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アフリカの世紀に備えるための基礎知識を得る本『超加速経済アフリカ』

 先進国の経済成長率が鈍化して、昔は発展途上国と呼ばれた、経済新興国に注目が集まるようになって久しいです。200年を過ぎて、BRICS(ブラジル・ロシア・インド・中国・南アフリカ)とが次のエンジンと言われていたのが、もはや懐かしいですね。これからはアフリカ大陸の各国が注目だということは漠然とは知っていても、断片的な情報しかなく、ぼんやりとしたイメージでした。

 本書は、日本語で書かれた本の中で、アフリカの経済の成長性を最もわかりやすくまとめている内容だと思います。著者と面識はないですが、ボストンコンサルタントで活躍されていて、噂話を聞く機会が多かった方です。アフリカ向けのファンドを運用し、実際にルワンダでマカデミアナッツ農園の経営にも携わっているだけに、視座は高く、情報も幅広いです。「アフリカでは、、」と乱暴に語る人いるけど、国によって全然状況違うはずだよなーと思っていた僕にとって、北部、東部、西部、中部、南部という5地域の区分や、国全体とそこの大都市は分けて捉える見方などが有益で、初めて「アフリカ概観」を持てた気がしました。
 社会の成長状態についてデータで示す、高度成長期前期の日本との比較もわかりやすいです。「日本人なら答えを知っている」というのも優れたキャッチコピーですね。過去の成功体験と自分たちが築いた洗練されたガラバゴス型の仕組みから脱すことができずに停滞感がある日本のビジネスパーソンに、挑戦マインドを起こさせるという意味でも、アフリカの研究は意味があると思いました。特に起業家にとっては、アジアだけでなく、アフリカは意識スべき地域ですね。

 様々な報道でも知られていることですが、中国が覇権主義的にアフリカ各国に影響力を及ぼしていることも改めて確認できました。この新大陸でも面倒な隣国のやり方との向き合いが必要だというのは、憂鬱な話ではありますが、アフリカのことを考えるなら50年単位以上の長さが必要で、そうなると、中国共産党政府の変容(希望的に言うなら解体)や、アフリカ各国政府ガバナンスの洗練、旧宗主国意識が残る欧州各国の意識の変化、などもセットで捉えて考察するべき事象です。意図的ではないにしろ、結果的に「愚直なビジネス」に取り組んでいることが多い「日本のやり方」を50年くらいのタームで活かしていく方法を考えるべきなんだろうなと思いました。
 全体を通じて、インフラなどの整備が遅れたアフリカだからこそ起きる「リープフロッグ」(=次世代型サービスの急速な普及)というトーンで説明がされています。まさに日本が停滞したのは、韓国、中国、その他アジア諸国にリプフロッグで先を越されたからですが、これだけIT化が遅れると、日本が次に「IT後進国だからできるリープフロッグ」を狙うことになるという認識を僕は持っています。そういう視点でもアフリカをチェックするのは役に立ちそうです。日本は想像するよりも、遠くに置いていかれて遅れをとりそうなので、かなり大きく「リップフロッグ返し」を狙うのが日本の今後の戦略なんだろうなと、この本を読んでいても感じたところです。

 また、僕の専門分野である、エンターテインメント、メディア・コンテンツ領域への言及はほとんど無くて、僕自身がすぐにやれることを見つけるヒントは無かったのですが、あらゆるコンテンツサービスがクラウド化したことで、自動的にグローバル化しているという現状では、アフリカも視野に入れたエンターテックのサービスやコンテンツビジネスの展開を、日本ブランドで始める時期は、そろそろ来ているのかもしれません。そんなことも意識しながら、アフリカをチェックしていきたいなと思わせてくれる本でした。オススメです!


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