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感動とは熱量を目の当たりにすること | 天皇杯2回戦 浦和レッズvs関西大学

どうしても、相応しい言葉たちが思いつかない。

この試合に、彼たちに、この想いに
相応しい言葉が出てこない。


「感動した。」
「いいものを見せてくれてありがとう。」
「やっぱり関大サッカー部が好きだ。」


全部合ってはいるけど
ちょっと違う。

それだけではない。足りない。


生まれてはじめての感情が巻き起こり、渦を巻いている。


上手く言葉にできるか不安だけど
なるべく早いうちに残したい、
そう思い、この記事を執筆する。




2023年6月7日水曜日


また、人生の中で忘れられない日、絶対に忘れたくないと思う日が増えた。


天皇杯2回戦 相手はJ1アジア王者浦和レッズ。
その舞台となったのは埼玉県さいたま市、浦和駒場スタジアム。


断じて、サッカー部員でもなければ関大生でもない、関西に住む平凡な女子大生が「よし、応援に行くか。」で行けるような距離ではない。


しかも、この日開催された天皇杯2回戦29試合の中で唯一、NHK BS1でのテレビ中継が行われた。



そう、全くもって家でも観ることができたのだ。



でも、

「行って後悔することは絶対に無い。
そんなことは分かっている。
じゃあ行かなければ後悔するのでは?」

「今後、関大の試合を見ることはあっても同じ試合は二度と無い。
じゃあ、行かないと。」

そう思い、


「きっと行動は財産になる。」

この言葉を信じ、



私は1人で前日の夜行バスに乗り込み、埼玉県へ向かい、浦和の地へと足を踏み込んだ。

正直言うとこの行動は自分でも予想外だった。

どうして、いったい何が
私をここまで突き動かすのだろう。


自分でも分からなかった。


でも、この日、その答えに出会えたような気がした。




会場に着くと、多くのサッカー部員、関大の関係者の方々がいて

それまで1人で張り詰めていた気持ちがすっと解けた。


そうだ、私は1人では無い。


試合前から鳴り止まない聞き慣れた関大のチャントがドアウェイなことを忘れさせてくれる。


いつもと違う会場、
いつもと違う相手、
いつもと違う雰囲気。

浦和レッズサポーターによる初めて耳にする声量と初めて感じる威圧感。

その少し居心地の悪い新鮮さに私の胸は小さく高鳴る。


そして19:00、
独特な緊張感に包まれる中、試合は始まった。



そこには1年間、私が待ち焦がれた景色があった。


私の夢が1つ叶った瞬間だった。



1年前、人生で初めてなんの接点も無いアマチュアの選手を応援したいと思った。
そう思わせてくれる選手と出会えた。



1年前の天皇杯2回戦 vsセレッソ大阪
儚くも希望が崩れ落ち、スタンドで応援することしかできなかった彼がピッチに立っている。


もうその景色を自分の目で見れただけで
感無量だった。


でも、泣くには早すぎる。

気を引き締めて応援に本腰を入れる。


甘すぎた去年の私は
今試合と同じ、天皇杯2回戦 vsセレッソ大阪の
試合観戦をただ楽しんだ。


おもしろい試合が観れたらそれで良い、くらいの気持ちだった。


でも、後に彼らの熱い想いや涙のわけを知り、そう思ったことをとても後悔した。


今年は絶対に勝ちにいく。
そう思い、エールを送り続けた。



開始早々、関大がペースを握る。
ファーストシュートは関西大学 西村選手。

立ち上がりは好調。


かつてないほどの、
私には想像がつかないほどの、
想いと重圧を背負いつつも

ピッチに立つ11人は
この大会を、この試合を、
そしてサッカーを楽しんでいるように見えた。

ありえないくらい眩しくてかっこいい。


だが、相手はなんといってもアジアチャンピオン。

大学生相手には負けられない。
プライドを胸に真正面からぶつかってくる。

サブメンにも関わらず、十分な強度。
J1のレベルの高さとプロとアマの差を痛感する。

でも関大も負けていない。
全然、負けていない。


簡単に点には繋がらないが、少ない隙を逃さず果敢にチャンスを作る。


押し込まれる場面も続くが体を張った見事な守備と山田選手の好セーブによりゴールラインは割らせない。


浦和レッズは主力メンバーを投入しギアをあげる。
試合の雰囲気が変わったことを感じさせる。

それでも、スコアは動かない。


とにかく、よく走り、よく守り、よく攻めた。



そして、なにより嬉しかったのが
関大のサッカーを魅せ続けられたこと。


個人の能力が、技術が、

チームの連携が、戦術が、

プロ相手に通用している。



守りを固めて1発を狙う、なんてことをせずに

GPを含めた堅実で丁寧な自陣からのビルドアップから
個のスキルを活かして
ピッチの幅を最大限に利用するサイドチェンジ、
目を離すことができない少ないタッチでの前進。


決して特別なことはしない、
ただいつも通りの私が好きな関大らしい正攻法。

プロ相手に臆することなく堂々と自分たちのサッカーを魅せる姿を誇らしく思った。


ただ、本当のところで通用したかどうかは結果が証明する。


白熱した試合はその熱を冷ますことなく
延長戦へと突入する。


中2日で迎える今試合、

今季初の延長戦への突入、

慣れないナイターゲーム、

彼らが燃え尽きないか心配でもあった。



でもそんな心配はすぐに払拭される。


そこには、増大し続ける熱量があった。



鳴り物が禁止になってもなお、駆けつけた仲間の声は会場に響き渡る。



その声を背に決して力を緩めることなくやり切り続ける選手たち。


まだ諦められない、
絶対に
なにがなんでも勝つ、

そう書いているように見える、ピッチに立つ大きな大きな選手の姿。


期待が大きな希望へと変わる。



が、しかし


無情にもその均衡は崩れる。

延長前半終了間際、ついに浦和レッズが先制する。


残された時間は15分。
もう限界のはずなのに、
決して誰も諦めていない。

ホイッスルが鳴る、その瞬間まで
会場を包み込むその熱量は決して減ることがなかった。


21:33

長い長い闘いが終わった。

ピッチに倒れ込む姿がゲームの壮絶さを物語る。


思わず立ち上がらずにはいられない。

私は溢れ出そうな涙を堪えて
拍手を送る。


その拍手は鳴り止まない。

会場全体が大奮闘した選手たちに敬意を込めて万雷の拍手と賞賛の声を送る。

「よーやった!」

「胸を張れーー!!」

「関大、最高ー!!」

試合を終えてなお、その熱量は減るどころか増え続ける。


本気で闘ってくれたからこそ起こった浦和サポによる試合中のブーイングが

試合後に割れんばかりの拍手へと変わる。


120分、熱量を放出し続けた選手たちに応えるように
会場にかけつけた5000人を超える人たちが熱量を放つ。



そうだ、この熱量こそ

私を突き動かす原動力の源。


私はこれに会える場所を知ってしまった。

これに出会わせてくれる存在に出会ってしまった。


その熱量は画面を超えて、NHK BS1で試合を見守る日本中の人々に感動を与えた。

浦和レッズを応援する人、

関西大学体育会サッカー部を応援する人、

そしてそれ以外の多くの人にも。


試合内容はもちろんだが、
オフ・ザ・ピッチでの姿勢。

ピッチを一周まわって、各方面に挨拶に行く。
爽やかに真摯に、
そして深く深く何度も頭を下げる。

いくら負けて悔しくても、
120分走り続けて疲れていても、
負傷により歩けなくても仲間に背負われつつ、

選手、MG、TR、スタッフ、全員で。

関大は最後まで
私が誇りを持って応援しているといえる
関大だった。


関大ゴール裏への挨拶。

涙無しには見ることができない。

神戸讃歌ならぬ関大讃歌。


「命ある限り 関大を愛したい」


そう歌い、

共に戦い続けた仲間は一体なにを思うのだろう。

共に戦い続けてくれた仲間の姿を見て一体なにを思うのだろう。

それを私は知ることができない。

それは彼らのみが知ることができるプライスレスな想い。


でもそこには紛れもない愛があると思う。


応援って見返りがあるもの、
見返りを求めてもいいものだと思っていた。


頑張って。応援している。


の言葉に


応えようとする、結果を残すもの
だと思っていた。


それは間違ってはいないけれど
正解でも無いということを知った。


応援は無償で渡すことのできる愛だということを知った。


このチームに出会って
教えられることばかり、もらうばかりで

私はなにも返せない。渡せない。


でも、どうか、

これだけは伝えたい。


私は誇りを持って、自信を持って
このチームが好きだと言えるということ。




この敗戦を糧に
チームはもっと強く強く、
そして、曲げても折れないしなやかさを併せ持つことになるだろう。


4回生にとっては
全ての大会が学生として出場する最後の大会。


このメンバーでの、このチームでの
日本一を見たい。



今年のチームスローガン

「関動」

早くもそれを体現したような1日だった。


「感動とは熱量を目の当たりにすること」

また、教えられてしまった。



リーグ戦、総理大臣杯、インカレ

もっともっと大きな感動にあいにいこう。

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