見出し画像

ママンに送る詩㉝『25mの蜃気楼』

イチ、二、パッ
塩素のにおい

イチ、二、パッ
90年代のJ-POP

イチ、二、パッ
色褪せた壁の色

イチ、二、パッ
すすだらけの換気口

イチ、二、パッ
端が欠けたビート板

イチ、二、パッ
沈みゆく太陽

イチ、二、パッ
イチ、二、パッ
イチ、二、パッ

何度手を掻いても
消えない悲しみ

ツンと痛む
鼻の奥

水中メガネに
たまる水

息をきらして顔を上げると
いるはずもないあなたが
観覧席から微笑んでくれた気がした


【あとがきのようななにか】
夏もそろそろ終わりそうなのでなんとなくつぶやいてみました。

夏休みに兄とよく行っていた公共プール。母はいつも車で送ってくれて、観覧席からボクらを見守ってくれていました。そのプールにはいまでもちょくちょく行くのですが、去年、母が亡くなってから気を紛らわそうと泳ぎに行ったときに、観覧席に母がいるかのような感覚を覚えました。

そのことはいつか書きたいと思ってはいたのですが、ついには1年が経ってしまったというわけです。いまだに夏休みの宿題は最後まで取っておく習慣が抜けきらないノロマなボクではありますが、そんなボクでも今日を生きながらえさせてもらいました。

あなかしこ、あなかしこ…


【あわせて読みたいかも】


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?