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リーダーの仮面-安藤広大

識学は2015年創業の経営コンサルティング会社。正確には過去からあった理念を代表であり本著者である安藤氏が習得し、個人事業主として事業展開を始めてのは2012年。現在では、従業員数170名、年商25億円を実現する会社へと成長する。
様々な経営コンサルティング会社はあるものの、ここまで急成長をするコンサルティング会社は珍しく、個人的にも非常に興味がある企業です。同社は識学と呼ばれる経営理論をベースとしてコンサルティングを展開しています。余談ですが、伸びる経営コンサルティング会社は何かしら絶対的な理論を広めるという方がスケールするのかもしれませんね。

人と思って組織運営をすると人の為にならない

本書籍の最後にして最も強烈な言葉がこの「人を人と思って組織運営をすると人の為にならない」という言葉です。また、同時にこの言葉こそ識学の集大成なのかもしれないと感じています(本書籍しか同社・同理念と接する機会がないので浅い認識かも)。
人は各人の価値観の中で、自身の利益を追求しながら生きています。それは、決して他人に影響をされることはあっても、受け入れるものではなく、という前提条件があります。そして、その前提があったうえで、マネージャーは人を動かし、生かし、そして、組織を前進させなければならないという使命を持っています。
夜に飲みにつれていって、話を聞いて、共感・納得をして共に歩む。そのようなマネジメントの在り方は、上記の流れからすれば本質的ではないと言えるという事です。
ただ、それを否定することなく。その無慈悲な人しかマネジメントができないという訳ではなく、誰もがマネジメントをするタイミングで仮面をかぶる必要があるという事を言っています。

良いリーダーの本質

その点で言って、良いリーダーの本質は、良い人ではなく成果を出せる人であることが絶対条件であると言えます。成果の出せる組織を構築し、そのメンバーにその恩恵を渡せることこそ、リーダーとしてマネジメントをするという事であると言えます。
また、同著では「リーダー=トッププレイヤー」であるという構図に対して疑問符を投げかけています。リーダーは成長する人ではなく、成長をさせる人であるという事が重要であると説いています。

個人と会社、唯一の共通する方向性は「成長」

さて、ここが最も重要な部分になりますが、個人が会社に求める事。逆に会社が個人に求める事。実はこれは一致しない答えが世に溢れているという話です。「給与=利益」は一見一致していそうですが、株式会社である場合は会社はステークホルダーが最優先事項になりますしね。
その点において、共通の答えとして本書では「成長」を共通の方向性として提示しています。これは納得。
そして、リーダーのマネジメントというのは、この成長をより早く、確実なものにするという事としています。上記の通り「リーダー=トッププレイヤー」ではいけないのはそういう観点がある為です。
では、成長をさせる為には何をすればよいのか。その答えは「競争」をさせることであり、その為に「恐怖」を与え続ける事であるとしています。※恐怖ということ怖いですが、成長しなければならないというような適度な緊張感を醸造するものと表現しています。
要するに、リーダーというのは強権政治をするのではなく、競争が起きるような適度な緊張感・恐怖を組織に根付かせることが重要な責務となるということです。

競争を成り立たせる環境づくり

組織に正しい競争環境を生み出す為に必要なことは、そこに「競争に適切な風土」を創ることです。チームであるという認知を互いにして、その上で競争をする雰囲気(正確にはせざるを得ない雰囲気)を構築すること。
その為には、互いを尊重するような関係性を構築する流れを作り上げる必要があります。その為に、同書では「ルール」を決めて徹底する事を挙げています。そのルールは誰もが努力することで達成の出来るものであり、また、全員に必ず守らせるということが重要になります。(目標を達成するというルールよりも挨拶をするなどといった姿勢面をルールとして定めることが必要です)
ルールを定め、確実に守らせていく事のメリットは、仲間意識が醸造される点にあります。また、その過程で最もやってはいけないことは、自身に対しても依怙贔屓をしてしまうこと。自分にもメンバーにも一律に公平に厳しく。これが非常に大切です。

明確な線引き

リーダーがリーダーたることに対して、明確に線引きをすることが必要です。それは、恐怖・緊張感を与える側と受ける側の明確な差と言ってよいでしょう。
よくあるリーダーとメンバーの会話の中で、「これを頼みます」というものがありますが、これはリーダーとメンバーが同一の延長線上にいる事を暗に示していると言えます。業務指示を与える時は、明確に言い切ることが重要になります。また、言い切ることと放任は別で、リーダーに求められるのは、未来における組織の成功だけではなく、今目の前の業務を遂行することも含まれます。両方の点において、適切な報連相は必要です。
報連相のうち、報告・連絡は比較的難しい物ではありません。管理をしていくという点においては、機械的に進めていくことが妥当であると言えます。一方、相談は注意が必要であると指摘しています。相談というのは「本人の権限では対応しきれない事」「自身では決められない事項」に対してされるものですが、時にそうではないものが含まれるケースも。安易にこたえることは、今の業務に対してはメリットになりますが、中長期的な視点ではメンバーの成長の場を奪ってしまう事になります。そういう時は「それは貴方が決める事だから」と伝えることが大切です。

結果と評価

そして、業務の結果に対してどのように評価を下すかという事です。これは前述した立場の点をしっかりと認知したうえで、プロセスではなく結果に対してフィードバックをすることが必要です。
結果として適切な成果を挙げるものであれば「お疲れ様(褒めすぎない。業務だからやって当然という姿勢)」で向き合い、未達であれば「未達でしたね。で、どうする?」という行動を促す質問をしていきながら具体的な行動を促していきます。ここで未達であるという事実を明確に伝えるのは重要なことです。
評価を下す手前になるのは、その結果を認知するという段階です。このプロセスにおいてありがちなことは口頭報告を受けるという事です。口頭報告では、物は言いようになってしまうので、時にうそを事実にするというケースも。日報などを用いて定量的に仕組みとして回していくことが必要です。

成長を促す組織づくりとは

ということで、様々な事をまとめていきました。くどいようですが、重要なことは成長をする風土を作る、その為に適度な緊張感を組織に与える。ルールを定め環境を作り、立ち位置を明確にしリーダーがリーダーとしての役割を担うようにする。そして、結果と評価を用いて組織を動かすという考え方です。そうすることにより、個々人が成長するようになり、組織が成長するようになっていきます。
一連の流れの手前にある、指示だしという点において。実はそのポイントは最初にあると本著では言っています。
業務の最初と最後(現状と成果物)の間の明確なギャップを認知させ、考えさせ、頻度良い報告と評価で緊張感が生まれる仕組みを作る。そのステップを高速で回転させる過程にこそ人が成長する風土は生まれるのです。

最後に

冒頭に書いた通り、識学は個人的に非常に興味のある理念・思想でした。「人と思って組織運営をすると人の為にならない」という考え方は、今まで多くの組織と向き合ってきた中で感じながらも明言できなかった言葉。この知識を先ずは自身で体現していくことが第一歩ですね。

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