見出し画像

現場の写真は永遠に送られてこない

ありがたいことに、先日まで10,000m2程度のリゾートホテルの設計を担当させていただいていて、基本設計から現場監理までを一年ほど行っていた。
”先日まで”ということで、見事ぶっ潰れたわけですけども(現場は勝手に進行中)、初めてホテルというビルディング・タイプに関わらせてもらって、成立させる困難さと同時に、なんと面白い仕事なんだ!と驚いた。

ホテルの設計では、今まで学校でやってきた設計の課題などとは全く別の脳みその筋肉を使っているような感覚だった。
それはインテリアデザイン全般のことだったり、デコレーションのことだったり、ラグジュアリネス(高級感)だったり、家具設計のことだったり、もはや建築専門外のサービスのことだったりする。
とにかくリサーチを重ねるほど試したいことが山程でてきて、一時期は寝る暇もないほどだった。

------

と、更に更に同時に、僕がクライアントだったら、もっとこうしたいのに!もっと面白くできるのに!と何度も歯がゆい思いもした。
本件のクライアントだけに限らないかもしれないけど、弊社に急遽依頼をする人たちの一部は、その建物の有効面積(部屋として使うことのできる床面積のこと)と竣工までのスケジュールだけを気にしていて、デザインの事をほとんど無視するような振る舞いをする。

つまり、デザイン by 弊社の名前(Vo Trong Nghia Architects)がほしいのだけなのである。
この設計事務所名はベトナムではそこそこの威力を持つらしく、とにかく"なんでもいいから" 設計はとっとと終わらせてもらって、箔をつけて、竣工して、運営を始めたいのだ。
そんなとき、いくら設計の必要性を訴えても、いくらプレゼンテーションをキレイに作っても、いくら現場で修正を依頼してもほとんど意味を成すことはなかった(建築に反映されることはない)。

.....完全に言い過ぎたので、上の文章は消すかもしれない。

いや、このプロジェクトは完全に闇に葬られたから、まあ、大丈夫だろう。

そんな状況が一年ほど続いた後、色々あって弊社はプロジェクトを離れたわけだけども、その間ホテル設計を極めるべくリサーチしまくった僕は、ホテルデザインや宿泊サービスでやってみたいことが溜まりに溜まってしまった。(別に、そういう業界や設計経験のある人には普通のことかも知れないけど。)

この溜まったものを発散させてもらえるような素敵で寛容なクライアントは、待っていてももうベトナムでは出会える気がしない(いるのかもしれないが、それを信じて、コンセプトデザインや施工の段階で手のひら返しをされるのはもう辛い。)。


うーむ、これは自分が自分のクライアントになるしかない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?