消化を助けると胃腸にやさしいの違い
大根おろしをよく食べる方からご質問をいただきました。
大根の特性を薬膳で見ると、消化を助けるのは大根おろしのように生で食べること、一方、ふろふき大根やおでんのように調理した大根は胃腸にやさしい。
消化を助けると胃腸にやさしいの違いが分かりません!と。
ここでは、大根に限らず薬膳で「消化を助ける」と「胃腸にやさしい」との違いを解説します。
では、まず「消化を助ける」から始めましょう。
消化を助けるとは?
薬膳では、消化を助ける効能を「消食(しょうしょく)」と言います。
食べ過ぎて膨満感がある時や、夕食後、寝るまで時間があまりなくお腹がいっぱいで寝なければならない時などは、消食効果のある食材を食べておくのです。
天然の消化剤といったイメージです・
口から入った飲食物は、胃で消化され小腸に送られます。
小腸は必要な栄養と不要な物に分別し、不要な物は大腸と膀胱にそれぞれ送り排泄します。必要なものは脾のシステムが受け取って気や血(けつ)津液として体に分配されると考えられています。
ところが、未消化状態で胃に飲食物が残っていると、食欲不振、胸やけ、膨満感、胃痛、胃もたれ、ゲップ、嘔吐、下痢など、もう受け付けられないと言う状況になります。
もともと、虚弱気味で胃腸が弱かったり、傷んだものを食べてしまったり、ストレス過多でも消化不良の状態は起こります。
特に、まだ前回の食事で食べた物が残っている感じがする、膨満感がある、ゲップに食べた物の臭いが上がって来る等の時は、消食効果のある食材を選びます。
消食効果のある食材は、大根、蕪、ラディッシュ等がおすすめです。
気の流れも利用する
食材の効能を調べるには食材事典を使います。
おすすめの食材事典はレベル別にまとめてあるので、こちらの記事をお読みください。
食材事典には載っていない、食材の効能があります。
それは、体の構成要素である「気」の向きを調整することができる効能です。
上下、外内と相反する向きに気を流すことにより、血(けつ)や津液の流れもその向きに合わせて変わるとされているのです。
その中で、消化を助ける大根などは、「気」を下に降ろす「降気」の働きがあります。
なので、もし大根に消食の効能があることを知らなかったとしても、大根が下に降ろすと知っていれば、これを消化に使うことができます。
ゲップも、本来なら、下に下りるはずの胃の「気」が逆上して来たものです。
ストレスによるゲップでなければ「降気」の効能を使うとゲップが治まる可能性があります。
(余談ですが、しゃっくりを止める時に深く息を吸い込みそのまま少し呼吸を止めておく方法があります。
中医学ではこれは下に下りるべき肺の「気」が逆上したものと考えられるため、しっかり深い息を吸うことで逆上を抑えるとされています。)
同じく「降気」の効能を持つ食材に蕎麦があります。
お腹の調子がよくない時に、冷たいおろし蕎麦を食べると下痢をしてしまう人がいます。
その日の体調によっては、急にお腹が痛くなって貧血のようになる人も。
これは、もともと上に持ち上げておくべき「気」が少ない時に「降気」食材を重ねて食べてしまったことが原因です。
お腹の調子がよくないからさっぱりと蕎麦で!消化が良さそうだから大根おろしたっぷりのおろし蕎麦で!と選ぶかもしれませんが、お腹の調子がよくない時の選択は温かいうどんですね。
では、次に「胃腸にやさしい」とはどういうことかを解説しますね。
胃腸にやさしいとは
「胃腸にやさしい」とは「消食」効果のあるものを使わなくても、スムーズに消化吸収排泄ができることを言います。
中医学では、消化器系に当たる脾と胃は冷えと湿気に弱いと言われています。
その他にも脾や胃を弱らせる飲食物、料理はありますが、先ほどの蕎麦でも温かい物であれば、冷たい蕎麦より「胃腸にやさしい」のです。
大根は、軟らかく煮たものでそれを温かい状態で食べることは、「胃腸にやさしい」食べ方となります。
大根おろしをみぞれ鍋に入れて、温かい状態で食べるのは、煮ることで消化酵素のジアスターゼは壊れてしまうかもしれませんが、おろしてあるので、繊維が壊れて消化しやすくなりますね。
胃腸は体の構成要素「気・血(けつ)・津液」を生み出す大切なシステムです。
このシステムを弱らせないように丈夫にするための「健脾(けんぴ)」の効能を持つ食材も摂ると良いですね。
米・芋類・豆類。かぼちゃ・とうもろこしなどの天然のほっこりとした甘みのある食材です。
「消化を助ける」と「胃腸にやさしい」の違いまとめ
以上解説したように、「消化を助ける」は本来より消化吸収に時間がかかってしまう時、時間がかかっている状態を緩和させる働きのことを言います。
大根であれば、生の状態で消化酵素のジアスターゼが効いている状態です。
「胃腸にやさしい」は胃腸の負担にならずスムーズに消化吸収できる状態の料理や食材の事を言います。
胃腸の負担になる食材の場合は、温かい柔らかく煮るなどの調理法で温かい状態で食べるだけでも胃腸にやさしく食べられます。
また、「消化を助ける」ためにも「胃腸にやさしく」食べるためにも、よく噛んで唾液の消化酵素と食べ物をしっかりませ合わせてから胃に送りましょう。
あまり噛まずに飲んでしまう時としっかり噛んでから飲み込むのでは胃腸への負担が変わって来ますよ。
消化が悪いものや、胃に負担になるものを食べる時はなかったことにする薬膳のメソッドも使えます。
ぜひご活用くださいね・
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