私の瞳に映ったあなた(最終回) 3 ボーン 2023年6月20日 04:42 それ以降、僕と小塚さんは二人でいる機会が増えていった。それは、小さな恋愛だった。お互いがお互を意識し合う、可愛い恋愛。プラトニックラブ。僕は青春を謳歌していた。恋愛する事で勉強にも力が入り、クラブ活動も充実していた。人を好きになる事は、自分自身を高める事。小塚明子さんに嫌われる事なく立派な自分でありたい。その様にいつも僕は想っていた。そんな日が続いたある日、僕は彼女と男が一緒に腕を組み歩いているのを、歩道橋の上から見てしまう。二人、仲良さそうに歩いている。遠くであるが、仲良さそうな雰囲気は伝わってくる。降り出した粉雪が、大粒の雪に変わり僕の髪の毛を染める。丸坊主の熱くなった頭を、冷やす様に降り積もる。……一体、何があった?!……僕の疑問は、不信に繋がり、絶望に変わる。……女心なんて、夢の風船だ!風に吹かれ何処かに飛んでいくんだ!……これは、嫉妬では無く裏切られた怒りだ!……あの男は何者だ!子供では無い。大人だ!だが、小塚明子の父親でも無い。若者だ!もしかして、明子のお兄さんか?そう言えば、明子にはお兄さんがいると言っていた。お兄さんかも知れない。きっとそうだ!……と、僕は勝手に結論を出していた。僕の予想は的中した。あの男は、小塚明子さんの兄だった。僕は嫉妬と思われない様に、彼女に聞いた。「いつも、お兄さんとは腕を組んで歩くの?」と、「いつもじゃ無いよ。この前だけだよ。ちょっとふらついたから、病院に連れて行ってもらったのよ」と、いつもとは違って少しヒステリックな声である。「何処か悪いの?」「まだ、解らないよ。今度大きな病院で調べてみるんだって」「何で怒っているの?声が荒いよ。」「怒ってなんか無いよ。私を疑うなんて許せない。」「やきもちぐらい、焼くよ」と、今度は僕がヒステリックに明子に言った「へ〜^_^。やきもち、焼いてくれたの。今度食べさせてね。」と、声が急に明るくなった。明るい声とは裏腹に、顔の色は白い。普段から色白ではあるが今日はかなり蒼白である。「身体、辛く無い?いつからえらいの?」と聞く僕に、「心配ないわ。・・・。大丈夫だから。」と、明るく言う……その明るさが僕を不安にさせるんだよ。本当の事言ってよ……と、想いつつも「そうなんだ。大した事ないんだ。」と、喜んで見せた。その日2月2日 だった。次の日、彼女の教室に出向いた。彼女は一番後ろの席の窓側である。教室の後扉から覗くと居ない。同じクラスの男の子に聞いてみたら、「今日は欠席しています」と、答えてくれた。……病院に検査に行くんだな……と、僕は思っていた。次の日も彼女来なかった。その次の日も。僕は心配になって、小塚明子さんの家に訪れた。だが、留守であった。僕の不安が更に深まる。そんなある日、小塚明子さんから、僕の家に電話が掛かる。「お久しぶり、矢神くん元気?どうしてるの!」と、至った明るい声。「大丈夫なの?入院しているの?どんな具合なの?」「うん、入院してるけど、退院はまだみたい。検査ばかりしているの。何だか疲れてしまったの。」と、今度は声が沈んでいる。「矢神くん、お見舞いに来てね。待っているから。病院は東京のね、⭕️⭕️病院よ。地図に出てるから来てね。」「東京?行けるかな?遠いね。」「絶対に来てよ!お願いだから。」「うん、わかったよ。来週か再来週の日曜日に行くね。待っていてね。」「約束だよ」と、僕は小塚明子さんと簡単な約束をしてしまった。その時の僕には、深刻な気持ちでは無く、小塚明子さんの元気な声が聴けて安心してしまった。その日は2月15日だった。僕は、来週の日曜日も再来週の日曜日も見舞いにいけなかった。突然の訃報が学校に届く。3月2日の日小塚明子は亡くなった。一体どの様な病気だったのか?私には解らなかった。ただ、珍しい病気で10万人に一人と噂に聞いた。見舞いにも行かなかった自分を責めた。あの時、彼女の思いは如何なるものだったのか!「何故僕は・・・・。」本当に悔やんだ。それと同時に彼女に詫びた。心から詫びた。彼女の葬儀は3月4日僕は、学校を休んで葬儀に参加した。最期の君の笑顔は生前と同じ、薄笑みを浮かべ穏やかな表情は僕の瞳に強烈に焼きついた。決して消え去る事の無い君の笑顔。僕の目から涙も出てこない。悲しみが大きいと涙も出ないのか⁉️君は青い着物に身を包み、沢山の花が周りで咲いている。これからの天国への旅路を祝福しているみたいだ。……小塚明子さん、今から君は天国に旅立って行くんだね。僕を残して一人で行くんだね。……その時、私の脳裏に「my foolish heart 」の曲が流れた。乳白色した雲の中を、君は一人で天国の階段を登っていく後を振り向きながら、僕に未練を残す様に一段一段、階段を登っていく。美しい音楽に身を任せながら静かに静かに登って行く。振り向く君の瞳は、悲しみで僕を見つめている。伏せ目がちに見つめている。そして、階段の中央部を過ぎた時、振り返る事も無く階段を登り行く、君。僕は君に声を掛ける事ができない。言葉が出てこない。追いかける事もできない。何もできない!溢れる涙も止める事が出来ない。…………さようなら、大好きなあなた❤️ ・・・・また会う日まで……… 完https://note.com/yagami12345/n/nc97cbcd3b532https://note.com/yagami12345/n/n202b51a6b376https://note.com/yagami12345/n/n202b51a6b376https://youtube.com/watch ダウンロード copy #恋愛 #創作大賞2023 #病院 #オールカテゴリ部門 #体験 #実話 #天国 #売れないKindle作家 #ペイソス #大塚明子 #愚かなりし我が心 #小塚明子 3 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート