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漫画「違国日記」を読んで

 タイトルそのまま。なんのひねりもない。
 休職備忘録はどこにいったのか。いずこへ。
 なんて、自分でもどうかなと思うが、書きたいときに書く。言葉を残す。この作業は誰のためでもない、自分のためだ。本当、びっくりするぐらい自分のためだけ。
 自分のために、いまから言葉を、残す。

「違国日記」読書中

 タイトルは結構前から知ってた。チラッと、ネット公開されている無料版を読んでいた時期もあった。でも、小さな画面の中だけではなんか物足りなくなって、指のかさつきを誘う紙媒体を買った。
 いい大人なんだから(会社員として自分で自由になるお金をある程度は得ているという意味で)、ドカッと、さらっぴんを大人買い!……というわけにもいかず、そこまでの労力もなく、ちまちまと古本屋を回って集めた。それもそれでまあまあな労力だったけど。そういやあ、時間と労力をかけて漫画収集をしようと思ったのも仕事休んでからだなあ。「仕事を休む」ということは、いまの生活に多大なる影響を与えてくださってやがる。はあ、なんか腹立つな。ま、それはここではよい。

 「違国日記」の話に戻る。
 この作者さんの本、なんというかすごく独特なのだ。
 誰のそばにも当たり前に起こっているような、ふと横を向けばなんの違和感もなくそこにあるような、なんだろう、冷蔵庫みたいな?……我ながら微妙な例えだな。
 有体に言えば、たぶん日常…のようなものが物語の中で描かれている、のだと、思う。あるいは、人生のような。もうその辺から自信がない。「どんな漫画?」と聞かれて、あらすじは言葉にできる。でも、そのどれもがわたしの中でしっくりこないのだ。

 読むひとによってびっくりするくらい色付きが変わるんだろうな、なんてことも思う。カラーなのか、セピアか、はたまた白黒か。カラーでもきっとぜんぜん違う。
 読んでいるひとの目を通して、物語がそのひとに染み込んで、そのひとの一部になったり、通り越していったり、なんやかんやする。なんやかんやって、便利な言葉ね。

 わたしの場合は、うん、透明だわ。目に見えないもの。

 「違国日記」を読んでいるときは、飛行機乗る時の金属探知機みたいな、あういう目に見えないレーダーに晒されている感じがする。そうだな、紫外線でもいいな。浴びている時はそこまでわからないのに、気づけば肌が赤くなっている。黒くなっている。
 自分でも言葉にできないような、気づかないようなレベルで、身体のほうが敏感に反応している。実際、なんにも変わらないときもあるのだけど、微かに違和感の残る爪痕を残している。うまく言えないが、そんな感じ。

 あと、微妙に、絶妙に、お尻をモゾモゾさせる。あ、トイレに行きたいとかではなく。
 私の中の、柔らかくて、無防備で、人一倍敏感なところが、きゅっと指先で摘まれているような。内容によったら、摘まれている、ではなく、抓られている、という時もある。読んでいるわたしのコンディションにもよるのだろうけど。

 話は変わるが、漫画だけに限らず、小説やその他諸々の物語で「この時、この登場人物は、こういう感情で、こういう行動をした」などなど、解説するような感想文をそこかしこでよく見かける。(以降、解説感想文と呼ぶこととする。) 
 「なるほどな〜」て感心する時もあるし、「それ、そういう見方したくなかったなあ〜」と思う時もある。まあそれはその解説感想文を読まなければいい話なのだけど、何が言いたいかって、本当に柔らかい部分を抓る話って、わたしの場合は言葉にできないことが多い。イコール、好きな物語ほど人に伝える言葉にできない。でもわたしの中では何かが渦巻いて、つねられた跡が赤くなってて、もしくは日焼けで赤くなって、こういう風に突然言葉に残したくなる衝動に駆られるのだ。

 なんの話だっけ。そうそう、「違国日記」だ。
 この漫画は、本当に言葉にできない。(……なぜ感想文を書こうと思った?)
 小説でいうところの、行間がすごい。全体的に淡白な感じの絵柄なんだけれど(絵もまともに描けないのに急に批判するみたいですみません)、真っ白な、空白にこそ、なにか意味があって。この「なにか」ってのが、この漫画のミソなんだよな、たぶん。わたしはそう感じる。
 そして、この空白を何にも思わないひともいるのだと思う。なにかを明確に感じとるひともいるのだと思う。なにか思うけどなんなのかわからないひともいるのだと思う。他にもいろいろ、いるのだと思う。(雑)

 わたしは、なにか思うけど、なにかを感じるけど、なんなのかは分からない。でもその分からないところに、とてつもなく大事ななにかがある気がして。でも、分からなくて。いまわからないだけで、いつか分かるのかも、なんて思って。言葉にできないだけで、できない部分は分かっているのかも、なんて傲慢にも感じたりして。
 でも、死ぬまで分からない気もして、ちょっと怖くなって。
 「違国日記」のその「分からなさ」が、わたしの柔らかい部分に爪を立てて、魅了し続けている。
 ……まだ6巻までしか読んでないけど、現場からは以上です。おわり。

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