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『死にたがりの完全犯罪』SS集

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『死にたがりの完全犯罪』シリーズ(TOブックス)のSSまとめです。
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記事一覧

ある、暑すぎる夏の日のこと

 臙脂色のソファを一人で陣取り、両手足を投げ出してぐったりしている同居人は、まさに「へそ…

カスタードプディングは甘すぎる(前編)

 冷やし中華はじめました――気温が二十五度を超える頃には当たり前に見かけた旗を、今年は見…

家事労働感謝の日

 今日の天気を報じていたテレビに、赤とピンクのカーネーションが映る。朝食後。いつものよう…

お子様の日

 いつもより一時間早く起きると、日下陽介は大きく伸びをする。布団を上げるのは後回しにして…

4月7日

 窓を叩く音に、日下陽介は目を開けた。  室内の薄暗さに、日の出前であることを知る。正確…

おみくじとブラックホール

 一月八日――  今日は宇宙論の本を買おうと、桂月也は決めていた。理由は単純で、理科嫌い…

エンタングルメントの約束

『死にたがりの完全犯罪』シリーズ(TOブックス)より  ノーベル物理学賞「量子もつれ」記念SS 【エンタングルメントの約束】  二〇二二年十月四日午後九時二十分過ぎ――  家の中ではほとんどスマホをさわらない同居人、桂月也がやたらとニュースサイトを気にしていた。日下陽介はアールグレイを入れた白と黒のマグカップを手に、月也が寝そべる臙脂色のソファに近付く。 「何かあるんですか?」 「ん……」  生返事で月也は体を起こす。いつものように右端に座り直し、左手をさまよわせた。白い

未来に語るオブザベーション

 空は本当に、一足早く季節を変えている。  あまりに綺麗な青だったから、ボクは君を連れ出…