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井川意高・高須克弥「自民崩壊2.8」

井川伊高・高須克弥「自民崩壊2.8」。電子書籍版はこちら↓
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 「yes!高須クリニック」の高須克弥氏と、大王製紙の社長だった井川意高氏の対談。高須克弥氏は美容整形外科で財を為した人だが、ユニークな言動や行動で知られる。井川意高氏は社長在任時にカジノ賭博で106億8,000万円を借り入れて逮捕された人材(と著者プロフィールに書いてある)。よくもこんな二人を対談させて、本にまとめたものだと企画にビックリ。ここでは作家の百田直樹氏が結党した「日本保守党」の意義がメインテーマのはずだが、共同代表宣言した河村たかし名古屋市長への反発(愛知トリエンナーレによる大村知事リコールの反動)もあって、あまり高い評価は下されていない。
 むしろ巨魁・岸信介元首相の孫である、凶弾に倒れた安倍晋三元首相の功績が讃えられている。そこには派閥の金権問題で揺れる自民党政権を「主なき崩壊」と危惧する向きがある。中露北朝鮮の新略危機を前にした改憲論、インド洋に向けて開いた国際外交(アメリカも追随)などにおける安倍晋三元首相の姿勢こそ、日本の行く末の大切な指針としている。同様の論調は、別の本における佐藤優氏と鈴木宗男氏の対談にも「安倍さんがいれば、ロシアともこんな(険悪な)風にならなかった」との嘆息があった。ウクライナ紛争があった今、本当にそうだったかどうかわからないが、自民党内を掌握し切れない岸田首相の姿は「ロスト安倍晋三」の日本の混迷を指し示している気がする。そして二人は公明党の慎重歩調に警鐘を鳴らしている。
 なぜ「2.8」というタイトルにしたのかは、読んでみてもわからなかったが、おそらくその頃を倒閣・解散総選挙と見ていたのだろう。しかし現実は何も決められずに、ズルズルと9月総選挙に雪崩れ込みそうな芸なしの自民党である。ハッキリ言って少子化対策を実現できなかった自民党による経済停滞が、二大政党制によって裁かれない日本の政治が危機的であることは二人の言を待たない。そしてもちろんこのような事態は「悪夢の民主党政権」によって生じたことも断罪されている。

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