訳書で、人や組織が自律的に成長するための「意図的変革理論 (Intentional Change Theory; ICT)」に基づいたコーチング(ICTコーチング)について紹介されています。

監訳者序文によると、このICTコーチングには3つの特徴があります。

  1. コーチと対象者の関わり方を「誘導型のコーチング (coaching for compliance)」と「思いやりのコーチング (coaching with compassion)」に区別し、後者が人の持続的な成長に寄与することを、脳科学の実験結果から明らかにしている。

  2. クライアントのEQを高めることを重視している。

  3. 誰でも実践できて、一定の成果を生むことができる。

ポジティブな感情が、モチベーションや創造的思考、柔軟性など、適応的な行動を高める認知的、生理的な反応を惹起することが分かっています。
本書では、このポジティブな感情と、副交感神経、共感ネットワーク(Empathic network: EN)が高まったPEA (positive emotional attractor: ポジティブな感情を誘引する因子)の状態をコーチングセッションや、日常生活の他の場面において作り出すことの重要性を強調しています。
対概念としてネガティブな感情、交感神経、問題解決ネットワーク(Analytic network: AN)が高まったNEA (negative emotional attractor: ネガティブな感情を誘引する因子)があります。

本書の中では以下のように記載されています(133ページ)。
PEA=EN+副交感神経+ポジティブな感情
NEA=AN+交感神経+ネガティブな感情

上記の中で、共感ネットワークや問題解決ネットワークという概念が出てきますが、これは本書独自の概念で、一般的には前者はデフォルトモードネットワーク(DMN)、後者はタスクポジティブネットワーク(TPN)と呼ばれることが多いです。

PEAとNEAは人が生きていく上では双方とも欠かせないものですが、望ましい比率がPEA:NEA=2~5:1とされる一方で、日常生活ではNEAの状態となることの方が多いため、いかにPEAの状態を意識的に作り出していくかが重要になってきます。

PEAとNEA、およびコーチングセッションとの関係性をまとめると以下のようになります。

Front Psychol. 2015 May 21;6:670 を参照し作成。
本書に合わせ、DMNをEN、TPNをANに置き換えた。

PEAにフォーカスしたコーチングでは「理想の10年後はどのようになっていますか?」など、長期的な時間軸も重視されます。短期的な時間軸だと目の前のタスクをいかにクリアしていくかに焦点が向きやすいのに対して、長期だとより大きな視点でクライアントの目的・目標を描きやすいというメリットがあります。

この他、日常の中でPEAを増やすための方法も色々と紹介されています。例えば以下のようなものがあります。

  • 夢やパーソナルビジョンを描く

  • 他者への思いやりを示す

  • 愛情のある関係性

  • ペットの世話をする

  • マインドフルネス

  • 遊び心、笑い

  • 自然の中を歩く

ポジティブ、共感、・・・
自分は必ずしも得意ではなく、分析的な傾向も強いのですが、少しずつでも取り組んでいきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後とも有益な情報を発信していきますので、応援よろしくお願い致します。

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