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『30女の思うこと〜上海女子物語〜』①グー・ジア編
前回投稿した、キャリコン視点で楽しむドラマ、第1回目は「30女の思うこと〜上海女子物語〜」
中国で総再生回数71億回を記録した、上海在住アラサー女子三人のキャリアストーリー。
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今回紹介するのは一人目のヒロイン、グー・ジア。
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元バリキャリ、現在は専業主婦。
花火デザイナーの夫シュー・ファンシャンと共に花火製作会社を起業。夫の仕事を支えつつ、幼稚園児の一人息子の教育にも熱心な、絵に描いたような良妻賢母。しかも、忙しい合間をぬってケーキを手作りしたり、ランニングにエアリアルヨガ……と、自分磨きを怠らない。本当に頭が下がります、ジア様……。
社長の夫に近づく下心ありそうな女性社員にもしっかり目を光らせ、夫には内密で穏便に「対処」することも。もう隙がなさすぎて、こわいです、ジア様……。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/60849526/picture_pc_77993ccd3cc428c8d85ae3d217e63021.png?width=1200)
以前は外資系企業で働く有能な女性でしたが、仕事を辞め、夫と会社を興し、起業後は社長夫人として内助の功を発揮。一見優雅な奥様として、子育てに社交に大忙しな毎日。(なので通いの家政婦さんがいて、家事全般はそのベテラン家政婦さんに任せています!)
一人息子を名門幼稚園に入園させるために高級コンドミニアムに引っ越し(孟母三遷!)したり、息子のお受験の為にセレブマダム達とのコネ作りに奔走したり、ついには製茶業にも乗り出すなど、何事にも全力投球する、行動力抜群な女性です。たおやかな見た目に反してなかなかパワフル!
アドラー心理学
そんなパーフェクトウーマン、グー・ジアの行動力の源泉は、アドラー心理学で説明ができそうです。
アドラー心理学(アドラーしんりがく)、個人心理学(こじんしんりがく、英: individual psychology)とは、アルフレッド・アドラー(Alfred Adler)が創始し、後継者たちが発展させてきた心理学の体系である。
Wikipediaより抜粋
例えば……
夫の会社で、発注ミスによるトラブルが発生して製造委託先の工場長から泣きつかれたとき。
やっと軌道に乗りかけた茶園が、冷害で茶畑に壊滅的なダメージを受け収穫が絶望的になったとき。
ジアは常に冷静沈着で、的確な判断を下し、速やかに実行。
彼女、ぜーんぶ一人でなんとかしちゃうのですよ!!
愚痴を言ったり誰かを責めたりすることなく、今この苦境を脱するためには何をしたらいいか、にフォーカスして即行動!
これこそ、アドラーが提唱した理論のひとつ【目的論】
目的論
【目的論】
変えられない過去の事象の原因を考えていくよりも、目指すべき本来の目的に焦点を当てて物事を考えていこう、という考え。
一体誰が資材を発注し忘れたのか
収穫を見込んでいろいろと動いているのにどうしよう
起きてしまった事についてその原因を追求するよりも、これからどうするかについて注力する。
だから夫も社員も村民も取引先も、みんな彼女を頼ってしまうのです。さすがジア様‼︎
そんなジアも、たった一度だけ彼女らしくない痛恨の判断ミスをしてしまいます。それは……
とあるマダムから茶畑と製茶工場を言い値で購入してしまったこと!
現地調査することも、事前に業界研究をすることもなく。しかも、製茶業なんてしたこともないのに!魔がさしたとしか……。
グー・ジアの上昇志向からくる必死さや焦りを見透かしていたマダムに、まんまと一杯食わされてしまいます。結果、問題山積の製茶工場と茶園を購入。撤退しても引き受けてもどちらにしても莫大な負債が残ることに。
会計士も夫も早めに撤退したほうがいいと進言しますが、この貧しい村は製茶業で生計を立てている村民が多く、ジアは村長から直々に工場と茶園の存続を懇願されてしまいます。現地に赴いたジアは、茶園で働く子供達の姿を見て、村民達を見捨てることができなくなり、何とか製茶工場経営と茶園を立て直そうと奔走することに。
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村人達の生活を守るために製茶業に真剣に取り組むグー・ジアの姿に、村民達も次第に彼女への信頼を深めていきます。彼らとの間にビジネスだけではない、絆が生まれます。
共同体感覚
この絆こそ、アドラー心理学の哲学とも言える【共同体感覚】。
【共同体感覚】
共同体の中で人と繋がっているんだという感覚。人はこの感覚を感じられる時に幸福だと感じる。
【共同体感覚】を構成する4つの要素
①自己受容
②他者信頼
③他者貢献
④所属感
この4つが揃うと「共同体感覚が満たされた状態」=「幸せを感じる」といわれています。
グー・ジアは村人達の中に入り、彼らの生活を知り、彼ら自身を知り、次第に心を通わせていきます。
(以前の持ち主は、茶園をただ「所有」しているだけで、正直収益の見込めない「不良債権」扱いでした。それでジアに高く売りつけたという……)
この4つの要素をグー・ジアのケースに当てはめてみると
①投資に失敗してしまった自分を潔く認め、腹を括って茶園経営の再建を決心し、
②村民達の勤勉さや真面目さを信じ、茶園や商品(茶葉)の持つ可能性を信じて、
③現地で一緒に茶葉栽培を手伝うだけでなく、村民達の生活が良くなるように心を配り、働く若年女性を支援する寄付をするなど社会貢献活動をし、
④名実ともに茶園主として従業員(=村民)、村との間に固い信頼関係を築いた
これこそが【共同体感覚】の醸成ですね。ジアは製茶業に真剣に取り組むことで「もう一つの自分の居場所」を手に入れるのです。
(これはプロティアンキャリアが提唱しているサードプレイスにも通じるのかな……と。プロティアンキャリアやサードプレイスについては、また別の機会に書きたいと思います。)
グー・ジアのおかげで茶園の従業員達のワークエンゲージメントも爆上がりです。
(このワークエンゲージメントについてもいつか機会があれば^^)
キャリア・アダプタビリティ(by サビカス)
いつでも自信に溢れているグー・ジアを見ていると、サビカスの「キャリア・アダプタビリティ」を思い出します。
「キャリア・アダプタビリティとは、現在及び今後のキャリア発達課題、職業上のトランジション、そしてトラウマに対処するためのレディネス及びリソースのことである」(Savickas, 2005)
渡辺三枝子「新版 キャリアの心理学」より
①関心(Concern)
職業人として、みずからの未来について「関心」をもっていること
起業した後もジアの心配は尽きません。ジア曰く花火製造は「いつも火薬樽の上で生活しているかのような」気分だから、リスクヘッジの為にも本業の他に安定的な収入源がほしいと考えています。
➡︎未来志向。常にキャリアを意識。
②統制(Control)
職業上の未来に対して、みずからが「統制」をしていること
花火デザイナーの夫は、事業家というよりは芸術肌、職人気質。実務は妻のジアが取り仕切っています。不安の多い本業の経済的基盤が安定する助けになれば……と、副業を探し始めます。
➡︎自分のキャリアは自分で作り上げていく!
③好奇心(Curiosity)
みずからの可能性と未来のシナリオを探索することに、「好奇心」を発揮していること
未経験の製茶業にチャレンジ。いろいろな困難に見舞われつつも茶葉栽培、商品開発、販売ルートの開拓など手探りで進めていきます。
➡︎自分と職業を適合させるために、好奇心をもって職業に関わる環境を探索する。
④自信(Confidence)
みずからの願望を実現するために「自信」をもっていること
しっかり者の彼女は、夫の職場でもいざトラブルがあればテキパキと対処していきます。社員からの信頼も厚く、取引先の工場長も彼女には一目置いています。頼られることで、ますます頼りがいのある存在になるジア。
➡︎自己効力感。わたしは、できる!
しかし、夫のため子供のため、いつも一所懸命なグー・ジアなのに、夫の裏切りがきっかけとなり築いてきた生活が少しずつ崩れていくのです。なんてこと……!
次回は二番目のヒロイン、ワン・マンニーを取り上げます。お楽しみに♪