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〔短編集〕細胞膜を超えて

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宇宙構造をテーマにしたSF短編集
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#小説

『ひび』

でも逃げたい気持ちがまさって3000円でモヤモヤを買ってしまった。

家に帰ると冷凍庫には親の買ってきたコーンアイスが入っていた。
コーンのアイスはべつに好きじゃない。
だから私の分のアイスだけが置き去りにされている。
きっと私は誰かを殺してしまいたい。
夏くさいリビングで窒息死できるならしたかったのに。
いつかきっと取り返しのつかないことになるから。

誰もみてない夕方にコーンを噛み砕く時だけ、

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細胞膜を超えて

細胞膜を超えて

河川敷に腰掛ける中学生2人
A「あんた塾は」
B「さぼり」
A「殺されんじゃん」
B「それな」

B「宇宙ってどこまであると思う」
A「どこまでも」
B「考えろよ」
A「考えたよ、ないんじゃない?境なんて」
B「あるだろ」
A「なんでわかんだよ」
B「ないとも言い切れないだろ」
A「…うん…?何急に」
B「いや、そういう本読んだんだよ」
A「宇宙の本?」
B「そんなかんじ、宇宙の真理、てきな」
A

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非出産主義者の大罪性について

宇宙は生き物の細胞である。
という説がある。
人間の体を成り立たせる細胞の1つ1つが宇宙であり、また私たちの存在するこの宇宙も何者かの体細胞である。という説。
物理的入れ子の構造をもつこの説に時間的な入れ子構造を付け足す。すると。
私の細胞が死ぬ。と。私も死ぬ。と。私のいる宇宙が死ぬ。と。その宇宙を細胞としてもつ生き物もしぬ。
逆に赤子が生まれれば数多の宇宙も同時に誕生する。

では細胞。ではなく

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鞴

お兄ちゃんがおかしくなったのは13年前です。当時私は11で、お兄ちゃんは14でした。当時の私には得体の知れない中学校とかいう世界でお兄ちゃんは毎日ぶたれたり蹴られたりしたそうです。
それからお兄ちゃんは心がおかしくなってしまいました。味がしぃへんのですって。何食べても。ニコニコしてお外でいっしょに遊んでくれた兄ちゃんはもう戻ってこぉへんのですって。
お兄ちゃんはお兄ちゃんの宇宙に閉じこもってしまっ

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wonderland

A「寒いわ〜」(肩をあげて寒がる)

B「そおね」

A「なんで遅刻するかな〜てかお前寒くないの?」

B「普通」

A「なんだよずるいなぁ」

B「なんでよ」

A「もういいからさ、なんか気の紛れる話ししてよ」

B「えぇ…じゃあさ、」

A「お!なに?!」(自分の腕を強くこすりながら勢いよく顔をむける)

B「私夢に感覚があるんだけどさ」

A「夢に感覚がある?」

B「うん。それいっても誰に

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お役御免☆

悪魔「貴方の願いを3つかなえましょう」
女「本当ですか?!」
悪魔「えぇ本当です。さぁなんでも言ってみなさい」
女「そのまえに」
悪魔「なんでしょう」
女「叶えて貰ったときの代償はなんですか?」
悪魔「ああ!それをお伝えし忘れていましたね!失礼しました。私がいただくのは貴方の魂です」
女「魂!?では叶えて貰っても意味がないじゃないですか」
悪魔「ご安心ください。魂をいただくのは本来の寿命の少し前で

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