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「昭和12年とは何か」 宮脇 淳子, 倉山 満, 藤岡 信勝


 友人に薦められて購入。示唆に富む本でした。日本人の現代史の捉え方に問題があるなということは漠然と感じていましたが、自分の問題意識が具体的にできました。サヨク的な自虐史観も、独善的な愛国心を打ち出すウヨク的な言説にも違和感を覚えることが多いですし、その二項対立が、思考停止につながっている気がしていました。し、この本には1つの答えが示されていると思います。

 「昭和12年」が世界史の中で日本にとって、節目にあたる年だと共通認識を持って、一流の研究者が分野を超えて語っています。この本は「昭和12年学会」を設立した際の、「要件定義」のような内容にもなっています。
「歴史にはドイツ語で「ゲシヒテ」と「ヒストリー」という二つの概念があります。後者は、年代順に出来事を客観的に記述する編年体のこと。対して前者の「ゲシヒテ」は、歴史上の出来事の連鎖にはかならず意味があるというスタンスで記述されています。」というのは佐藤優著「世界史の極意」からの引用ですが(この本も素晴らしいのでオススメです)まさに、昭和12年を「ゲシヒテ」として捉えています。昭和12年にフォーカスして事実の検証を積み上げることで真実を探求地用とする研究者達の良心を感じます。

 日本人が、自虐史観と底の浅い愛国心の二項対立で、しっかりとした情報発信ができない間に、中国共産党政府は国際社会に対して、億面もなく、捏造に近い、自国の内政、外交に都合の良い歴史を積み重ねようとしています。韓国も同様です。両国共に、近年は経済成長が著しく、国際社会における存在感が増しています。その発言力を背景に、日本をスケープゴートにする構図になっているのは、多くの日本人が感じているのではないでしょうか? そこに対抗するには、感情的に「反中」「嫌韓」するのではなく、冷静な情報発信こそが重要ですね。

 僕は政治に明るい訳ではないので、国際社会におけるプロバガンダの日本の劣勢が、何にどのくらい悪影響があるのか、全ては正確にはわかりませんが、観光と文化で稼いでいく国として、自国の歴史をきちんと認識して、世界に発信していくことが非常に重要だということは肌感としてわかります。
 人種差別思想を掲げていたナチスドイツ政権と組んで、圧倒的な軍事力、経済力を持っていたアメリカに戦争を挑んだこと自体は、戦略的に大きな間違いだったことは間違いないでしょう。誤りの理由を掘り起こすこと、それを産む構造が日本社会や日本人の心理にあるなら、そこも浮き彫りにすることはとても重要です。同時に、正確な事実認識を行って、日本の立場をきちんと主張していくことも同じくらい重要でしょう。

 日本のアニメや食が、テクノロジーやサービスが、世界的に見て誇れる水準にある理由は、日本の歴史と伝統の中にあります。国際基準で自国を語るロジックを持つことは、これからの日本にとって死活的に大切だなと、そんなことを思わせてくれる本でした。「昭和12年学会」の今後の活動にも注目していきたいです。 


モチベーションあがります(^_-)