再婚しました。シングルマザーになって学んだこと、そして台湾での生活を選んだ理由を打ち明けてみます。
(※2017年12月27日に書いた個人ブログ記事を転載しています。)
前夫・現夫に全文を読んでもらって、承諾を得てこのブログを公開します。
この11月のことですが、5年間のシングルマザー生活を終え、台湾の方と再婚しました。
キューピッド(古い?)になってくれたのは、他でもない息子です。
息子が彼を慕っていること、
三人でいるときも息子が中心でいられること、
そして何より、三人でいる時間でも、息子が心からリラックスし、安心しながら笑っているのを見て、ぐっと心を揺さぶられたというのがお付き合いの始まりでした。
これまでは、周囲や日本の家族に支えられながら、ひとりで台湾で息子を育ててきたので、今、夫という頼れる存在がいることにまだまだ慣れません。
中国語が話せないまま台湾で妊娠・出産をしたことがきっかけで、その必死だった経験をブログに書き留めていたところ、たくさんの方に「参考になりました」と言っていただいたことが励みになり、このブログをここまで細々と続けてきました。
もしかしたら今回も、私と同じように困っていたり、悩んでいる人がいるかもしれない。
私が心のなかに閉まっていた気持ちを書いてみることで、その方たちにとって何かの助けになれば・・・
そんな思いから、このエントリーを書いてみたいと思いました。
シングルマザーになって学んだとても大事なこと。
そのひとつが、人には言えないつらさを抱えている人がとてもたくさんいるのだということでした。
このことは、シングルマザーになってはじめて思い知りました。
人に言えないつらさを持って生きていくことがどれだけきついことなのか。私にはまだまだ想像力が足りなかったんです。
幼少の頃から読書が好きでしたし、出版社で編集をやるくらいですから、想像力は人並みに、いえ正直言うとけっこう持ち合わせているつもりでいました。
でも、今回、私が持つ想像力はまだまだ狭いエリアにしか及ばないことが分かりました。
たとえば、一言でまとめれば同じ「シングルマザー」という形態であっても、その状態は本当にさまざまだということも。
● 離婚していないし、これからもするつもりはないけれど、身も心もシングルマザーである状態
● 離婚はしていないけれど、離婚を迷っている、シングルマザー予備軍の状態
● 離婚しているシングルマザーで、生活費や家族や親戚からの支援が受けられる状態
● 離婚しているシングルマザーで、生活費や家族や親戚からの支援が受けられない状態
それぞれ、まったく状況が異なりますよね。
自分が人に言えないつらさを抱えたとき、他のひとの抱えるつらさを察すること、そっと思いやることが、少しずつでもいいからできるようになりたいと思いました。
それともうひとつが、危機的状況に追い込まれると、冷静な思考や行動が難しくなること。
これは私自身が心にしまっている思い出ですが
裕福なご家庭の奥様から「うちもシングルマザーみたいなものだよ!」と言われたことがありました。
きっと励ましや共感する気持ちで言ってくれたんだと思うのですが、経済的にとっても辛かった私は「一緒にされても・・・」と逆につらい気持ちになったりしました。
今でこそ全くそんな気持ちにならず、「こんな風に寄り添ってくださるなんて、思いやりにあふれた方だなぁ」としか思いませんが、そのころの私の心は、ルサンチマンそのものでした。
ルサンチマン(仏: ressentiment)は、主に弱者が強者に対して、「憤り・怨恨・憎悪・非難」の感情を持つことをいう。
(出典:Wikipedia)
人と比べること自体が不幸の始まりだと頭では分かっていても、危機的状況に追い込まれると、冷静な思考や行動というのはこんなにも難しくなるものなんですね。
そして、ルサンチマンはルサンチマン的な発言に苦しむことになるんです。
「シングルマザーだから大変だと言いながら、○○を買っていた」「ビールを飲んでいた」などと言う言葉に傷つき、反応的になったりするんです。
「反応的」とは、「主体的」の逆であり、主体性を発揮しようとしないで、起こったこと、さまざまなその人への刺激、問題、事件、出来事に対し、そのまま感情的に反応してしまうことです。その反応には、何の論理的、倫理的、ビジョン的判断も介在しません。ただ瞬間的・感情的に反応しているだけの状態であり、その反応に対して自己が責任を負う準備はできていません。
(出典:一の習慣:主体性を発揮する【主体と反応】|7つの習慣 セルフ・スタディ|フランクリン・プランナー・ジャパン株式会社)
でも、その段階を抜けた頃から、だいぶ幸せに近づくようになっていきました。その段階を抜けられたひとつのきっかけは、この本を読んだことかもしれません。危機的状況にいないあなたにもおすすめの一冊です。↓
なぜ、東京ではなく台湾でシングルマザーとしての生活を選んだか
首都圏での病児保育サービス導入など、共働きやひとり親の子育て家庭をサポートされている駒崎 弘樹さん(認定NPO法人フローレンス 代表理事)という方の対談を読んでいたら、東京都文京区には「シングルマザーであることを人に言わないようにしている」方がいらっしゃると書いてありました。
駒崎:確かに文京区のように生活・教育水準が高いと思われている地域こそ、「格差」がはっきり生まれ、より孤立しやすいという課題はあるかもしれないですね。実は「こども宅食」を始めるにあたって、文京区にお住まいのひとり親家庭にインタビューをした時にこんな話が出てきたんです。
「私は絶対にひとり親家庭だとバレないように振る舞っているんです」と。周りにひとり親だと伝えてもなかなか理解されないし、こどもがよくない目で見られるのが辛くて隠しているんだそうです。
(引用・出典:「文京区長が「こども宅食」でNPOとの協働を決断した理由とは」)
すごくよく分かります。
身寄りが一人もいない長野県白馬村で当時1歳の息子を連れシングルマザーになった私に、
「うちで働く?」と声をかけてくださった東京の先輩たちもいました。とてもありがたいことだったので、一生忘れません。
それでもお断りをして台湾へ戻ることを選んだのは、社長に呼び戻してもらったことがもちろん最大の理由ですが、
もうひとつ自分で考えたのが「息子と私が少しでも多くの幸せを感じてられる環境に身を置きたい」ということです。
ひとりで子育てしていた私にとって、台湾はいつだって幸せを感じていられるとても良い環境でした。
これまでもブログに多々綴ってきたように、台湾で子どもは社会の宝みたいにみなされていて、子どもを排除するようなことがほとんどありません。
もちろんTPOにもよりますが、高級レストランでも、会社の集まりでも、ほとんどが子連れOKです。
子どもが泣いていたら、顔をしかめるのではなく、笑いかけてくれる、それが台湾人です。
だから、子連れの食事はファミレスかファーストフードが鉄板、みたいなこともなく、どこへ行っても子どもとの食事を心から楽しむことができます。
また、シングルマザーへの接し方についても違いがあると思います。
日本で「私はシングルマザーです」と言うと、母親である私には「あ、そうだったんだ、失礼しました」。息子には「かわいそうに、大変だね、がんばってね」と言われることが多いです。
一方の台湾は、共働きで子供は父親母親が育てるものだという意識が強く、家族のつながりを大事にすることもあってか(離婚率も日本より高いです)
ほぼ100%の確率で「そうなの!あんたすごいよ!」と言われ、
ほめられるだけでなく、病院やタクシー、レストラン、塾・・・数え切れない場所で割引してもらったり助けてもらいました。
息子は「君のお母さんはすごいね!お母さんこんなに中国語が下手なのに仕事も子育ても身寄りのない台湾でやっているなんて!」「君もしっかりお母さんの言うことを聞いて、助けてあげるんだよ!」「君もよく頑張っていて偉いよ。お母さんの大変なことを分かっていて賢い子だね! え、日本語も中国語も話せるの?そりゃすごいや・・・(続く)」と言われます。
環境で人は変わるなと私自身が身をもって感じています。
私は東京でOLをしていたころ、地下鉄で並ばない人がいたらイラッとしていたような人間です。
でも台湾にいると「そんな人もいるよな」くらいに何も気にならなくなりました。
レストランでサービスが悪くても、カフェで頼んだものと違うものが出てきても、イラッとしなくなりました。「まぁ、そんなものだよな」と。
そういうこともあって、環境によって人は変わると実感しています。
小さくてまだ自律できない息子は、よりいっそう環境から影響を受けるでしょう。
じ‐りつ【自律】の意味
他からの支配・制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動すること。
(出典:小学館 デジタル大辞泉)
人から「かわいそうね」と言われて「あぁ、僕はかわいそうなんだ」と思われる環境にいたら、どんな風に育つでしょうか?
さらに、私が人に迷惑をかけて落ち込んでいたり、人に疲れて家に帰って息子に辛く当たったりするのを見たら、どうでしょうか。
だから、台湾でスルー能力が高い台湾人に囲まれ、細かいことは気にせず、前だけ向いて生きている私の姿を見ながら
息子自身も「お前ら親子すげーよ!」と言ってもらえる環境に身を置いたほうが人生お得に生きられる気がするんです。
私自身、自己肯定感が低くて苦労してきたので(笑)、こうして育てた自己肯定感がきっと息子の将来の財産になってくれると信じています。
他にもたくさん理由はありますが、そういうわけで台湾にいることを選びました。
私は「台湾LOVE!」とか「ジェイ・チョウLOVE!」で台湾にいるわけではありません。(好きですけどね、ジェイ・チョウ。)
さらには中国語学科でもないので、どれだけ台湾や中国語が好きかを話すアツい話題にまったくついていけなくて、正直コンプレックスさえありました。
だけど今は自分で選んで台湾に身を置いています。
この選択を正解にするために、これからまた日々精進していきたいと思います。
そしてもしあなたが人に言えないつらさを抱えているのなら、世界にはそういう人間がたくさんいることを思い出してもらえたら嬉しいです。
それはシングルマザーだからとか、再婚したとか、状態がどうあれみんなに不平等に存在しうるものなのではないかということを、私はこの5年間で学びました。
また新しい家族ともども、どうぞよろしくお願いいたします。
最近私たちのような家族のことを「ステップファミリー」と呼ぶらしいですね。
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