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いつも頭の片隅にいるブランドたち #1 - Aesop -

はじめに

派手なわけでもないのに、頭からなかなか離れないブランドがある。
どうしてそこまで存在感を示すのか、自分に影響してくるのか。
そんなブランドたちの中身をもっと知りたい。
ふとそんな風に思い、このマガジンを始める。
ものすごい沢山好きなブランドがあるわけではないので、
不定期更新で少しずつ、でも深く書いていくつもりである。


Aesopというブランド

記念すべき(僕にとって)第一回目は、Aesopについて。

街中を歩いていると、人とすれ違う。そのたびに、いろんな香りが漂ってくる。でも、いい匂いだなと思っても、その数秒後に忘れているのがほとんどな僕にとって、いつも思い出されるブランドがAesopだ。

1987年に創業され、メルボルンを本社に世界中で展開しているスキンケア、ヘアケア、ボディケア製品のブランド。

似たようなプロダクトが数多ある中で、何故自分はここまでAesopに入れ込んでしまったのか。そこを紐解く鍵は、体験思想という二つのテーマにあると思っている。


Aesopのブランド体験は、明示的で再現性が高い

Aesopといえば、店舗の美しさや販売スタッフの丁寧な対応。行ったことがある方はわかると思うけれども、どの店舗にも大きなシンクがあり、そこで実際に丁寧にほぼ全てのプロダクトを試すことができる。

その場での体験がとても心地よいのは、Aesopのプロダクトとデザイン哲学が素晴らしく明示的であることから始まる。

綿密な情熱 https://www.aesop.com/jp/r/philosophy-to-products
合理的かつ持続可能なデザイン https://www.aesop.com/jp/r/philosophy-to-design

そして、見事なまでに現実空間で再現している。プロダクト、店舗、スタッフというAesopの持つ、静と動すべての資産に浸透している。だからどの店舗に行っても変わらないAesopの良さを体感できる。


Aesopは、自分たちの思想を日々探求し、開拓している

でもAesopにはまだある。現実の空間にいなくても、自分たちのブランド・思想を伝えていく努力を怠らない。

特に注力している3つのウェブコンテンツによって、世界のどこにいてもAesopたるものを感じられる。

The Ledger 例:8月号
Taxonomy of Design http://taxonomyofdesign.com/#!/
The Fabulist https://www.aesop.com/jp/r/the-fabulist

The Ledgerは、月1で発行される濃密なニュースレター。
毎月のテーマに沿って発見、映画、参加、人々、聴く、聞く、読む、訪ねる、など、人が生きていく上での行為ごとにトピックを紹介してくれるものだ。ニュースレターというよりも、少し重たい読み物という印象の方が正しいかもしれない。Aesopの哲学が詰め込まれた世界になっている。気軽に手を出せないくらいハードルが高い。ニュースレターは希望者だけが読めばいいものとしているリスクが、ブランドをさらなる高みへと釣り上げている。

Taxonomy of Designは、Aesopの考えるデザイン分類学のデジタルアーカイブ。ここの説明は本家のものを引用させていただく。

デザイン分類学イソップ空間のアーカイブ「デザイン分類学」はイソップの空間を特徴づける創作の過程、素材、特色、そしてコラボレーションパートナーであるデザイナーや建築家に対する敬意を表した、私たちの店舗のデジタル全書です。店舗を選ぶための詳しいガイドと共に、この広範なサイトは、オスロ、メルボルン、京都、パリ、ニューヨーク、サンパウロの店舗制作を私たちと一緒に手掛けたパートナーのインタビューフィルムが収められています。

店舗のデザインやSTUDIO ILSE(イルス・クロフォード!!)をはじめとしたデザイナーたちのアウトプット、特徴、素材、格言、映像までが格納されている。Aesop好きとしては、どの国にいても世界各国の店舗を自由に旅することができる。この素晴らしい空間に訪れることを夢見るだけで、僕は最高に楽しい気分になる。

The Fabulistは、まだ日本語化されていない文学作品集とも呼べるべきものだ。Fabulistとは寓話作者の意味。プロダクトの名前ともなった古代ギリシャの奴隷とファッション師であるAesopを敬うことをテーマにした作品ページである。何より素敵なのは、単に寓話を書くのではなく、Aesop流に5つのテーマに沿ってFabulistを捉え直していること。作品は個々で読んでいただくとして、それを紹介したい。

01 Fabel(寓話)
トゲある寓話、擬似科学のおとぎ話、または回想録など。

02 Shelf Life(保存可能期間)
注目すべき本たちの注釈付きスナップショット。ますます遍在する画面ベースへの文章へのアンチテーゼとして意図されている。

03 Essential(エッセンシャル)
Aesopの尊敬する文化人によるエッセイなど。

04 Free Radical(フリーラディカル)
自由思想家、反乱軍とのインタビュー。

05 On Beauty(美しさ)
これら全てのトピックに関して、幅広く思考するための文章。

現状、英語でしか書かれていないことに対して注釈があるくらい、非常に思想と哲学が込められている。正直、英語ができないとちんぷんかんぷんなレベルだけれども、今の世の中に対するアンチテーゼや自分たちの思想をエッセイや人を通して伝えていくことのできるブランドがどれだけあるだろうか、と考えさせられる。


こうしてAesopは出来上がっている。

僕らが触れられる体験とウェブを通して伝わってくる思想。外見の美しさだけではなく、内面としてあるべき精神を表明するだけでもなくアプローチする。

Aesopはそれぞれのコンテキストを適切に、かつ確実に設計していることがとてもよくわかった。

だからこそAesopは、常に僕の頭の片隅にいて、訴えかけてくるのだ。


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