コロナ時代の遠隔授業と地方大学の悲哀(滋賀県立大学と徳島大学)

本稿は2020年6月23日段階の意見です。

遠隔授業をめぐる地方大学の問題

 本エッセイをシェアしてくれている、法政大学の武田俊輔先生(滋賀県立大学は前任校)のFBをみていたら、滋賀県立大学の学生が、遠隔でZOOMすら認めない大学に対してモノ申しているとの投稿がありました。私も思う所をコメントしたのですが、同じ地方大学でも、瀬戸内海を挟んだ徳島大学と、関西圏に近接する県立滋賀大学では状況が違うなと思ったので、ちょっと思ったことをまとめてみます。

【滋賀】オンライン授業求め署名運動も 県立大、原則「自習」の学習方針
2020年6月17日 05時00分 (6月17日 05時00分更新) https://www.chunichi.co.jp/amp/article/73961?fbclid=IwAR07Z-I4XR9N7THin4PHDjmlg_oIu8USTJeAYJ93TVZ3PdQ-IWhVokYE3uk

新型コロナウイルス感染症の影響で多くの大学がオンラインでの授業を進める中、県立大(彦根市)は前期の授業について、ライブ型のオンライン授業ではなく「教材を提示し、学生に自習させる」との方針をとっている。学生ごとに異なる通信環境への配慮から、大学側は原則、ライブ動画での授業を禁止しているが、学生や教員からは「教育の質が低下する」と懸念する声が上がっている。 (森田真奈子)

徳島大学の現状

徳島県は、実質的に感染者がほとんど出なかったことから、現在は、対面授業と遠隔授業が併存する状況です。私は、ZOOMでのライブ動画による遠隔授業を続けているのですが、学生によっては前後に対面授業があるために、空き教室で遠隔授業を受けています。

大学は、もともと授業開講予定の教室を解放し、大学に来ている場合はそこで授業を受けることを推奨しています。ブレイクアウトセッションを使って、ディスカッションする際も、同じ教室にいるにもかかわらず、画面越しで対話するというシュールな状況が起きています。

ですので、気楽に、滋賀県立大学も、対面授業が始まり、状況は改善するのでは?と気楽にコメントしたところ、そうではないとのこと、、、、

大都市圏近郊の立地の有利さが仇に

 勝手に滋賀県と徳島県を同じに見ておりましたが、、、、、天下分け目の関ヶ原が近くにあるだけに滋賀県は交通の要所、一方、徳島は本州から海で離れております(ただし、同じ四国でも愛媛大学の状況は気楽ではないようですが、、、)。

滋賀県立大学は、京都、大阪、名古屋、岐阜から通ってくる学生が多いので、簡単に、対面授業にはならいのでは? とのことでした。

 徳島大学では、県外の大都市から通ってくる学生はほぼいないので、兵庫県の神戸を気にすることなく、授業開始などを決めることができています(淡路島も兵庫県ではあり、通ってくる方もいるのですが、、、、)。

これまでの学生募集では、大都市圏からの通学できることは色々とメリットであったのでしょうが、それが、今、逆に仇になる。徳島のような、大都市圏から隔離されたことが逆に有利になってしまう、、、、皮肉としか言いようがないなと思いました。

去年からノートパソコンの必携化

 それと、徳島大学がラッキーだったのは、実は、昨年度からノートパソコンを必携化し、全ての新入生に購入させていたことです。もちろん、コロナによる遠隔授業を予測しての行動ではなく、、、、単に、今までのように情報センターで受講生の分のパソコン(ハード)を購入する予算がないから、ソフトは大学でライセンス購入し、パソコン本体は学生個々人で購入という方針になってしまっただけなのですが、、、、

 加えて、ほとんど定着していませんでしたが、これまでも遠隔授業は推進するという方針ではあったので、、、結果的に、全員がノートパソコンを持っているという前提なので、当初は、対面授業で行う予定でありましたが、全国への緊急事態宣言を受けた瞬間に、何の躊躇もなく遠隔授業の方針になりました。

通信環境は色々で、授業中に落ちたりする学生もいますが、、、、そこは今の所は問題にならず、授業は進んでおります。

意図せざる帰結 

 昨年は、皆がパソコン買えるのか? 学生から文句は出ないのか? 私立ではなくて国立なんだから、学費が低いから来ているのに、余計な負担をさせるのか、授業に必要な設備は大学が揃えるべきだろetc と学長の判断に批判的な部分もありましたが、このような状況になると、徳島大学・野地学長の判断の正しさに感謝するしかない今日この頃です。

 やはり、大きな方向にはきちんと乗ってゆくこと、この場合で言えば、少数の金銭的に大変な学生がいるからパソコン必携化をしないのではなく、それは別のサポートをすることで時代の流れに乗ってゆくことが重要なんだなと、改めて思いました。

滋賀県立大学に対しては、個々の通信環境がどうのこうのと言うのではなく、やってみて、だめなら改善方法を考えるというのがすべきことではないかなと、改めて思いました。若干、新自由主義的ではありますが、やらないで言われる文句よりも、やって言われる文句の方がいいとは思うのですが、、、役所は皆のためを考えています、通信容量も皆に迷惑をかけるので止めますという方が「安心」なのでしょうか。

既存の優位性が全て裏目に出るコロナ時代

滋賀県立大学は、地理的優位性と、公立大学という学費の安さで、これまで学生を集めてこられたのだと思いますが、それらは全て外部要因なので、ちゃんとしないと、学生から見捨てられて、学生も集まらなく、教員も異動してしまうのではと、他人事ながら心配になりました。

加えて、コロナ時代、「交通の要所」「大都市圏近郊」といったコロナ以前の有利な条件が全てリスクとなるので、、、、、、仮に元に戻ったとしても、潜在的リスクはあるので、むしろ、きちんとした対応策を他大学以上にやらないといけないのにと思った次第です。

皮肉な優位性を獲得する地方社会

 対して、交通の要所でもなく、大都市近郊でもなく、加えて、グローバル化していないが故の「安全」を得ている地方(大学)は、ワクチンや特効薬が市場化するまでの数年の優位性を得たのだなと思いました。

地方大学こそ遠隔授業の可能性を追求すべきでは

 そして、私は、頑張って、単なる対面授業の置き換えの遠隔授業ではなく、多くの人と簡単につながれるという遠隔授業の能性を追求して、今まで不利であった、大都市から遠く、交通の不便さを克服すべく、新しい、授業スタイルとまちづくりを確立してゆこうと思いました(地方大学が目指すべき遠隔授業についての私見はまたまとめます)。




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