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イラストと日本経済

値下げ圧力、デフレ圧力…。
最近はこんなワードが頭を通過していくことが多い。
タイムラインで見かけるとかではなく、ただただ気になる話題。フリーランスとして、イラストレーターとしてどう考えてるかを今回は書いていきます。

値段が下がりやすい仕事?

『良い値決め、悪い値決め』(田中靖浩/日経新聞出版社)に、今後さらに価格が下がる傾向にある分野が紹介されている。簡単にいうと、「グローバル化の影響により、デジタルでつくってオンラインで完結する商売」は価格が下がりやすい。

D=デジタル
O=オンライン
G=グローバル

略してDOGな仕事、だ。この仕事は原価が人件費しかないと考えることもできるので、下手するとどこまでも安くなっていく。クリエイターとして、価格だけで勝負するのは長期的に見て自分の首をしめることにしかならないと思うけど、DOGが示しているのは世界中のクリエイター・企業が競争相手になっている状態。

インフレかデフレか

『日本人の勝算』(デービッド・アトキンソン/東洋経済新報社)には、人口減少社会ではデフレ傾向があると指摘されている
人口が増えるとき、特に若い世代の労働人口が増える時代は、インフレを歓迎する心理が多くの人に働きやすい。消費は若者のほうが旺盛というのもあり(ローンを組んで家を購入するのも大きい)インフレが進みやすい。
一方で高齢者は消費に消極的で、むしろデフレを歓迎する心理が働く。労働人口の減少は賃金の値上げにもつながり、インフレ要因もあるが、総合的にみると、不動産価格を中心にデフレ傾向が予想される。(ここらへん複雑な要因絡んでいるので詳しくは本を読んでください)

これまでアベノミクスでインフレを実現しようとしてきたが、2%の目標は達成できなかった。デフレから脱却したといっているが、今後はどうだろう。
アトキンソン氏の最低賃金引き上げの政策が実現したら日本経済の未来も代わり、フリーランスの働き方も変わると思う。

そんな中でのイラストレーション

値下げとデフレの両方の圧がかかる中、イラストの仕事を今後も続けていられるのか…どうなのか。
ぼくはすべてPCでイラストを作っていて、時には一度もクライアントと会うことなく全ての仕事が完結してしまうこともある。要はオンラインで完結するDOGな仕事である。いまは日本語という壁があって、グローバル化の面では「日本語による対応ができる」強みがある。しかしそれしかない、ともいえる。

海外クリエイターはオンラインで日本の仕事をしている

ぼくはイラスト以外の仕事で、モーショングラフィックのディレクションをフリーランスとしてやっているのだが、ここではグラフィックやアニメーションの多くを外国に発注している。ぼくが担当するのはクライアントの打ち合わせから、動画の構成を決め、ナレーション原稿を作成し、コンテを仕上げるところまでだ。
直接クリエイターと話すことはないのだが、海外、特に東南アジアや南米の勢いを感じる。彼らは日本人よりも比較的安い賃金で働くことができる。

値下げしないでいる方法?

値下げ圧力に負けないためには、DOGな仕事から一歩離れ、そこに別の価値をつける必要がある。単純に考えると交渉力は必須。値下げ圧力がある限り、アウトソーシング先であるフリーランスとしては交渉しながら調整する必要がある。
海外クリエイターとの差別化だけ考えるなら、上にも書いたとおり「日本語による丁寧な対応」がある。メールにもそれなりの速度で返答できるし、クライアントの要望を汲み取りやすい。しかし当然ながら日本語を話すクリエイターはたくさんいるので、日本国内だけでも相当に熾烈な戦い。
なぜ自分に依頼があるのか?どういう方向にイラストの価値を高めていくか?求められるイラストと、誰も描かないイラスト(差別化)の重なるところを見出せるかどうか。

海外で仕事する、すなわち輸出。

日本経済全体のことを考えるなら、日本国内での仕事で完結していないほうが良い。国内の需要だけでは減少するのが目に見えているので(競争が熾烈になることも意味する)、輸出も考える。韓国がドラマや音楽を輸出するのと同じ感覚だ。
日本のイラストレーターでも海外のクライアントを仕事をしている人はすでに多くいる。Behanceで認知度を高めて集客し、google翻訳を活用してやり取りしているようだ。ホントすごい。ただ丸腰でグローバルの戦いに挑むだけだと、価格しか武器がないDOGな仕事になりやすい。そこにどんな価値をつけるか。イラストレーターはタッチの差がわかりやすいが、コンセプトで仕事している人もいる。タケウマさんとか。個人的には東京以外で活動するクリエイターのほうが海外への意識が強い気がしている。

そして付加価値

ただ、モノを作って売る、というスタンスでいると、今後は値下げ圧力に太刀打ちできないかもしれない。モノは世の中に溢れている。
自分のイラストにはどんな価値があるのか、どんな価値をつけていくかを考えながら日々制作する必要があるなと最近ずっと思っている。生産性のことを学ぶと、必ず出てくる「付加価値」。これを考えないと、価格競争に抗えないかもしれない。こんなこと考えている暇があるならもっとうまい絵を早く描け、という圧力も別の方向からある。

なぜこんな記事を書いたか

今後のことを考えるためには経済について知っておかないとダメだ、と思って経済の勉強をしています。ただ、生半可な知識をこうして書くことになんの意味があるのか?はわからないままですけども。ぼくに「正解」を書くことはできないのですが、少しでも誰かが行動するときの考えるヒントになっていれば良いかなと。

ここはまちがってる、よくわからない、と思う箇所などあればコメントやメッセージなどでご指摘ください。

ヘッダーの画像に「GDP」って書いてるけど何も関係ない文章になりました。GDPについての文章読みたかった方、すみません。

(参考文献)
・『良い値決め、悪い値決め』は文庫化もされてます。
・アトキンソンさんはvideonews.comではじめて話を聞いて知りました。人口増加が日本経済の成長要因だったと指摘してたり、日本の文化財保護の活動をしていたり面白い人。
・『交渉学が君たちの人生を変える』は僕がイラスト描いた本ということもあって常時オススメしています。



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