ある、暑すぎる夏の日のこと
臙脂色のソファを一人で陣取り、両手足を投げ出してぐったりしている同居人は、まさに「へそ天」姿の猫のようだ。残念ながら猫のような愛らしさはなく、生え際からこめかみを伝って汗が落ちそうになっている。部屋着にされた古いTシャツは白いため、汗ジミが分かりにくいけれど、おそらくソファは相当に湿っているだろう。
「……地球が殺しにかかってきてる」
扇風機の風に飛ばされそうなひ弱な声で、死に体の猫、桂月也は呟いた。洗い終わったばかりの洗濯物のかごを抱えた日下陽介は、汗に落ちる眼鏡を押し