マガジンのカバー画像

放送とインターネット

58
放送局に勤めていたので、たまに放送のことも書いていました。ま、内輪向きの文章が多いので、ここにはたまにしか載せませんでしたが。いずれにしても定年退職しちゃったので、今後はこのテー…
運営しているクリエイター

#放送

何が TV4.0 をもたらすか

facebook には「思い出」という機能がありますよね。そう、何年か前の同じ日の投稿を表示して、「あなたは◯年前にこんなこと書いていました」って知らせてくるやつです。 そこに 2019/1/19 に自分が書いた記事が出てきまして、そのちょうど5年後に読み返したのですが、僕はこんなこと↓ を書いていました: さて、5年後の今はどうでしょう? あの頃は僕はまだ毎日放送の社員でした。退職したためもう会社や業界の情報や動向は一切掴んでいないので、専門的なことは書けませんが、一

続・気になる放送のことば

続・のようなものニュースを見ていて久しぶりに「猟銃のようなもので警察官を撃った」という表現に接し、やっぱり違和感を覚えました。 もちろんこれは使用されたのがまだ猟銃だと断定できない時点での報道であり、正確性を期するためにニュースが選んだ言い回しなのですが、前にも書きました通り、「のようなもの」という表現には「似ているけれど本当はそれではない」という含意があります。だから気持ち悪いのです。 例えば、 という表現で言えば、見えているのは黒い虫に似たものであって、実際に虫では

作り込んだ番組とライブ感溢れる番組の相克についてのわりとつまらない考察

僕の志望動機僕がテレビ局に就職したのはドラマを作りたかったからだ(結局ドラマはおろか、いかなる番組も作らせてくれなかったけれど)。 僕は昔からドラマが好きで、ドラマのようなしっかり作り込んだ番組を好んでいた。つまり、しっかりとした台本(所謂「構成台本」などではなく)があって、みっちりとしたリハーサルの末に収録され、すっきりと編集されたコンテンツである。 例えばドラマ、お笑いであればコント、そしてスタジオにセットを組んだ音楽番組などなど。 ある意味その対極にあるのが今テレ

間違いやすい言葉集

私が勤めている会社には「放送で間違いやすい言葉」を集めた本があります。そういうのが本の形になっているかどうかは別として、大体どこの放送局でも何らかの形でまとめたものを作っているはずです。 ウチの場合はそれが200ページを超える大著になっていて、全社員に配られています。実際にテレビやラジオに出演して喋る人、あるいはそのための原稿を書いたりチェックしたりする人だけではなく全社員に配られるのです。 で、私の場合は自分で喋る人でも原稿を書く人でもありませんが、まあ、普段からこんな

twitter アカウント『情熱大陸』と「ほなね君」の始まり

O君の退職3月いっぱいで、twitter アカウント「ほなね爺」の生みの親みたいな奴が会社を辞めます。 O君という人で、メディア局インターネット・モバイル部時代の僕の部下でした。当時は『情熱大陸』の Web担当をしていました。 O君は単に『情熱大陸』のホームページを作って毎週更新していただけではなく、いち早くそれをブログ形式のものに改めたり、番組本編とは別のコンテンツを展開したり、ポッドキャストをやってみたりと、とても進取の気質に溢れた男でした。 そんな O君がある日僕

気になる放送のことば──「のようなもの」

放送局に勤務していながらこんなことを書くのも何ですが、放送に使われる言葉でどうもしっくり来ないものがあります。 傷害事件などのニュースで使われる「刃物のようなもので」というのがそのひとつです。 のようなものそれは、被害者が凶器を見ていなくて、事件の目撃者もおらず、犯人も凶器を持ったまま逃げてしまったなどの理由で、当然記者もそれが刃物かどうか確認できないという場合に使われます。 その心構えは解らないでもありません。実際に見てもいないのに「刃物で切りつけられ」などと断定した

twitter を始める前に決めたこと

先日はここ ↓ にブログを始める前に決めたことについて書きました。 今回はその流れで twitter を始める前に決めたことについて書いてみたいと思います。 最初に書いておくと、私が勤めているのは大阪の放送局で、twitter初期のころのエピソードについてはここ ↓ にも少し書いています。 twitter 前夜私が twitter を始めたのは 2009年7月9日でした。その前の月に、同じ部(ホームページ作成などのインターネット業務を担当している部でした)の同僚に突然訊

仕事でやってた twitter 初期の牧歌的ないい話

徳力基彦さんが「個人でツイッターやブログを使っていたら、仕事に役立つ出会いやハプニングがあったよ、という話を是非教えて下さい」と書いておられたので、呼応してみます。 ただ、徳力さんの投稿自体は3月のもので、本のネタにしてもらうには遅きに失したのかもしれません。ひとえに私が気づくのが遅かったのが悪いので、それはそれで良いです(笑) おもろそうやな。やってみよか私は大阪の放送局に勤務しており、2009年に「ほなね君」というハンドルネームで twitter を始めました。会社の

続・視聴率という厄介な代物(2020/7)

昨年の6月に、境治さんが主宰しておられるウェブマガジン Media Border に『視聴率という厄介な代物』という記事を投稿し、遅れて note にも転載しました。 今回はその続編という体裁にしていますが、前回より遥かに“読み物”的なものになっています。とは言え業界関係者以外はちっとも面白くないかもしれませんが(笑) 今回も Media Border とこことに併載しています。Media Border にはもっと真面目で専門的な分析や提言がたくさん載っていますので、興味

事件への対応(2019/11)

この記事は 2019年11月に、境治さんが主宰しておられるウェブマガジン Media Border に投稿したものです。 ここにも挙げておきたいという私の自己満足で挙げたのですが、もしこういう記事をたくさんお読みになりたいのであれば、若干お金はかかりますが、Media Border を購読されては如何かと思います。 事件への対応女優の沢尻エリカが逮捕された。来年の大河ドラマの出演が決まっていて、初回から出演してかなり撮り終えており、今からでは撮り直しが間に合わないとか。チ

視聴率という厄介な代物(2019/6)

この記事は 2019年6月に、境治さんが主宰しておられるウェブマガジン Media Border に投稿したものです。 ここにも挙げておきたいという私の自己満足で挙げたのですが、もしこういう記事をたくさんお読みになりたいのであれば、若干お金はかかりますが、Media Border を購読されては如何かと思います。 視聴率という厄介な代物 私は放送局での長いサラリーマン生活のうちの 10年をテレビ編成局で過ごし、そのうちの 3年は視聴率調査を担当していました。 そのせいで

愛と幻想の配信イズム(2018/7)

この記事は 2018年7月に、境治さんが主宰しておられるウェブマガジン Media Border に投稿したものです。 ここにも挙げておきたいという私の自己満足で挙げたのですが、もしこういう記事をたくさんお読みになりたいのであれば、若干お金はかかりますが、Media Border を購読されては如何かと思います。 愛と幻想の配信イズム テレビ番組の常時同時配信に関してはいろいろな意見を耳にします。中でも私が忘れられないのは、去年あるシンポジウムで登壇した若い女性パネリスト