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かったぱしから読書生活

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大学卒業以来、ずっと出版業界。本が好きで、ずっとこの世界で暮らしている。読書はフィクション派。ファンタジー好きなれど、時代物、ミステリー、純文学、何でも来いで、ひたすら濫読。読書… もっと読む
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2020年2月の記事一覧

山田詠美「放課後の音符」

山田詠美「放課後の音符」

山田詠美「放課後の音符(キーノート)」(新潮文庫)。女子二人と三人でネパール料理を食べながらの読書談義がこの本。二人は山田詠美の作品を熟読していた。自分は本人に会ったことがあるにもかかわらず、読んだことのある本は「ぼくは勉強ができない」だけという初心者だった。
 この本は8つの短編とあとがきで構成されている。「Body Cacktail」「Sweet Basil」「Brush Up」「Crysta

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斎藤栄「悪の帝王切開」

斎藤栄「悪の帝王切開」

斎藤栄「悪の帝王切開」。産婦人科・甲賀病院に入院中の臨月の妊婦が、医師を装った何者かに誘拐された。目の前から、忽然と患者を連れ去られてしまった甲賀陽一は、必死の捜索に乗り出す。それは帝王切開を強要するための誘拐犯という、非道極まりない犯罪だった。医療を悪用した医師が起こした犯罪。
 表題作ほか、産まれたばかりの子供を遺産争いで誘拐されることを恐れる母親「狙われた妊婦」、怯える女子高校生たちに迫る脅

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斎藤栄「産婦人科医の冒険」

斎藤栄「産婦人科医の冒険」

斎藤栄「産婦人科医の冒険」。鎌倉の産婦人科医・甲賀陽一が名探偵ぶりを発揮するシリーズ。前作「産婦人科医の密室」で登場した花園和代は、身寄りがなくなり、鎌倉に引き取られた。その後、甲賀陽一の息子である陽太郎の妻となっている。こういうところが甲賀陽一の懐の深いところ。
嵐の夜、産婦人科医・甲賀陽一は、鎌倉警察署の中根警部より、緊急の依頼を受ける。七里ヶ浜の海岸で、全裸でさまよう若い女性を保護したので

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斎藤栄「火の国秘愛殺人事件」

斎藤栄「火の国秘愛殺人事件」

斎藤栄「火の国秘愛殺人事件」。熊本城を舞台にした、タロット日美子シリーズの一作。日美子は、友人の井上純から、熊本城の銀杏の樹に隠しておいた秘密の文書を、入院中の自分に代わって回収して欲しいと懇願される。ところが、樹のうろはすでに空っぽ…。純の友人グループ4人の中の誰かが持ち去ったと推測した日美子は、リーダー格の服部と接触を図る。しかし待ち合わせの場所で、彼はすでに刺殺されていた。若く仲良しな男女4

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矢月秀作「紅の掟」

矢月秀作「紅の掟」

矢月秀作「紅の掟(あかのおきて)」(徳間文庫)。レッドホーク=赤い鷹を正統に持つ者だけが、頭首と認められる。組織には長老を含む複数の相談役が、国家公安委員会とのパイプ役となっている。真の頭首である工藤は九州の水産加工所に身を潜めている。しかしレッドホークを奪って、頭首の座を奪い取ろうとする徳丸軍団。長老を襲い、さらに隠されたレッドホークを血眼になって探し始める。
これぞハードボイルド。ただひたすら

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梶尾真治「ダブルトーン」

梶尾真治「ダブルトーン」

梶尾真治「ダブルトーン」(徳間文庫)を読んで『やっぱり、梶尾真治作品はいいなあ』と堪能。かつてサカイノビーさんがイラストを描いた「穂足のチカラ」(新潮文庫)などを読んで魅了されていた。
 2人のユミ、主婦である田村裕美と、広告会社のOLである中野由巳。2人の間には共有される記憶がある。日々平凡で安定した日常を送る裕美。変化のある毎日を忙しく過ごす由巳。朝目覚めると、どちらのユミかが自身に表出する。

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西條奈加「刑罰0号」

西條奈加「刑罰0号」

西條奈加「刑罰0号」(徳間文庫)。7編の連作短編集。死刑というテーマを核として、被害者の目線から見た、応報刑の意義。その重いテーマをタイトルにもなった「刑罰0号」という発明を通して、どうあるべきかの是非を問うSF小説。「刑罰0号」による人格転移という現象を、時系列で追う。そしてその先に、世界に核の意義を問う壮大なスケールの物語(ちょっと書き過ぎたかも。ネタばれ避けたい方は、ここから読まないで)。

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鳥羽亮「まろほし銀次捕物帳」シリーズ電子復刻

鳥羽亮「まろほし銀次捕物帳」シリーズ電子復刻

鳥羽亮「まろほし銀次捕物帳」12巻分を電子復刻。前半の6巻を2月から公開。後半の6巻は3月上旬に公開予定。母親のおそでが切り盛りしている、池之端仲町の小料理屋「嘉乃屋」。そこに住む、岡っ引きの銀次。女性たちがウットリするほどいい男。しかし本人は捕物一直線。同じ職業だった亡父から「まろほし」なる秘武器を受け継ぐ。下っ引きの松吉や与三郎が脇を固める。貧乏道場主の向井も助太刀。水戸黄門や寅さんみたいな、

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