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(続)三つ子の魂百までも(32)


32

岡刑事は、研究室に設置されていた防犯カメラの映像から、調べていった。そこに写し出されたいたものは、男が盗撮器からカードを抜きとっている映像が記録されていた。
そしてその男は、事務所のカメラにも記録されていた。
事務所にある机の引き出しを開け物色し、物を持ち出している映像があった。

その映し出されていた人物は、佐伯である。
佐伯は、持ち出した物を鞄に詰め込み、更にその中にあったノートを読んでいる映像も記録されていた。
鞄の中には、ノートパソコンと思われる物も写し出されていた。
これは、岡刑事が何度も映像を確認し、映像を解析した結果、
判明したものである。
岡刑事の執念の賜物と言って良い。

だが、それ以上に興味深い映像が映し出されていたのだった。

それは、生前の新美の姿が記録されていて、
新美と一人の女性が映し出されているのだ。

「誰だ此の女?」と竹中刑事が、岡刑事に聞いたのか?
それとも独り言か判らないが、そう呟いた。

新美の様な独身男性なら女性の一人ぐらいは、事務所に入って来ても不自然ではないのだが、その女性の容姿は、あまりにも
醜い顔であり背も低く、太った女性であった為、新美とはそぐわない女性と判断したのか?竹中刑事が疑問に思っての声だった。

「此の人、矢部さんだと思います。確かめてみます」と岡刑事は答えた。

新美とその女性はソファーに並んで座り親しげ話しをしている。
見方によっては、恋人の様にも見える。

女性は泣いているのか、ハンカチで目を拭いている。
所どころ、声が聞こえてくるのだがハッキリとは判らなかった。
これも詳しく解析しないといけないと思いつつ、岡刑事は映像を眺めていた。

「此の映像と音声を詳しく調べてみます。
特に音声は興味深いです。矢部さん失踪と関わりがあるかも知れません。それに矢部さんの捜索願いの書類をもう一度確認します。」
と、岡刑事は竹中に言ったが、これは岡刑事自身に言った言葉でもあった。
竹中は、「頼む。俺は佐伯を洗うよ」と言って部屋を出て行った。

映像の解析は岡刑事一人でもできたが、音声の解析となると
専門の知識を持った人に頼まねばならなかった

岡刑事は、矢部道子の捜索願いの書類を確認し此の映像の女性は
矢部に間違い無いと云う確証を得る事が出来た。

次の日、
岡刑事は音声解析をする為に、署内にある部署に行き
そこのスタッフと岡刑事は解析に臨んだ。

二人の会話は、ところどころ聞こえてくるのだが、聴き取りづらくハッキリとは判らない。
此の会話の中に、矢部道子の居場所が判る様な気がしているだけでは無く、岡刑事はもっと重大な事が判明するのでは無いかと、期待していた。

「此の、女のひと『死にたい』と言ってますね。」
と、スタッフの男が言った。

岡刑事にも、その様に聞こえた。
更に聞こえてきた、女の言葉は、
「全部私が、悪いの。」と言い

そして、女の名前を告げている。
「矢部」と解析され聞こえてきた。
新美は矢部の顔を見て励ましているかの様に見える。
「一体、君の・・・・悪いの」
と、聞いているみたいだが、ハッキリと判らない。

矢部から聞こえてくる言葉は、
「みんなから・・ている。・・・のせいで」
と言っているみたいだが、解析出来ない所もあるので、判らないところは、想像になってしまう。
更に聞こえてきたのは
「みんなから、・・を受けているの。・・・・だから・・・
迷惑・・・・掛けて・・」
と、言っているのだが、全ては判明しない。
更に
「御免なさい。・・・だったら・・・・・こんな気持ち・・・」
と言って、涙を抜いている。

新美の声で
「・・・飛び降りる・・ですね」
更に聞こえてきたのは
「・・・・・生きるべきだ・・・辛くとも、・・・・」
と、新美は矢部を励ましているのだろうか?

矢部が話しをしているのだが、声が小さいのか上手く音声を拾う事が出来ない。
岡刑事は、スタッフに
「もっと、声大きくならないの!何を言っているのか判らないわ。」
と、責める様に云った。

「これ以上は、チョット無理です。でも、・・・」
と云ってスタッフはヘッドホンを耳に当てた。
何か声を拾えたのであろうか、スタッフは

「なるほど。岡さん、聞いて見てください」
と云い、ヘッドホンを岡刑事に渡した。
聞こえてきたのは、矢部の声だった


「アタシ・・・・・メイ・・カナシ・・・・」
と、所々聞こえてくる。

新美の声は鮮明に聞こえる所がある。
「・・・・迷惑かけていると・・・・。
君は・・・・なりたいかい」

「なりたいです」と、此の言葉は矢部が強く云ったのか?明確に解析された。
何になりたいのであろうか?

「本当に・・・・・無かったら迷惑・・・」
と、矢部は言っているが、解析出来ない部分が非常に気になる。
新美の次の言葉は衝撃的であった。

「・・・・私は整形外科の医師なのだ。君が手術を望むなら
・・・見違える・・・君を作ってあげるよ」
と、所々解析不能だが、此の部分の言葉は明確に解析された。

「此の男の人、お医者さんですか?」とスタッフの男が聞いてきた。
「医者では無いと思います。科学者のはずです。
調べてみますが」
と、岡刑事は答えてみたが、新美の言葉は謎であり、此の言葉を知ることで事件の解く鍵がありそうな気がした。

「・・・・お金が無い・・・・無理です」
と、矢部が言っている。

「わた・・・・出して・・・全部・・・・」と新美が言っているが、全部は解析出来ない。

矢部の泣き顔は消え、少し微笑んだ表情になっている。
後少し会話があったみたいだが、明確には解析出来なかった。
その後二人は、恋人の様に手を繋いで、事務所から出て行った。
研究室にも、二人の映像が無い所を見ると違う場所に行ったみたいだ。それ以後の新美と矢部の映像は無かった。

スタッフが聞いてきた。
「此の男性は、この前殺された新美って云う人ですか?」

「そうです。生前の新美さんです。」

「此の女性は?新美さんの恋人?何か深刻な話ししてましたね?」

スタッフの男は名前を林と云い、年齢は26歳である。

「恋人では無いみたいです。此の女性は、失踪届けが出ている人で
矢部道子と云う人です。矢部さんは、『死にたい』と云ってましたね。そして整形を受ける様な事、云ってましたね。」

「でも、お金の事を云ってましたよ。整形手術のお金でしょうか?」
と、林は訝しがる様に言い、更に

「何でその費用を、新美さんが全部出すのでしょうか?」
と、岡に聞いてきた。

「そんな、話し新美さん、言っていましたか?」
と、岡は新美の言葉が聞き取れ無かったみたいだ。

「言っていましたよ」と、林はその場面を戻し再生し、
岡にヘッドホンを渡した。

岡は、ヘッドホンを耳に当て何度も聞き直している。
その真剣な眼差しは、女性格闘家らしい風格があった。

「確かに、新美さん、『全部出す』と云ってますね」

「可笑しく無いですか?恋人でも無いのに、新美さん整形の費用を
出すと云っているのですよ。可笑しいでしょ。どう見ても」
と、林は疑問に思ったのか、岡に聞いているが、

「本当ですね?何故、新美さんが、そこまでしないといけないのでしょうか?」
と、岡刑事も同じ疑問を抱いた。

「でも、此の事が判明した時、事件の全容が見える様な気がします。」
と、スタッフの林に宣言する様に伝え

「これ、もっと鮮明に聴こえる様にして下さい」
と、お願いし岡刑事は、部屋から出て行った。






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