マガジンのカバー画像

放送とインターネット

61
放送局に勤めていたので、たまに放送のことも書いていました。ま、内輪向きの文章が多いので、ここにはたまにしか載せませんでしたが。いずれにしても定年退職しちゃったので、今後はこのテー…
運営しているクリエイター

記事一覧

続々・気になる放送のことば

この間「ことばの変化に対してはすべからく寛容であるべきだと思っています」と書いたばかりですが、 とは言いながら、ことテレビとかラジオとか新聞とかに関して言えば、時々「その表現はおかしくないか?」と言いたくなることがあります。 それで、note にもこんなことを書きました: 一般人の話し言葉ならともかく、やっぱり公共のメディアには正確で理解しやすい表現を使ってほしいし、そのためには規範性の高い、つまり辞書に載っている意味から外れないことばを使ってほしいと思うのです。 そ

著作権法をめぐるすっきりしない思い

この記事は「自分のブログに映画の場面写真を勝手に貼るのは著作権法違反だからやめましょう」という記事ではありません。「なんか、もっと明確な新しいルールを策定できないものか」という嘆きです。 映画の鑑賞記事の横にその映画の一場面の写真が添えてあるというのは我々がしょっちゅう目にする光景です。 でも、映画会社の許諾を得てやっているのでない限り(あるいは権利者が権利フリーを謳っているのでない限り)、それは明らかに著作権法違反です。違反だと知らずにやっている人もいるでしょうし、知り

「板に焼く」文化の終焉──ソニーグループの光ディスク生産終了に思う

ソニーグループがブルーレイディスクなどの光ディスクの生産を段階的に縮小させ、終了させるとの報道にいささかショックを受けています。 そうか、ブルーレイディスクが売れない時代になったのか、"板に焼く"文化の終焉なんだな、と思いました。 なにしろ僕らは中学生時代にカセットテープにテレビの生音をマイクで(つまり、コードに接続せず、っちゅうか接続端子もなかったし)録音するところから音楽体験をスタートした世代ですからね。 当然周囲の音も拾ってしまうので、「ちょっと、お母ちゃん、暫く

「いいね!」などのリアクション・マーク、どんな風に使ってますか?

ソーシャル・メディアの”リアクション・マーク”ってあるじゃないですか。そう、facebook の「いいね!」がその代表的なやつ。 「いいね!」は実は facebook が始めたんじゃなくて、VIMEO が先にやっていたのを真似したという説もあるみたいですが、真相はどうなのか知りません。 ただ、僕はこれを facebook で初めて知り、なんか、とても良い機能だなと感心した覚えがあります。その後、twitter もこれを真似して、でも丸ごとパクるのも気が引けたのか、「!」の

閲覧数 4000 を超えて、クチコミについて考えてみた

僕がとある店について書いた Google Maps のクチコミの閲覧数が 4月30日に 1000 を突破した。 ご存じない方も多いと思うが、あそこに何かを書いてその閲覧数が一定数を超えるとメールで知らせてくれるのである。 実は 1000 を突破できたのは、僕なりの書き方のコツみたいなものもあってのことだと思っている。そのことについて、少し書いてみようと思う。 Google Maps のクチコミと言えば、悪意のある事実無根の書き込みをされたとして、先日医療関係者が集団訴訟

荒れるソーシャル・メディアを考える──あなたはそこに行ったことがあるか?

僕は2009年に twitter を始めましたが、そのころの、言わば日本における黎明期の twitter は、嫌なことをつぶやく人がほとんどいない、とても快適な空間でした。 たまに嫌なこと、攻撃的なことを書く人が現れても、皆でそれをガードしようという雰囲気さえありました。 例えば、あれはアカウントを作って2年目ぐらいだったかな、僕に対して所謂クソリプをぶつけてきた人がいて、僕が「けったくそ悪いツイートを読みたくないので、そのツイートが早くタイムラインの下のほうまで行って視

どうやれば今の若手社員を動かせるか?──H君との長話

ルーティンに追われ新しいことを始めない若手社員たち僕は大阪の放送局MBSを退職して2年近くなりますが、先日、久しぶりに昔の部下であるH君が会いに来ました。 正確には、上京する彼に合わせて僕が東京支社にのこのこ出かけて行ったわけですが。 H君は昨年から仕事の傍ら大学院に入って勉強しており、そもそもはその修士論文を書くために少し昔の話を聞かせてほしいとのことだったのですが、会って話をしてみるとそんな単純なことではなく、もっと根の深い話でした。 彼はそもそも最近の若手社員た

何が TV4.0 をもたらすか

facebook には「思い出」という機能がありますよね。そう、何年か前の同じ日の投稿を表示して、「あなたは◯年前にこんなこと書いていました」って知らせてくるやつです。 そこに 2019/1/19 に自分が書いた記事が出てきまして、そのちょうど5年後に読み返したのですが、僕はこんなこと↓ を書いていました: さて、5年後の今はどうでしょう? あの頃は僕はまだ毎日放送の社員でした。退職したためもう会社や業界の情報や動向は一切掴んでいないので、専門的なことは書けませんが、一

昔を思い出して、配信の権利クリアの仕事について、ちょっと書いてみました。

権利クリアの現状僕が放送局に勤めていた最後の十数年はテレビとインターネットを繋ぐことに心血を注いでいました。そして、最後の数年はテレビ番組の配信が本格的に始まり、まさに配信にまつわる実務をやっていました。 当時の僕の担務はやや古いテレビ番組の配信の権利クリア等々で、これには結構面倒なことがたくさんありました。 今ではいろいろな法律も整備され、いくつか組織も立ち上がり、ルールも確立し、手順もルーティン化して随分楽になってきたと思います。 所謂「見逃し配信」(このネーミン

僕たちはどう老いるか

毎日何してるんですか?「仕事辞めて、毎日何してるんですか?」とよく訊かれます。最初は大抵「何もしてないよ。ただのお爺さん」などと答えるのですが、さらにしつこく訊いてくる人に対しては、まともに答えるのも面白くないので、 みたいな返しをするのですが、これをマジで信じる人が意外にいて、びっくりします。 確かに盆栽とか、写経とか、縁台将棋などは老人の典型的なイメージなのかもしれませんが、しかしそれは昭和40~50年代ぐらいのステレオタイプじゃないのかな? 僕はわざと時代感覚をず

面接官:「あなたが好きな番組は何ですか?」

放送局の採用試験の面接官として僕がまだ毎日放送に勤めていた時には、何度か新入社員面接に借り出されることがありました。若い頃は一次面接に、管理職になると二次面接に。 そして、放送局ですから当然、面接を受けに来た学生たちにこんな質問をします: 学生たちが変に気を遣って窮地に陥らないように、こんな風に付け加えることもありました: わざわざそう言っているのに、それでも中には「御社の番組でなくて恐縮なんですが…」などと、リップ・サービスではなく本気で恐縮している様子の学生さんも

ドラフト会議に思う

昨夜、TBS でやっていたプロ野球ドラフト会議の特番を観ました。生中継は2位指名までで、あとは言わば企画モノでした(多分毎年そういう構成なのでしょう)が、見始めたら面白くて、今回初めてほぼ全編を見通しました。 そこで近年のドラフト対象選手について感じたことをいくつか。 我がままな選手たちの消失まず一つ目は、昔みたいに、特定の球団(そのほとんどは巨人軍でした)でないと絶対に行かないなどと言って自分から球団を逆指名したり、2位指名だったことに怒って、訪れたスカウトに「なんで2

twitter の現在に想う

ここのところ半年ぐらいの twitter はすっかりイーロン・マスクのおもちゃになってしまって、長年親しんできた小鳥のアイコンは廃止されるわ、tweet は post に、retweet は repost に呼称変更されるわ、いや、それどころかサービス名まで X などという無粋な(※個人の感想ですw)ものに変更されるなど、往年の twitter ユーザにとってはかなり腹立たしい状況です。 ただ、twitter も当初からの設定や機能、名称を後生大事にずっと変えずに守ってきた

それは Netflix の番組? ~容れ物の時代から中身の時代へ

インターネットを観ていたら、「Netflix で観られるオススメ作品」みたいな記事を書いている人がいて、なんとなく読んでみると、元々は劇場用映画として公開された作品やテレビ局が制作したテレビドラマなどが山ほど含まれていて、ちょっと驚きました。 僕がそういう記事を書くとしたら、そういうものは決して含めないだろうと思います。だってそれは(確かに今は Netflix で観られるには違いないけれど)本来的に Netflix の作品ではなくて映画会社やテレビ局の作品だと思うからです。