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かりんとう。

『今日は朝から かりんとう が食べたくなった。
 おじいちゃんの味がする かりんとう 。
 スーパーに行き黒糖の大きい袋に入った かりんとう を買った。
 私の口には大きい かりんとう を口を大きく開いて頬張った。
 カリっとかじった瞬間に口の中に黒糖の甘さがじゅわ〜と広がった。
 やっぱり、美味しくて懐かしい。
 きっと、二度とあの頃には戻れない。』



幼い頃、祖父母と暮らしていた。
私が学生の頃、他界した。
時折、ふと祖父母思いだす。
一緒に手を繋いで散歩しながら「さんぽ」を歌っていた。
祖父はよく休日テレビをつけながら花林糖を食べていた。
そんな祖父の横に座ると「食べるか?」と笑顔で聞いてくる。
その姿が印象的だった。
仕事熱心だった祖父は定年退職をし祖母と一緒に暮らす日々を送っていた。
しかし、私たち家族の中で1番の中心人物だった祖母が亡くなった。
その出来事は私が小学校4年生の時だった。

それからというもの
祖父は自分が祖母を殺してしまった。と自分を責めるようになった。
そうして、毎日お酒に溺れていった。
そんな祖父は認知症とうつ病患った。
大好きだった祖父は遠い昔のようだった。

学生だった私はそんな祖父に対して少し嫌悪感を抱いていた。
そして、思春期真っ只中の私は祖父を思いやる余裕すらなかった。

度々問題を起こすようになった祖父は入院することが決まり
私が、お見舞いに行った頃には祖父は殆ど意識がなかった。
最後の会話すら覚えていない。

何度経験しても家族を失うのは、苦しく辛い。
それでも残された人間は、ただただ前を向いていくしかない。
人間は未来に進むことしかできない。
いいも悪いも全て思い出として心に抱いて歩む。
上から見守ってくれていると信じている。







 


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