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【おすすめ本】フレンチシェフは名探偵!ビストロに行きたくなるお仕事系ミステリー!『タルト・タタンの夢 』近藤史恵
家でのんびりと楽しめるミステリーを紹介します。
本書の紹介
近藤史恵のビストロ・パ・マルシリーズの1作目「タルト・タタンの夢」です。現在シリーズ累計27万部を突破している人気シズです!
商店街の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル。
シェフ三舟の料理は、気取らない、本当にフランス料理が好きな客の心と舌をつかむものばかり。
そんな彼が、客たちの巻き込まれた事件や不可解な出来事の謎をあざやかに解く。
常連の西田さんが体調を崩したわけは?
フランス人の恋人はなぜ最低のカスレをつくったのか?
絶品料理の数々と極上のミステリをどうぞ!
小さなフレンチ・ビストロで起こる日常の謎
本書の舞台は、ビストロ・パ・マルというフレンチ料理のレストランです。
フレンチと行っても格式が高いお店では無く、古い商店街にある、カウンターが7席、テーブルが4席で従業員も4人しかいない地元密着型の小さなビストロです。
出てくるフレンチも格式張ったものではなく、フランスの家庭料理がメインで、普段使いでフレンチを楽しみたい人が集まるアットホームな雰囲気のお店です。
料理長の三舟シェフは口数は少なく職人肌の料理人。フランスでの料理修行中に名前のせいでサムライ扱いをされていたので、無精髭に長い髪を後ろで束ねるサムライスタイルに落ち着いたちょっと変わった料理人です。
フレンチビストロの日常を描きつつ、三舟シェフがその持ち前の洞察力と料理に纏わる知識を使って謎を解くという話となっております!
出てくる料理がともかく美味しそうなミステリー
フレンチビストロを舞台にしているだけあり、毎回フレンチが出てくるのですが、描写がとても丁寧で、おいしそうな料理ばかりが出てきます!
自分の拙い文章では表現出来ないので、エピソードの一つ、「ぬけがらのカスレ」に登場する、三舟シェフのカスレの描写を引用させて頂きます。
カスレは、<パ・マル>のスペシャリテといっていいほどの人気料理である。(中略)ハーブで育てられた良質の豚肉に、塩をたっぷり擦り込んで、冷蔵庫に数日間置く。そうすると、味が熟成して、旨みが強くなるらしい。
その塩漬けを茹でこぼして、塩と脂気を少し抜いた後、たっぷりのインゲン豆と、豆と同じくらいの大きさに切った野菜を一緒にとろとろになるまで煮込み、その後パン粉をたっぷりかけてオーブンで焼く。
豚肉の旨みをたっぷり吸って、とろけたインゲン豆と、香ばしくきつね色になった表面のパン粉のバランス。奇をてらった味ではないのだけに、何度でも食べたくなるような料理である。
三舟シェフの料理は、フレンチと行っても家庭料理がメインで、おしゃれさよりも豪快な料理が得意なのですが、その中でも丁寧な下拵えや素材を大事にするシェフの性格もしっかりと表れています。
フレンチというと、中々普段の生活で口にする事もないので、具体的な料理名も浮かばないのですが、前菜からデザートまでとても魅力的に書かれていて、ミステリーを読んでいるのにお腹が空いてきてしまいます笑
エピソード紹介①『タルト・タタンの夢』
料理に纏わるお話はしたものの、ミステリーとしてどのようなお話なのかイメージしづらいと思いますので、いくつかエピソードを紹介させて頂きます!
1つ目は表題作にもなっている『タルト・タタンの夢』です!
ビストロ・パ・マルの常連客の西田さんが、最近婚約をしたという事で婚約者の女性を連れて来店をしてきました。
相手の女性は、大人気の歌劇団のスターである北斗なつみでした。
仲睦まじい様子で終始朗らかな雰囲気で食事をして帰っていく二人。
ところが、2週間後、仕事関係の知り合いと来店した西田さんは、体調がすこぶる悪いとの事で料理がなかなか進まない様子。三舟シェフの機転で体調が悪くても食べれる料理を提供して楽しんで貰えたものの調子が悪いのは変わりません。
閉店直前に、改めて御礼に来た西田さんに話を聞くと、最近奥さんの作ったフレンチ料理を食べさせてもらったとの事で、デザートのタルト・タタンまでオーブンで作ってくれたとの事。
一通り話をすると、待ち合わせをしていた奥さんがパ・マルに現れ、御礼もそこそこに二人はお店を後にしました。
そして、二人を見送る従業員達がキッチンを振り返ると、裏口から三舟シェフが見知らぬ女性の手を引っ張ってきてキッチンに連れてきました。
そう、その女性こそが西田氏が体調を崩した原因を作った人物であり、三舟シェフは西田氏からタルト・タタンの話を聞いた事で全ての事情を看破していたのでした。。。
この女性が誰なのか、三舟シェフは何故西田氏の話を聞いただけで事情を理解出来たのか、は是非本書を読んでみてください!
ミステリーというと伏線がそこかしこに散りばめられていて、探偵はその手掛かりを細かく集めていって事件を解く、という形がオーソドックスです。
が、ビストロ・パ・マルシリーズは、本人ですら事件であると気づいていないところから、三舟シェフの類まれなる洞察力と知識で事件が明かされる、というパターンがメインとなっています!
エピソード紹介②『ブーランジュリーのメロンパン』
ビストロ・パ・マルのオーナーである小倉から頼まれごとをした三舟シェフ。
なんでも、近くに新しくフランス仕込みの本場のパン屋をオープンする予定なので、パンに合うスープやサラダ等の副菜を考えて欲しいとの事。
オーナーのお願いであればという事で協力をする事にした三舟シェフ達は、パン職人である二人の女性、斉木さんと中江さんをパ・マルに招き入れます。
近所の昔ながらのお気に入りのパン屋さんが潰れてしまうと心配しているソムリエの金子の心配を他所に、二人が作ってくれたパンを食べてみるとフランス本場の味が再現されていて、これなら流行るのではないかと三舟シェフも太鼓判。
ただ、斉木さんの方は、甘いパンがメニューに少ないのでメロンパンなど気軽に買えるパンも増やしたいとの事だが、中江さんはメロンパンのような子供だましのパンは置きたくないとがんと譲らない様子。
とはいえ、中江さんの言う通り、フランス風のパン屋を押し通すという事で一致し、後は開店日を待つだけとなったある日、オーナーの小倉から電話で中江さんが行方不明になったとパ・マルに連絡が来る...
本エピソードも、三舟シェフの慧眼であっという間に謎が解けるのですが、出てくる料理も美味しそうで、三舟シェフの意外な好みも分かり、面白いエピソードとなっています!
ミステリーとしてもお仕事小説としても気軽に楽しめる小説
上記の通り、伏線が細かく張られているようなタイプのミステリーではないのであまり肩肘を張らずに気軽に読む事が出来ます!
三舟シェフを初めてとして、温和で猫好きな志村シェフや、ワインと俳句好きの元OLのソムリエ金子、そして物語の語り手を務める新人ウェイターの高築と、キャラクターも個性豊かで飽きさせません!
お客さんを喜ばせる為に、色々と頑張るスタッフの面々の活躍や、料理に関する蘊蓄などもふんだんでお仕事小説としても楽しめます!
気軽に読むには最適な小説ですので是非とも手にとってください!
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