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依頼した広告代理店の担当者の経験が浅いと感じたら

この2年間、多くの運用型広告代理店(以下「代理店」)と仕事する機会に恵まれた。自分が所属する企業のパートナー、顧問のような立場で関わった事業会社のパートナー達である。

いずれのパートナーも、十分なノウハウが社内にあり、独自のシステムを提供し、豊富な人的リソースを有していたが、中のコンサルタントのレベルは当然新人からベテランまでいるのでまちまちだ。

事業会社はパートナーである代理店に高い専門性を期待し依頼する。だから期待して依頼した代理店から経験が浅い担当者をアサインされるのは歯がゆいことだろう。

新人が担当になり嘆く事業会社は少なくなかったので、経験が浅い担当者をアサインされた時にどのように付き合うのがいいかまとめてみた。

You get what you deserve(あなたが手に入れられるものは、あなたに相応しいもの)

まず大前提、代理店側の論理として新人をアサインする理由を考えてみてほしい。

どんなに優れた代理店にも経験の浅いメンバーはいる。そしてビジネスである以上、予算が多い儲かるプロジェクトにはエース級のコンサルタントをアサインし、予算が少ない利幅が小さいプロジェクトには経験の浅いコンサルタントをアサインするのが自然だ。

You get what you deserve(あなたが手に入れられるものは、あなたに相応しいもの)

どうしてもトップコンサルタントをアサインしてほしければ担当してもらえるだけの条件を用意するしかない。予算が多いとか、支援事例になるとか、トップコンサルを送り込む価値があるプロジェクトと思われるしかないのだ。

成果が出ないなら広告代理店は変えたほうがいいのか

私が事業会社のマーケターという立場だから言えるのだが、代理店の成果が出ないのは、事業主側のディレクション問題であることは少なくない。

たしかに、代理店の中には優秀なコンサルタントがいて、彼らは事業主のディレクション如何に関わらず成果を出す。だがそのようなコンサルタントは一握りであり、先述の通り魅力的なプロジェクトでなければアサインされることはない。

予算が少ない・魅力的な事例にならないような事業主は、経験の浅い担当者がアサインされることを覚悟のうえ、インハウス化を進めるか、代理店が最大限の力を発揮してくれるようなディレクション力を身に付けたほうがいい。

広告代理店に最大限の力を発揮してもらうコツ

そうは言ってもインハウス化は容易ではないし、ディレクション力のあるマーケティングディレクターが社内にすぐ育つこともない。そこで、どのようなレベルの担当者が付いても、代理店が最大限の力を発揮してくれるにはどうすればいいかコツを3つ紹介する。

1.曖昧な指示は一切禁止

代理店はマーケティングのプロフェッショナルであるがエスパーではない。「言わなくても分かるだろう」は危険である。

代理店が成果を出してくれないと嘆く事業会社では、プロジェクトの丸投げや「とりあえず数字を改善して」のような曖昧な指示出しが目立つ。曖昧な指示を明確にして行かない代理店側にも問題はあるが、経験の浅いコンサルタントは質問力も発展途上であることが多い。

曖昧なコミュニケーションを続けていると、代理店からはいつまでも期待と異なるアウトプットが出てくるだろう。

たとえば「毎月5日までにメディアごと週ごとのコンバージョン件数」を社内に報告しなければならないのに、代理店には「毎月コンバージョン件数のレポートを送ってほしい」のような曖昧な指示をした場合、5日までにレポートが届かなかったり、週ごとのコンバージョン件数が集計されてなかったりが起こり得る。

  • 目標は具体的な数字で伝え「参照元」「集計期間」「定義(新規顧客のみか既存顧客もカウントするかなど)」まで明確にする

  • (望ましくないが)目標設定が複数ある場合は、どちらの目標のほうが優先度が高いか伝えておく

  • タスクを依頼する際は納期を「何月何日何時」まで明確にする

  • レポートを要求する際は「アウトプット形式」「集計項目」「集計セグメント」「参照元」「集計期間」「比較対象」を明確にする

  • 予算を設定する際は「消費税を含むか」「代理店の手数料を含むか」を明確にする

任せている代理店の担当者にここまで明確に指示ができているか一度振り返ってみてほしい。これまで曖昧な指示をしていたのであれば、明確に指示することで期待通りのアウトプット・成果が出てくるようになるかもしれない。

2.情報の非対称性を下げる

事業会社も代理店も、自分達が持っている情報から判断して、最も合理的と思われる選択を行っている。

事業主からすれば理解に苦しむ提案も、代理店の担当者からすれば自分が持っている知識と情報の中では最善と判断したのかもしれない。

ここで忘れてはならないのは、事業会社は自社の事業に関して、常に代理店より多くの情報を持っているということだ。

事業主側の読者の中には「代理店はなぜこのようなビジネスの実態とかけ離れた提案してくるのか」と不信感を募らせた経験があるかもしれないが、代理店のレベルが低いわけでもビジネスセンスがないわけでもなく、代理店側からしたら「そんな情報知らなかった」だけかもしれない。

このように事業会社と代理店とで情報の非対称性が高い状態だと、最良の結果を得るのは難しい。秘密保持契約を交わしていれば理論上どのような情報も外部に漏らされることはないので、出し得る情報は全て代理店に共有するのがベターである。

特に、売上利益や顧客情報などの実データはしつこいくらいに代理店にフィードバックしてほしい。

自動化が進んでいる昨今、Web広告は新人でもある程度の経験を積めば「管理画面上」の数字を改善することは簡単ではないが難しくもない。問題は「実際」の数字を改善することだ。

事業主側からすれば、広告管理画面の数字は二の次で、何より実際の売上利益を伸ばすのは当たり前の視点だと思うかもしれない。だからこそ「わざわざ言わない」ことが多い。ところが代理店の経験が浅い担当者はこのような実数の視点が乏しい。

「〇〇の訴求から来るユーザーは商談からの契約率が低いから控えてほしい」
「広告管理画面では20代の調子がいいけど実際は30~40代が顧客層なんだよね」

私の経験では、このような簡単な情報でも共有し続ければ、どんなに経験が浅いコンサルタントでも広告運用に反映し管理画面の先にある実数を伸ばす努力をしてくれた。

3.ビジョンを共有し、パートナーとして接する

人はロジックだけでは動かない。

スキルが劣る新人も、熱意から生まれる圧倒的な行動量で成果を出すことはある。任せている代理店で成果が出ないのは、事業主のビジネスを伸ばしたい熱意が少しだけ足りないからという可能性はないだろうか。どのような想いで事業を展開しているか担当者に一度は伝えてみて損はない。

誰かのために頑張っている人を応援したくなるのが自然だ。世の中の役に立つ事業、多くの人に喜ばれる事業に関われればワクワクするのも自然だ。

ビジョンの共有がニガテでも、担当者にサービスを体験してもらったり、ロープレも兼ねて営業を受ける機会を作ったり、いくらでも想いを伝える工夫はできる。

代理店の担当者はビジョンを一緒に叶える仲間だ。「外部の人」のように接するのではなく、同じ目標を持つ「パートナー」として接したい。

信頼して任せてみよう

私も代理店出身だが、新人の頃、経験の浅い自分を信じて長い間プロジェクトを任せ続けてくれたクライアントは今でも忘れられない。「信じて任せてくれるからには絶対に成果を出す」という気持ちが、自分を成長させてくれたし、クライアントの成長にも貢献できたと思っている。

即結果を出してくれるベテランを担当に期待しがちだが、新人でも信頼して任せれば期待に応えようと頑張ってくれるはずだ。新人は今は新人なだけで、時間が経てば成熟したコンサルタントになっていく。

今任せている代理店の担当者との関係が改善し、成果が上向くヒントが少しでもあれば幸いだ。


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