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乳がん中記

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おこがましいけど、サバイバーでファイター。まだホルモン治療中。 詩、エッセイ。
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2020年6月の記事一覧

【詩】  胸に刀傷

【詩】  胸に刀傷

自分の頭が何を考えているのか
私は知らない
本当はどんな気持ちなのか
私にはわからない

平気なはずの手術の傷跡
人に笑って話せる自分
でも泳いだ後のシャワールームで
いつも涙が出てきた

乳首のない胸に縫い目二本
あの人の手が胸にふれるのも
あかりのある部屋で見られるのも
考えるだけでこわかった

ななめに走る胸のかたな傷
私たちの勲章だよと
サポートグループの仲間が言う
そうだ勲章だと思うのに

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[詩]  職場復帰

[詩]  職場復帰

「だったら
私も病気休暇で休みます。」

同じ職場の彼女から
出て来たことばに息をのむ

乳がんの治療ごときで
はたに迷惑かけるなと

だれかが言う 見えない声で
だまって聞く

犬

これだったんだな。何もなしで年をとるのはおかしい、なにか来ると思っていた。

医者に会うとすぐ、「悪い知らせですが」と、乳がんだと告げられる。次の瞬間、口元がゆるむように話している自分に気づく。
「切ればなおるんですよね。」
むかし、父は胃を切った。3分の2切られた胃を見せられて、はたちの私は嗚咽がとまらなくなり、母にたしなめられた。
「切れば治ります。」

医者は、がん専門の外科医の名前を書い

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