「ADHDだと知っていたら結婚しなかった」

ことあるごとに夫から言われる投げられる言葉。

「こんな変な人間だと思わなかった。」

☆  ☆  ☆

私が「あのひと」にふられたのは20歳になりたてのとき。

高校の頃からどうしようももなく好きだった「あのひと」。
やっとの思いで実らせた恋も、1年足らずで終わってしまった。

振られてすぐの時期は信じられないくらい、いろんな男の人から声をかけられた。

ナンパとかそういうのではない。

ゼミの友人、
受付嬢をしていたバイト先の社員さん、
たまたま友達に誘われて行ったライブハウスでステージに立っていた大学の同級生、
友達の彼氏…

男の人からデートに誘われることなんて今まで経験したことがなかった。

だから、すごくびっくりしたのを覚えている。

そんなとき、たまたま出会ったのが今の夫だった。

夫はすごく内気な人で、私と話すときも顔を真っ赤にしながらしどろもどろしてしまうような、そんな人だった。

でも、私よりいろんなことを知っていて話していて楽しかった。

夫は貧乏学生だったからヨレヨレのTシャツを着てヒョロヒョロで小柄。

1回だけ、しかも複数人で遊んだだけだったけど、なんとなく楽しいなと思って連絡先を交換した。

翌週、ちょっとだけ二人で会うことになった。

「UFOキャッチャー得意だから、とってあげる」 

と私に言う割に全然取れなくて、下手だなぁーと思いながら笑って見守っていた。

☆  ☆  ☆

当時、夫は東京にある大学に通っていて、私と会ったのはたまたま帰省していたとき。

大学が始まるから夫は東京に戻らなければならなかった。

東京に帰るその日に、もう一度だけ会うことになった。

相変わらず、会話はしどろもどろ。
やたら汗をかく人だなぁ、と思っていた。

けど、私は人懐っこい性格だから夫は心を開きやすかったんだと思う。

二人で初めてご飯を食べた。
二人とも食べ終わって、
新幹線の駅に向かう電車に乗ったらこのままバイバイなのかな、なんてことを考えていたら、

「好きだから付き合ってください」

と夫から言われた。

出会ってから、たったの10日くらいのできごとだった。

そこから10年近く付き合って、結婚した。
私が仕事しながら大学院に通ってるときだった。
だから一応、学生結婚だったりする。

☆  ☆  ☆

ADHDは、一般的に人懐っこいと言われる。
これは裏を返せば「他人との距離感がやたら近い」ということだ。

夫は私がADHDであることを嫌っている。
当然といえば当然で、普通の主婦ができる家事や育児が致命的に苦手、すぐに忘れる、感情の波が大きい…
私は普通の主婦、普通の奥さんとは違う…

でも、ね、言いたいことがある。

あなたは「私が人懐っこい性格」だったから付き合ったんじゃないの?

付き合ってからもずっと好きだよ、って言い続ける、そういう私のくっきりした感情を好きになってくれたんじゃないの?

私は確かにADHDだけど…
それ以前に「私」を好きになってくれたんじゃなかったの?

私とADHDは切り離せないよ…
だって、完治して普通の人になれやしないんだよ。

ADHDである私を否定するなら、それは私を否定することと同じだよ、私にとってはね。

☆  ☆  ☆

あったかい場所にいきたい。
ここから抜け出したい。
でも、現実は絶対にそんなことできないんだよな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?